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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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部活を終えてスマホを確認した私はため息とともに肩を落とした。

連絡先を交換したばかりの真島さんから、もう1人の子も風景画は描いてないとの連絡を貰ったからだ。海の中の絵を描いたらしく、夕暮れとは縁のない絵らしい。あと1人かぁ。なんか会えない気がしてきた。

落ち込んでいたら肩をポンポンと叩かれて顔を上げると水島くんがいた。


「五十嵐、一緒に帰ろ」

「あ、うん、行こっか。美優ちゃん達呼んでくるよ」

「なっ!ちが、俺は五十嵐と2人で帰りたいんだってば」

「私と2人で?何で?」

「お礼してくれるんじゃなかったの?」

あー、苺を抱えたウサギを思い出す

そうだ!あの時そんなような話してた

「忘れてたの?」

「え?!いや、まさか…」


あはは…と乾いた笑いになってしまったけど、とりあえず靴を履いて 部室を後にする。学校の教室とは別棟になっている私達の部室。階段を降りて校門へと向かう。

「2人で帰るのって初めてだよな」

「そうだね、なんか変な感じ」

「あ、帰り どっか寄ってく?」

「行きたい所ある?」

他愛のない話をしながら駅までの道を進んでいく。

昨日、瀬南くんと帰った時は’他人のことよりも自分優先になれ’って言われたんだっけ…って、何で私瀬南くんのこと思い出してるんだろ。今私の隣にいるのは瀬南くんじゃないのに


「そういや五十嵐は今回ハマり役だよな」

「私は上手く出来てるか不安なんだよね。8歳の女の子を表現ってなかなか難しいよ」

「台詞の言い方も幼い感じだし、可愛くて良いと思う!」

「幼さ表現出来てるなら嬉しいかも」

部活やってる仲じゃないとこういう話も出来ないよね。会話を楽しもう。

「衣装とか着たら、もっと可愛くなると思う!」

「そういえば先輩が幼さ出すためにツインテールにしようって言ってたの、流石に高校生にはキツイと思わない?」

「五十嵐のツインテール…有りじゃね?」

「無しでしょ、否定してよ」


そんなことを話しながら歩いていると水島くんと手がぶつかってしまった。距離を置こうと思ったけど移動できるようなスペースはない。車道側を歩く水島くんの方を見てみると白線までのスペースが結構空いていた。


「あ、ごめん。…これ以上詰めれないから少しそっちに寄ってもらってもいい?」

「何で?」

「え?」

「五十嵐は俺と近いの、嫌?」

‘嫌だ’というわけではないけど、適切な距離感ではないのではないか…とは思う。でも私が’嫌’と言ってしまったら彼は傷ついてしまうかもしれない。

「………えーと」

「嫌じゃないならいいじゃん」

そう言って手を掴まれそうになった時、何故か瀬南くんに手を掴まれたことを思い出して、反射的に手を引いてしまった。その出来事に歩みも止まる。


「あっ……ごめん」

「…嫌だった?」

水島くんの寂しそうな顔を見てしまって、傷つけてしまったんだと分かると反射的とはいえ手を引っこめてしまったことに罪悪感が芽生えてくる。

私の手を掴むことによって少しでも傷ついたものが癒えるのなら水島くんに手を掴まれても別にいいじゃないか。

「あの、その…嫌、というか…」

「嫌だから手引っ込めたに決まってるでしょ、そんなことも分かんないの?」

思わぬ声にびっくりして後ろを振り向くと瀬南くんがいた。

「え…何で」

「瀬南、ついてきてたのかよ」

「人聞き悪い事言わないでくれる?言っとくけど、先に僕が歩いてたらそっちが前に割り込んできたんだからね」

「こんな真後ろにいることないだろ」

「急に止まったのはそっちでしょ。それに帰る道が一緒なんだから、嫌でもついていくしかないし」

瀬南くんがいるって分かった瞬間、安心してしまった私がいる。


「瀬南くん」

「口で言えないのはダメだけど、ちゃんと自分の気持ちを示せた所は褒めてあげる」

「っ!」


ばっちりと目が合った瀬南くんから優しい表情を向けられる。

あ、やばい…顔がじわじわと熱くなってくる。


「距離作ってって言われたのに無碍にしたり、何で手を引っ込められたのか分かってない辺り、水島はもう少しこの子のこと考えてあげたら?」

「っ…瀬南には関係ないだろ」

水島くんの言葉に眉毛をピクリと動かした瀬南くんは表情はそんなに変わらないけど、声色は少しだけ冷たいものに変わった。


「見守ってる子が嫌がってるから、ちょっと黙ってられなかったんだよね」

「何だよ見守ってる子って、瀬南は五十嵐とどういう仲なわけ?」

「それこそ、水島には関係ない」

そこまで言うと瀬南くんは私と水島くんの間をスタスタと歩いて通り抜ける。


「あんまり虐めるようなら、僕がその子を駅まで送って行くけどどうする?」

「どうするって俺と帰るって約束だし」

「’約束’って言葉で縛って、五十嵐の気持ちを蔑ろにしてないならいいけどね」

「っ!」

「まぁあとは好きにしたら?僕は先に帰るから」

そう言って瀬南くんは振り返ることなく駅までの道を真っ直ぐ歩いていく。


「…………」

「水島くん」

「五十嵐、無理に距離詰めてごめん。手も…急に握られたら驚くよな」

「…ちょっとびっくりした」

「ごめん」

瀬南くんの言葉を受けたからか、水島くんは真っ直ぐな目で謝ってくれた

「ううん、気にしないで」

「距離詰めたりはしないから、駅までは一緒に帰ってもいいかな?」

「うん、一緒に帰ろ」



私は人と話すことが好き色んな人と友達になるのが好き人と仲良くなるのが好き

水島くんのことは嫌いではない

部活動で一緒に頑張ってる仲間だから他の知り合いより大事だとは思ってる。だからこそ、無碍にできないこともあるけど、瀬南くんが言ったように自分の気持ちを素直に伝えて断ることも覚えていかないと今日みたいな事が 起きてしまうんだろうな。

微糖な貴方に惹かれる私

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