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「直美、ん」
「あ、あむ……っ…」
夫はぐずる亜優に食べさせるのではなく、亜優に食べさせることでなかなか食べられない私に、トーストをちぎって食べさせる……あーん、だ。
彼にはぐずる亜優が目に入っていない。
この“あーん”は、わかりやすい一例で、夫は何かにつけて亜優でなく私のお世話をして、私の手伝いをしてくれる。
私が亜優の歯磨きをしている間に、洗い物をしてくれる。
私が亜優を寝かしつけている間に、洗濯物をたたんでくれる。
とても助かる。
本当にいい夫だもの……これだけならば………
他人から見てもいい夫だろう。
家では亜優じゃなく“直美”“直美”のハルくんが、外で転んで泣く亜優を抱っこしてなだめる私から、ヒョイと亜優を受け取り優しく抱っこして背中をさする光景はいいパパでしかない。
でも…彼の本心は
“直美が重いやろ”
“直美に負担かけんな。ケガもないコケたくらいでいつまでも泣くな”
“直美を困らせんな”
なのだ。
亜優が赤ちゃんの時に、それらを声に出してあやす夫に
「子どもへの声かけがそんなんではアカンと思う…そんなんでは亜優が真っ直ぐ育つと思えへん…」
と訴えたところ
「問題行動のある子どもは直美の負担になるだけやな。ごめん、わかった。気をつける」
彼はそう応えた。
それ以降も、私を助けて亜優の世話をすることに変わりはないけれど、亜優に優しいフリをしている。
夫は決して亜優のことを嫌いではないのだ、と信じたい……私の血が入った娘だから。