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「「ギャー!!!!!こっち来んな!!!!!」」
あれだけ俺をからかっておきながら、外にまで聞こえる声量で叫ぶ川瀬。その声を聞いて、俺達は涙が出るほど笑った。
「ねえまさか俺もあんな感じだった?」
ふと心配になって聞くと、
「んー………………可愛かったよ」
と、何の答えにもなっていない返事が返ってきた。これ以上ないくらい幸福度の高そうな笑顔を添えて。
5分ほど待つと、倉井におんぶされた今にも死にそうな顔の川瀬が出てきた。
俺も宇野も倉井も大爆笑で、ツボから抜け出すまで3分はかかったと思う。
「お前このままここの従業員として働けば?特殊メイク要らないくらい真っ青だし。」
真顔で倉井がそう言い、宇野が「エースになれるよ」なんて付け足すものだからもう俺は涙を流しながら笑った。川瀬はぐったりとして言い返す気力もないようだ。
「…..あれ?てかずっとおんぶしてたの?」
気になって俺が聞くと、先に答えたのは倉井だった。
「あー途中からかな。こいつが暴れすぎて手錠壊れたからはぐれないように担いだ。」
早口でそう説明すると、その時の光景を思い出したのか、再び倉井はゲラゲラ笑い始めた。
あたりは随分暗くなり、時刻は19時を回っていた。
帰るのにも時間がかかるので、俺達は最後に観覧車に乗って締めることにした。
4人で街中の光を集めたようにきらきらと色とりどりに輝く夜景を眺めて、景色を背景に写真を撮り、今日の思い出を振り返れば、あっという間に1周が終わった。
散々はしゃいで満足した俺たちは、遊園地を出て、行きとおなじ道を辿って今朝集合した駅に着いた。
「俺と倉井はこっちだけど、お前ら家どっち?」
川瀬が自分たちの進行方向を指しながら俺たちに聞く。
「俺はこっち」
「俺も」
偶然、俺と宇野の家の方向は同じで、川瀬たちとは真逆だった。
「んじゃーここで解散だな!今日撮った写真グルラに送っといて〜!!」
川瀬の発言に3人で頷くと、2:2に分かれて解散した。
「楽しかったな〜」
道に転がる小石を蹴りながらそういうと、宇野は大きく頷いた。
「うん。すごく。何より来橋と初めて遊べて、めっちゃ嬉しかった。」
やけにゆっくりと歩く宇野にスピードを合わせながら、照れ隠しにからかってみた。
「お前ほんと俺のこと好きだよな〜」
すると、ただでさえ遅かった歩みはついに止まり、宇野は何も言わずにじっと俺を見つめた。
「ん?宇野?どうしたの」
予想外の反応に、からかわれるのは地雷だっただろうかと焦ってはみたが、今までの宇野とのやり取りを思い返してみてもそんな素振りは一切なかったように思う。
宇野はゆっくりと息を吸って、少し潤んだ瞳で
「….うん。好きだよ。」
たった一言だった。
これは、告白、なのだろうか。それとも男同士のよくあるノリか。やけに真剣な表情に困惑していると、俺の意を汲むように宇野が続けた。
「付き合いたいっていう意味で、俺は来橋が好き。」
いつものどこか余裕そうな笑みはなく、声は震えていた。
宇野の言葉を理解した途端、心臓の動きが痛いくらいに激しくなる。呼吸の仕方、発声の仕方が分からなくなるくらい動揺してしまっている。
そんな俺を見て、宇野は眉尻を下げていつものように優しい笑みを浮かべた。
「…..冗談だよ、冗談。来橋は反応良くて面白いなあ。からかいたくなる瑠夏の気持ちがわかる。」
泣きたくなるくらい優しい声でそう言って、硬直する俺の頭を撫でたあと先に進んで行った。
告白の咀嚼には時間がかかるくせに、今宇野がどんな顔をしているのかは容易に想像できた。気づけば俺は、前に進む宇野を追いかけ腕を掴んでいた。
「冗談….じゃないだろ。ちゃんと、ちゃんと話そう。話したいよ、宇野。」
噛み締めるようにそう言うと、宇野はこちらを振り向かなかった。
「宇野、こっち見て。」
「……嫌だ」
珍しく、駄々をこねるように頑なにそっぽを向く宇野を見て、何故か俺の緊張は解けた。
今度はさっきよりも柔らかい声色を意識しながら、腕からスライドして宇野の手を握った。
「宇野、お願い。」
「………やだ。俺今ブスだし、ダサい。こんな所、来橋にだけは見られたくない。」
「宇野はいつでもかっこいいよ。俺さ、ちゃんと宇野の気持ち聞きたいよ。何時間かかってもいいから。」
多少強引にでも、今話を聞かなきゃいけないと思った。理由なんか知らない。ただ、そう思った。
俺の言葉を聞きゆっくりとこちらを振り向いた宇野は大粒の涙を零しながら、俺を見つめていた。
月明かりに照らされて、頬を伝って地に落ちる涙さえ輝いて見えた。
今 までの人生で1番、綺麗なものを見た。