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サイド キリ
バキンという音がした。
私はその音でキノが間に合ったことを察した。
「アアアッ!!」
汚い悲鳴が路地裏に響く。
「うるさいなぁ。キノ、骨折ったんじゃない?」
「急いだから力加減出来なかったんだよ!」
相変わらず危機感のない会話だなぁ。
そんなこと話す前にトキを心配するとか、相手から離れるとか、ないのかな?
「大丈夫?」
私はトキに声をかけた。
「……な、んで…………?」
掠れた声で、トキは聞いてきた。
「あー…。天才がいた、から?」
タエって、すごい。私は苦笑いでそう答えた。
サイド キリ
「このままじゃ、トキさん殺されちゃうから」
昨日、タエはそう言った。
「な、なんでそう思うの?」
「だって、トキさんの家庭は聞いた限りじゃ母子家庭みたいだから。元々はトキさんのお母さんだけを虐めていたみたいだし」
スラスラとタエは全て見ていたことのように話す。そこに淀みはなかった。
「トキさんとトキさんのお母さんを離れ離れにした方があの上司さんには都合がいい。だから、例えば悪いデマを流してトキさんを逮捕させたり、それが失敗したら自分から殺しに行くと思う」
「でもよ!そんなことできるのか?!デマとか、バレたら自分がオダブツなんだろ?!」
バンッとテーブルを叩きながら立ち上がってキノは反論する。
……それは私も気になっていたことだった。
でも…………。
「甘いと思う」「甘いな」「甘いねぇ」「甘いよ」
キノに全員からダメ出しが出る。
「なんで、あいつがトキの誘拐現場にいなかったか、わかるか?」
「……あっ!」
マオのヒントでキノは気づいたようだった。
「自分が捕まるのを防ぐためか……!!」
そうだと思う。
あいつ、クズなのに意外と用心深い。
「人を虐めるのが好きな人だから、殺すときは近くにいる可能性が高いと思う」
そして、徐に地図の上を指さした。
「たぶん、トキさんの会社近くの路地裏あたりが一番やりやすいんじゃないかな?少なくとも、私ならそうすると思うし……」
あの会話だけで、ここまで推理できるなんて。
そして、見事にその推理は当たったというわけ。
「どうせならさ」
悪い笑みを浮かべたルネさんは、人差し指を立ててある提案を口にした。
まるで、「ついでにお菓子を買おう」と言うように。
「あの人、罠に嵌めて社会的に殺さない?」