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まいぢゃんだいずぎ、、、、!!!!!!!!!!!!すいさくのおかげで曜日感覚取り戻したよー😇 つきのとの絡み、ありすぎる
_魔女 side
夜風。
黒髪が宙を舞う。
視界を遮る黒が鬱陶しくなり、耳に髪をかける。
こつん、こつん、こつん。
ヒールが床を鳴らす。
人っ子一人居ないこの夜に、ただヒールと風の音だけが木霊する。
稀に街頭の光を受けて光るピアスが少し鬱陶しい。
師が走り回る季節の夜、外へ駆り出される程辛いことはない。
吐いた煙が空と同化して消えていった。
聖夜間近のこの頃、私が駆り出されたのはそういうこと。
まぁつまり、偉い人か誰かを魅了して情報を抜いてこいと。
_全く本当に、人使いが荒い人ですわ…。
上司への不満を零せど、現状が変わるはずもない。
変われば良かったけど…。
指定された場所に到着したのに、人影の一つもない。
わざと時間が少し遅らせてきたのに。
十中八九、ハメられた。
私は戦闘向きの能力ではないのに…。
つい先刻まで静寂に包まれていたはずの夜が騒ぎ始める。
強い風吹かれ、葉がざわざわと音を鳴らす。
先導者に続き、足音がぱたぱたと響く。
あら。
随分と人が多いのね。
聞こえてくる足音が多い。
弱い者ほどよく群れる。
今回はその象徴かしら。
かちゃり。
銃を引く時特有の音が鳴る。
「!!”魔女”発見!」
ちょうど私の死角になっていた場所。
路地裏の角から、恐らく先導者であろう者が顔を覗かせている。
私と目が合った。
その瞬間に数人が飛び出してくる。
私の事を知っている?
なら能力も知られているかしら。
…否、そんなことはなさそうね。
もし本当に私の能力を知っているなら、私の視界に入るような動きはしない。
詠唱もなしに、能力が発動される。
途端、銃を引いていた者や先導者がその場で呆然とする。
力を失ったように。
動き方を知らない赤子のように。
辛うじて動こうとする者も居るけれど、私が少し微笑めばすぐに立ち尽くすしかなくなる。
“魅了”さえできれば、私の虜にさえしてしまえば全て終わり。
私をじっと見つめる人たちを置いて、拠点へ戻ろうとする。
はらりと雪が舞い始めた。
その時、少し遠くで爆発音が鳴る。
ここまで飛んでくる暴風と熱気。
こんなにも寒い夜なのに。
少し走れば、その場所には彼女が居た。
星月衆第一部隊隊長、宮歌月ノが。
月「ぁ??あー…、蘇芳…、の姉のほうか…」
「何してたん?」
『私は任務終わりですわ』
『見れば分かりますけど、貴方は?』
月「これやってた」
そう言って彼女は、下げた親指で首を掻っ切るような素振りを見せる。
超健康優良児である月ノさんは本来なら寝ている時刻。
どうして起きていて、そして戦っていたのだろうか。
月「な〜んかさ、分かるんだよ」
私は何も言っていないのに。
見透かされたように話し始める。
月「あぁ、どっかで馬鹿が暴れてんな、とか」
「今羅生寝てんな、とか」
『それはいつもではなくて?』
月「…………、確かに」
くるり。
華麗に一回転して、彼女が歩き始める。
私も歩幅を合わせて歩き始める。
月「共鳴してるっつーか…、勘っつーか」
そういった彼女は少し嬉しそうだった。
それにしても、ただの構成員にここまで話すなんて、珍しい。
何か良いことでもあったのだろうか。
『それで?』
引き込まれる。
知りたいと思ってしまう。
圧倒的強者が考えるこの世についてを。
月「聴こえんねん」
「色々とな。自分の考えてること、あんたが今感じたこと」
「他人のはあんまよく分からへんけど」
辺りに、ここはウチのシマだ、と言いふらすように能力を使う彼女。
さながら、海へと戻された魚のように。
念願のステージに立てたバレリーナのように。
ひょこりと顔を出す部外者に容赦なく能力を振りかざす。
能力は生まれながらに不平等にしても、この人は異端過ぎる。
こうやって会話しながら、歩きながら平然と死角に居る敵を始末する。
目が沢山付いているように。
彼女の紫が、少しも雪を被って薄くなる。
けれど彼女は数ナノメートルも衰えない。
矢張りこの人は、何処を取っても怪物だ。
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名 蘇芳 舞__Suou Mai
二 魔女__Majo
能 魅了__Miryou