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僕はこの世に生まれてはいけない物だったのかもしれない。それでも希望をもって生きる事が出来るのならば僕は────。


























































兄が死んだ。









元旦早々、 都心や田舎街はたくさんの挨拶で溢れる中僕は常に仰向けで横たわっていた。









呼吸をしても良い気分にはならない。









隣に兄のような何かがいたから。









何も言わず、動かずただ僕を一点に見つめて、見下ろしている。









「きみはいったい、誰なの。」










何も返答は返って来ず、そのまま時間が過ぎていく。









カチと時計の針の音が鳴る。









腐敗臭が家中を覆い、虫が湧き劣悪な環境で僕は独りぼっちだった。









それは当然なのかもしれない。









許しを乞っても縋っても絶望しても罪が消えることは無い。









ここにあるのは兄と僕と変な奴。










一生罪を背負っていけとでも言いたいのか。










僕は部屋を見渡した。










大きな屋敷でも中を見てみれば廃墟のように見える。










兄のような何かはずっと跡をつけて僕を苦しませた。









僕と兄が笑顔を浮かべて幸せそうに写る写真の横にある花瓶に花を挿す。










黄色いカーネーションを一輪挿して目から涙を流した。












「…お前とは友達だったら良かったのに。兄弟なんかじゃなくて、普通の友達に。」









『なにを言っているんだ。お前とは一生兄弟になるに決まっているだろう。生まれ変わっても永遠に….縛りつけて、心中してやる。』









兄の声が聞こえた。









兄のような何かは、実は兄だったのだろう。









過剰すぎる愛も、憎しみも軽蔑も全部僕だけに向けられた感情。









僕と兄はお互いを好きでいすぎた。









それに耐えかねた僕を兄は一生許してくれない。









『醜くて可哀想な、俺だけの弟。俺は死んでもお前とずっと生き続ける。』









「兄貴は僕のことが好きなの、?」










その問いに兄は答えた。










『愛している。俺だけの弟で、俺だけの神様なんだから。』









そしてその言葉で頭の中に在りし記憶が蘇った。































・・




















「怜!音程がずれているわよ。もう一度。」









オルゴールが常に鳴ってそれだけが生き甲斐だった夏。









僕が10歳、兄が12歳、それにも関わらず音楽や勉学の才能をもっているのは僕の方で、兄は出来損ない。









父や母から出来ない子の烙印を押された兄は、腹いせに僕に暴力をふるいながらも僕を愛していた。









「ごめん、しゅう、…ねぇ仲直りのちゅーして。」









あまりにも非力で美しい兄を僕は放っておけなかった。









桃色の薄い唇にそれを重ね合わせて僕らは繋がった。









「れいお兄ちゃん。ボクのことすき?」









もはや暗黙の言葉のように兄は当然の事ながら答える。










「きらいだよ、お前みたいな奴なんて。」









「ふふっ、そんなこと言って、好きなくせに。」








笑い合うこの空間、世界観こそ誰にもつけ込めない天国の楽園だった。









だがそんな天国の楽園に介入者がやって来ることで未来は変わってしまった。










パリンッ!と皿が割れる音が部屋に響く。









「し、柊楓坊ちゃま、…怜お坊ちゃま、今なにをなさっていたのですか。」









使用人が僕らを見て唖然とした。









これで母や父、祖母までもが僕らの部屋まで駆けつけて来た。









「いったいなんの騒ぎです….!そこの使用人何があったか説明なさい。」









「申し訳ございません。その、お坊ちゃま方が…」











全ての事情を使用人は僕らの許可無しに祖母に報告してしまった。









僕は平手打ちをされ、兄は家を追い出され天国の楽園は壊れていった。









それでも兄を救う希望を微かに持ちながら兄の元へと行った。









「お、お兄ちゃん!ごめんね…これからは普通の兄弟になろ?ね?」









額に汗が放出する兄は一段と辛そうに見える。









希望をぶつけた所でその希望が打ち砕けることを僕は知らずに兄に話しかけてしまったのだ。










「うん….待っててよ。またさっきみたいに戻れるから。柊楓、今度こそ…」









言いそびれた言葉を気になりもしたが、それを気にせず兄を屋敷へと入れた。









「柊楓、部屋へいて。楽しいことが待っているからさ。」









満面の笑みを見せた兄に安堵して階段を駆け上って行った。









数時間経ち、コンコンとドアのノック音が聞こえた。









「出来たよ。柊楓。出てきて。」









言われるがままに出てリビングへと足を踏み込むと、誰も居なく静寂な空間が広がっていた。









「お兄ちゃん、なにこれ?」









「あいつら出ていっちゃったんだ。だから2人っきりだよ。俺とお前だけ。」









違和感を覚えつつも兄の歪な愛のカタチには逆らえずに従うしか無かった。









数年後、一線を超えてしまうなんて誰が予言したのだろう。









兄と弟を超えて、全部破片みたく壊れた。









僕の心も兄の人としての成り立ちも。

























・・・













14歳と16歳になってもその関係は変わらなかったのに、その翌年に変わってしまうとは思えなかった。










「救いようが無いな、僕も。兄貴も…」









呟いてベッドへと入り、何も考えずに涙だけを流した。









こんな世界要らなかった。









兄が存在する世界なんて。









ほんと、僕は情けない気弱な人間に過ぎないのだ。









兄をそうさせてしまったのは自分自身だと言うのに。









『本当に可哀想だな、…俺の弟は….俺だけのお前なのに。俺が救ってやるよ。一生二人でいられるように。』










「…もうそんなこと言わないでよ、兄貴。僕は普通の兄弟に戻れて今までの日常で過ごせれば良かったんだ。それで満足したよ。」









『いいやお前は俺がいなければ生きれない。今までもそうだったから。』











「執着していたのは兄貴の方じゃないか。僕は一人でも生きていけるのに。誑かして、戻ろうとして。」








次第に視界が真っ白になっていく。









こんな人に溺れてしまうような人にしてしまったのは誰なのだろうか。








美しいだけの瓦落多人形は要らない。









幸せが欲しかっただけなのだ。









手に持っている箱を開けてそれを見つめた。









本当に欠陥品として成り立つのは僕だったくせに。










兄貴のせいにして自分は違うと過信しすぎて。










「兄貴は僕といきたい?」









何も反応は無く、諦めかけた時兄貴は言った。









『さぁ、柊楓はどうしたいんだ。』









柊楓と呼ぶ声も不器用の優しさも兄貴だった。









この世がもっと残酷ではなかったのなら、生きれたかもしれないというのに。









「….さぁね。」



































この平凡な年明けと汚れた世界で僕は幕を閉じた。









歪な幸せにならないように願いながら目を閉じて。































































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