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「おねえさんはどうして僕にそんなに親切にしてくれるの?」
「あなたが、私たちが持っていない物を持っているからよ」
なんだ、やっぱりそういう事か、とアンドレアは思ったが、一応訊いてみる事にした。
「納屋にあるT型フォード? あれは壊れていて動かないよ」
「はずれ」
少女は笑って首を横に振った。
「じゃあ、ジャポンの浮世絵かな。でもあれは親戚のおばさんが持って行った」
「ふふふ、それもはずれ」
「じゃあ何? 分からないな」
「じゃあ、ゆっくり考えて。時間はまだあるわ」
数日後、パン屋を出る時アンドレアは思い切ってパン屋の主人に行ってみた。
「チャオ」
一瞬ポカンとした主人はあわてて応えた。
「ああ、気をつけて帰りなよ」
主人はすっかり白くなったあごひげを撫でながら心底驚いた表情で、店の奥にいる妻に言った。
「おい、聞いたか。アンドレアがあいさつをして行ったよ。驚いたな」