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俺は2歳の時に母親を亡くしたらしい。それでも寂しい思いをしなかったのは他ならぬ父のおかげだ。
あれは俺が小学校に入学してすぐにあった、親同伴の遠足から帰ってきたときのこと。
父は仕事で忙しいことがわかっていたので一緒に来られないことを憎んだりはしなかった。
一人でお弁当を食べようとしていた俺にY君とその母親が一緒に食べようと誘ってくれた。
そして一緒に食べてるとふとY君のお弁当が目に入った。そこには星形のにんじんが入っていた。
で、なんとなくそれがすごく羨ましくなって帰った後、父にお願いした。
『僕のお弁当のにんじんも星の形がいい』
そのときの俺は子供だったけど母親がいないという環境に気を遣っていた。
だから『なんで僕にはお母さんがいないの』なんてことも父には一度も聞いたことがなかった。
星の形のにんじんだってただ単純にかっこいいなと思ってただけ。
でも父には俺が母親がいないことを一生懸命文句言っているように聞こえたらしく悲しかったらしい。
突然俺を抱きしめて「ごめんな、ごめんな」って言ってわんわん泣いてた。
いつも厳しい父の泣き顔を見たのはこれが初めてだった。
同時になんで泣いてるのか分かっちゃって俺も悲しくなって男二人で泣いた。
それから俺の弁当のにんじんはずっと星の形をしていた。高校になってもそれは続いた。
『もういいよ』
いい加減恥ずかしくなってきたので俺はそう言った。でも父は
「それを見るたび恥ずかしい過去、思い出せるだろ」
って冗談めかして笑っていた。
そんな父もしばらくして再婚した。相手は俺が羨ましくなるくらいきれいな女性だった。
結婚式のスピーチの時、その【星の形のにんじん】の話をしたとき父は人前だっていうのに泣いていた。
でもそんな父よりも再婚相手の女性の方がもらい泣きしてわんわん泣いてた。
良い人を見つけられて良かったね。
心からおめでとう。
そしてありがとう、お父さん。