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撮影前の楽屋。 鏡に映る首元にはさりげなく輝く銀色。
衣装の黒シャツに合わせて選んだ、タイトなシルバーのネックレス。
喉元のラインを強調するそれは、最近の自分のお気に入りだ。
「じーんちゃん」
背後からよく聞き慣れた声が響いた。振り返らなくても分かる。勇斗だ。
「お、それいいね。……なんか、今の仁人に合ってる」
「そう? ありがと。俺も気に入ってんだよね。」
俺は鏡越しに勇斗と視線を合わせ、少しだけ口角を上げた。
うん、やっぱりいい感じ。
「ね、ちょっと見せて」
そう言った勇斗はそのまま首筋に指を伸ばしてきた。
突然のくすぐったさに思わず肩がぞわぞわと震えた。
「ぇ、あー、まぁいいけど…」
勇斗の長い指が、首筋に触れる。
何も言わずネックレスを撫でる姿を鏡越しに見つめる。
「……っ、はやと?」
勇斗の長い指が、俺の鎖骨をなぞり、ネックレスの輪にスッとひっかかる。
そして、そのまま。
「え……っ、わっ……!」
ぐい、と。
一切の躊躇なく、自分の方へ引き寄せられた。
ネックレスが喉元に食い込み、身体が勇斗の方へ崩れる。
勇斗の胸元にもたれ掛かる体制でなんとか留まった。
「……び、っくりした…」
驚いて彼の方に顔をやる。
まだネックレスはぴんと首元に張ったまま。
少し苦しくて、でもそれ以上に、俺を見下ろす勇斗の瞳に吸い込まれそうで。
勇斗は、俺の反応を観察するように、じっと喉元を見つめている。
何を考えているのか分からずただ彼の顔を数秒間見つめていた。
「……こうしてるとさ。首輪みたいで、ちょっとかわいいかもな」
勇斗の声が、耳元で低く響いた。
なんだか強引で、俺のことを一人の「人間」じゃなくて、自分の「所有物」みたいに扱っているような、なんだか色気のある、そんな声。
「……え、……ぁ……」
心臓がどくどくと脈を打つ。
これは、驚きか、それとも、恥ずかしいのか。
原因は分からないけれど、俺は勇斗に引き寄せられたこの姿勢のまま、一歩も動くことができなかった。
「……ふぅん、イイじゃん、これ」
勇斗はそう言うと満足げににこりと笑い
何事も無かったかのようにぱっと指を離し俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてふらりと楽屋の外へ出ていった。
解放されたはずなのに、首元にはまだ、彼に引かれた時の「鎖」の感触が、熱く、重く残っていた。
「……えぇ、……はやと、?」
もう一度名前を呼んだけれど、その頃にはもう彼は楽屋には居なくて。
俺だけが一人楽屋の隅でこれまで感じたことのない、
喉元のヒリつくような余韻に、ただ立ち尽くしていた。