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花南は、炎龍がいる守護の国近郊の崖に戻り、早速、炎龍のエンに会いに行っていた。
「エンさん〜!」
「花南か、戻ったようだな。ちょうど、大人のお前も来ているところだぞ」
異郷者が世界の創まりにやって来て、大人の花南を生み出してしまってから、その姿は消えることはなく、基本的にはぶらぶらと遊び歩いていた。
時折、このように炎龍の元に帰り、子供の自分と楽しく談笑するような生活を送っていた。
しかし、大人と子供の両者がいることは時空に歪みが生じることになる。
それは、仙術魔法によるものの為、この二人にしか影響はしないが、時折、二人の意識が一体となる。
「エンさん、バベルが封印されることになったわ」
大人花南の意識が子供花南に乗り移る時のみ、大人花南の姿は消える。
「意識が一体化したか。バベルはそう選択したのだな」
「えぇ。同時に、東真と西華の記憶も消すことになった。四方守神としての使命もこれで終わりね」
徐に、苦い顔を浮かべる花南。
この一体化現象は、本人の意志ではどうにもならない為、直ぐに戻る時もあれば、長い間そのままなこともある。
そして、このバベル封印の折はとても長かった。
数年と、子供花南の意識は戻ることはなかった。
そんな時に、カエンは訪れていた。
「やあ、お久しぶりです。エンさん、花南」
「汝は、世界の創まりに現れた異郷者だな。無事に還れたようだな」
「お陰様で。そして、己のすべき事も見つけました」
ハットを脱ぎ、カエンは頭を下げた。
「炎龍殿、どうか、この世界を守る為、私に力を貸して欲しい……!」
そして、エンは事のあらましを聞いた。
「そうか。七神の暴発が迫り、それでバベルが……。七神を殺すのは多少苦しいが、我が使命は世界を厄災から守ること。その願い、承ろう」
「ありがとうございます、エンさん」
「だが、汝は異郷者だ。我の力を授けることは出来ない」
そして、エンは花南の頭に大きな手を乗せた。
「炎龍の加護は、花南に渡すこととする」
「でも、私は龍族の血を引いてないわよ?」
「大丈夫だ。七龍、七神、そして四方守神は、バベル直属の特別な魔力を宿している。私の加護も受け入れられる」
「私は、今度こそしっかり使命を果たしたい……!」
カエンが苦い顔を浮かべると、エンは続けた。
「汝は、ルシフェルに召喚されたと話していたな。恐らくだが、封印されたバベルを見て、あのミカエルが何もしないとは思えん」
「と、言いいますと……?」
「同じように、異郷者を召喚するはずだ」
「……!」
「道は見えて来たようだな」
「異郷者であれば、私が無くしてしまった七属性魔法を使える……! その異郷者との協力が叶えば……!」
そして、その架け橋に選ばれたのが
「私?」
「ああ、花南。汝に炎龍の加護を渡したのは、その異郷者を守ってやって欲しいからだ」
「でも私、いつ意識が戻るか分からないわよ? 憶測だけれど、子供の私の精神的なものに左右されると思うの。今回はバベルの封印や、みんなの記憶消去。言葉の意味がよく分かっていなくても、子供ながらに心配な想いがこうして私との一体化の長さに繋がっていると思うの」
「大丈夫だ。私としても、この名をくれた花南に酷い真似をする気はない。架け橋と言っても、楽しく異郷者を導いてくれればこちらでなんとかしよう」
そして、花南はエンに協力することとなった。
カエンの道が定まったところで、花南は元に戻った。
「あれ? カエンだ! 久しぶりだ!」
「やあ花南。お久しぶりですね。大人の花南とは少しお喋りさせて頂きましたけどね」
「わー! 花南も混ざりたかったなー!」
「ふふふ、談笑はまたの機会に。私にはすべき事が出来ました。花南のご友人、もう僕の友人でもありますね。炎龍のエンさんを少しばかりお借りしますね」
そして、カエンはエンに乗って去って行った。
龍族の一味を探しに……。
残された大人花南と子供花南。
またしても、子供花南は少し寂しげな顔を浮かべた。
「花南、これはエンにもカエンにも話してない事だけれど……」
そして、大人花南は頭を撫でた。
「私が予知してあげる。花南は、バベルともう一度会えるかもしれないわよ」
「え!? 本当に!?」
「えぇ。そうね、ミカエルのことだから、自然の国で待っていれば、会えるかもしれない。でも、バベルはバベルの姿をしていないかもしれない。だから、その時は花南は、その呼ばれた名前で呼んであげてね」
「うん! 分かった!」
「そして、今度は花南が彼を助けてあげて欲しい」
「うん! 花南がんばる!」
そして、頭を撫で終わり、大人花南は敬礼した。
「花南隊員! 出動準備はよろしいか!」
すると、その光景を見て、花南は咄嗟に真似をした。
「ハッ! カナンたいいん! しゅつどー!」
「ふふ、その意気よ」
「あははは! たのしい!」
そうして、花南はまた笑顔を取り戻し、子供花南は自然の国へと向かった。
「私一人になってしまったわね。さて、この先どうなることか……」
「ワシの魔力を感じると思ったら、時空の歪みに残されているのはお主じゃな?」
一人、孤独に炎龍の巣に残っていた大人花南と遭遇したのは、仙人ディムだった。
「あら、私が本体じゃないことが分かるのね」
「当たり前じゃ。ワシの仙術魔法なんじゃからな」
「そう。じゃあ、あなたが時空魔法の仙人様なのね。私は聞いてもいいんじゃないかしら? バベルが復活するのかどうか。私はミカエルが復活させると思ってるわ」
「そうじゃな。本来なら話しても良いが、お主も途中で関わる問題となる。だから話せんが、これだけは言える。お主の接し方で、バベル復活は変わる」
「ふーん……」
暫くすると、白髪の少女が現れた。
「そちらの子は?」
「初めまして。私はディム様に仕えているリオラと言います。冥界の国から助け出して頂きました」
「ふむ、と言うことは闇魔法が使えるのね」
「そうです。貴女が炎龍から加護を受けていることは聞いています。それをしっかりと使えるように、私が相手をしてコントロールさせます」
「あら、私も鍛えなくちゃいけないのね」
「はい、大切なことですので」
そうして、リオラと大人花南二人きりでの修練が始まっていた。
大人花南が習得した技術は、自動的に本体である子供花南にも習得される。
そして、子供花南の弓の精度と火力は、大人花南の修練によって鍛えられて行ったのであった。