気付かないうちに、時間は過ぎていた。そんなことを考えている海に呆れた母が
「海、早くご飯食べなさい。冷めちゃうわよ?」
と、溜息をつきながら言う。そんなことを気にせず海は考え事に集中していた。そんな海に父は言う。
「お前にはまだたくさん時間があるんだから、考え事は食べてからにしなさい」
と、少し鋭い目つきで海を睨む。海は考えた。人から見た時間と、自分から見た時間は同じなのか、と。でも、海は昔、父に怒られたことを思い出し早々と食事を終わらせ自分の部屋に戻った。
橘海、当時11歳。彼は今から5年も前に癌で亡くなっている。橘美沙斗、18歳。橘美沙斗は橘海の2個上の兄である。今は高校に通う普通の男子生徒だ。昔、弟を亡くしたショックから立ち直れず、高校では不登校気味でいる。そんなある日、学校をサボり家でテレビを見ていると家のインターホンが鳴った。こんな平日の昼間から誰なのだろう、と気になった美沙斗はインターホンを覗いた。そこには弟のことを唯一知っている友達がいた。美沙斗は少し気だるさのあった雰囲気を一変させ、元気な姿で友達を迎え入れた。今日は学校が早く終わったからプリントを届けに来たらしい。その後、ゲームをして友達が帰る、となった時に友達は真剣な表情をしこちらを見つめた。
「どうしたの?」
と、美沙斗は不思議そうに尋ねる。少し間が空いたあと、友達は言う。
「父さんの仕事の関係で引っ越すことになった。だから今日は別れを言いに来たんだ。急でごめん。」
美沙斗は理解が追いついていなかった。口をポカーンとあけている美沙斗と友達は気まずい空気が流れたあと、「さよなら」をした。ここまでで、6時間かかっている。美沙斗にはその6時間が1時間、いや10分のように感じた。そのとき美沙斗は、昔弟が言っていたことを思い出す。
「何故、客観的に見た時間と、主観的に見た時間は違うのか。本当に僕の寿命は長いのだろうか。皆が感じる1日後に僕は生きているのだろうか。」
当時、中学生だった美沙斗はなにかの本に影響されただけだろうと適当に聞き流していた。
「確かにそうだ、なんでこんなに短く感じたんだ? 」
玄関で固まっていた足が動き出す。その足は弟の遺品の方へと引き寄せられていた。そこには何冊ものノートが入っている。当時、小学生であった海は本が好きだった。哲学や宇宙など美沙斗には理解のできない本ばかり読み漁っていた。それに影響されて自分の考えをまとめるためにノートに書いていた。そこに気になるタイトルのノートがあった。
「君が走るなら、僕は歩きたい」
タイトルを復唱した美沙斗は無心でノートのページをめくる。そこには客観的時間軸、主観的時間軸について書かれていた。美沙斗はすぐに理解した。あの時の質問をここで自分の考えとしてまとめていたのだと。ここに美沙斗の知りたいことが書かれてある。だが、ノートは途中で終わっていた。そう、最後がなかったのだ。何となくわかっていた。海がノートに書く内容で質問をしてきたのはそれだけだったのだ。
「この難問を海は解けなかったのか、、、」
「それは違う。だってこう書いてあるじゃないか
君が走るなら、僕は歩きたいって」
後ろから父が急に言う。美沙斗は驚き腰を抜かした。すかさず美沙斗は父に理由を問う。すると父は呆れた顔で言う。
「それがお前に託されたもんだろ」
その言葉が海が途中まで書いていた海からのメッセージを美沙斗に解かせるきっかけとなった。
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さて、ここまでが「君が走るなら、僕は、、、」の話である。もしここまで読んだ人がいるのなら海のメッセージを考えてみてほしい。ヒントは走ると歩くを何に例えているか、だ。
初めての小説です。誤字、小説での書き方などあまり知らないので大目に見て欲しいです。
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