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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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次の日。

五十嵐 友香 … 今

【今日委員会終わりに部室寄ってもいいですか?】

【’スタンプを送信しました’】


お気に入りのパンダスタンプ付きでメッセージを送ると思っていたよりも早めに返信がくる


瀬南 亜貴 … 今

【何で敬語?終わったらおいで。】


瀬南くんの’おいで’ってなんか可愛くて胸がほっこりするな…


五十嵐 友香 … 今

【何となく笑

ありがとう、行くね!】

メッセージのやりとりが終わり、今日の流れが決まったなと思ってたらもう一度手の中のスマホが震えた

瀬南 亜貴 … 今【ん、待ってる。】


‘待ってる’…

待っててくれるんだ。あぁ、早く委員会のまとめパパッと終わらせて 部室に行こう




委員会終わりの1-B教室にて

「コンクールのチラシの校正もだいぶ進んできたな」

「そうだね、吹奏楽部の定期演奏会も話がまとまってきたし順調じゃない?」

「だな」

いつもと同じで、委員会で走り書きしたメモ書きをノートに清書する作業。右隣にいるのは、もちろんますみんだ。

「あ、そういえば、この短期間で亜貴とだいぶ仲良くなったよな」

「そう?」

「もかっぺと話してる時の亜貴は結構リラックスしてる気がする」

「私は瀬南くんのこと友達だって思ってるけど、瀬南くんにとっての私は保護対象なんだって、おかしいよね」


くすくす笑いながらそう言うとますみんは’へー’と感心するような声を出した。


「やっぱ、もかっぺは凄いな」

「え?保護対象だよ?凄いの?」

「いや、そこじゃなくてコミュニケーション能力のことな」

「え?何もすごくないと思うけど」

「亜貴は言い方キツイことがあるから誤解されやすいんだけど、もかっぺは上手く汲み取ってるみたいだから」

「そうなのかな?」

「うん、俺はそう思う」


どんな形であれ、瀬南くんと関わりを持ててることが貴重なことなのかもしれないと思うと、保護者と保護対象という謎の今の関係も悪くないなって思える。


「愛想つかされて、保護対象外にならないよう気をつけるよ」


文化委員会のまとめは思っていたよりも早く終わった。美術部の部室へ向かうことを瀬南くんに知らせてから歩き出す。


扉を開けると部長の太刀川先輩と副部長の浦川先輩と瀬南くんの他に2人女の子がいた。

「失礼します」

「あー、五十嵐ちゃんいらっしゃい」

「こんにちは」

太刀川先輩がウェルカムな雰囲気で出迎えてくれるからすごくありがたい。女の子2人がこちらを見ていたので挨拶をする。


「はじめまして、1-Eの五十嵐友香です。人を探していて美術部にお邪魔してます」

「部長からさっき聞いたよ、私は2-Bの蒼井文乃」

「……はじめまして。1-D、真島凪です」


っ!い、1年生部員…!!

しかも大人しそうな清楚系美少女で私のイメージぴったりな子だ!

その子に話しかけようかと思っていたらもう1人の2年生の先輩から声をかけられた。


「名前も作品名も分からない作者を探してるんでしょ?かなり無謀に近いことしてるのね」

「自覚はあります」

「まぁでも自分のファンが自分を探してくれているって知ったら、私ならとっても嬉しい。」

蒼井先輩はそう言ってニコッと笑ってくれた。


「ヒントがかなり少ないみたいだけど、探し出せるといいわね」

「ありがとうございます!」

私の言葉を聞いてから蒼井先輩は自分の絵の方へと戻っていった。


「あの、真島さん。私人を探していて…」

「私も部長から聞きました。1年生の誰かが当てはまるということも」

「それなら!」

「残念だけど五十嵐さんの探し人は私ではないと思う」

「……」

「中学3年生の夏の市内コンクール。私も入賞して飾られたんだけど、私が描いたのは’鳥の絵’なの」

「鳥の絵…」

「風景も描いたけど1番大きく描いたものは鳥だから、五十嵐さんの探す風景画を描いた作者には当てはまらないかなって…」


そう言って真島さんはスマホを取り出すと簡単な操作の後にこちらに画面を見せてくれた。映し出されたのは、青々と生い茂る木々に囲まれ美しい羽根を羽ばたかせる1羽の鳥の絵


「この絵ではないよね?」

「…素敵な絵だけど、探してる人のものじゃない」

「期待させてごめんね」

「いや、謝らないで!むしろ絵を見せてくれて ありがとう!」

「瀬南くんと私以外にも2人1年生がいるんだけど、そのうちの1人は友達だから、中学3年の夏の市内コンクールで何を描いたのか聞いてみるね」

「ほんと?!ありがとうっ」

真島さんは他の人と話すことが得意ではなさそうだったのに私に対してとても親切に接してくれた。分かったらすぐ連絡するねと連絡先まで交換してもらえた。


「真島さんありがとう!」

「ううん、探し人さん見つかるといいね」

「うん!」

真島さんとの会話を終えて瀬南くんの方を向くとこちらのやりとりをずっと見ていたのか目が合った

「瀬南くんのおかげで、ちょっとずつ探してる人に近づいてる気がするよ、ありがとう」

「僕は何もしてない」

「ここに来れるようになったのは瀬南くんのおかげだよ!手伝ってくれてありがとうね」

「自力で探すんでしょ、手伝った覚えないから」


相変わらず可愛げのない言葉ばかりだけど、昨日みたいな冷たく突き放すような態度ではないから、あまり気にしていない


「私も部活行かなきゃ、また明日ね瀬南くん」

「ん、またね」

「皆さん、ありがとうございました!またお邪魔します」

「五十嵐ちゃん、またね~」

「また遊びにおいで~」

美術部の皆さんが見送ってくれる中、私は部室を後にした。







「絵だけで作者を探すって大変だよね」

「写真も撮ってないから、自分の頭の中の記憶だけを頼りにね」

五十嵐が去った部室では彼女に対しての関心を示す会話が飛び交っていた。


「自分の絵が誰かの心に残ってるってかなり嬉しいよね」

「分かります」

「五十嵐さんみたいな真っ直ぐな目で、自分の絵を好きだと言ってもらえたら嬉しいです」

「亜貴ちゃんもそう思わない?」


五十嵐が去ってから、一言も話さない瀬南へと質問する部長

「……まぁ嬉しいんじゃない」

絵を描く手を止めることはなく瀬南はぽつりと呟く。

「あ、ねぇ、そういえば亜貴ちゃんは中学3年の夏、市内コンクール何描いてたっけ?」

「やめて。スランプだったから話したくない」

「亜貴ちゃんが何描いたか友香ちゃんは知らないの?」

「聞かれたことない」

「聞かれてないから教えないって…」

「ほんと屁理屈というか何というか…自分から教えてあげればいいのに」

「あの子は自力で探すって言ってたし、僕は手伝わないって言ってあるから」


表情を変えることもなく、ただただ手を動かしていく


「亜貴ちゃんは意地悪だね」

微糖な貴方に惹かれる私

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