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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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そのホテルを見つけた時、エリオットは本気で感動した。
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「ベッドだ!!」
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廃墟のロビーに響く歓声。
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「本物のベッドだ!!」
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「静かにしろ」
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ピザガイが即座に注意する。
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「ゾンビが来る」
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「でもベッドだよ!?」
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「見れば分かる」
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「しかもホテル!」
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「見れば分かる」
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「枕もある!」
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「見れば分かる」
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ピザガイは呆れたようにため息を吐いた。
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だが内心では少しだけ同意していた。
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終末世界になってからというもの、まともな寝床などほとんどなかった。
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床。
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車内。
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倉庫。
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屋上。
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時には机の下。
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そんな生活ばかりだ。
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だから。
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多少浮かれる気持ちも分からなくはない。
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部屋の安全確認を終える。
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窓を塞ぐ。
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出入口を固定する。
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周囲に敵がいないことを確認する。
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そして。
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ようやく休息の時間が訪れた。
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「よし」
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エリオットがベッドへ飛び込む。
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柔らかい。
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久しぶりの感触だった。
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「生き返る……」
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「死んでない」
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「そういう意味じゃなくて」
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その時。
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二人とも同時に気付いた。
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沈黙。
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部屋を見回す。
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ベッド。
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一つ。
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以上。
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「……」
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「……」
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エリオットが口を開く。
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「まあ」
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「まあ」
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ピザガイも答える。
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「仕方ないね」
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「仕方ないな」
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終末世界だ。
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今さら恥ずかしがる関係でもない。
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何度も背中を預けてきた。
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何度も命を助け合ってきた。
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今さらベッド一つで騒ぐ方がおかしい。
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だから。
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当然のように。
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二人は同じベッドへ潜り込んだ。
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だが。
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問題が一つだけあった。
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狭い。
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非常に狭い。
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ピザガイが大きすぎるのである。
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「……」
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「……」
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肩が触れる。
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腕が触れる。
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脚も当たる。
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寝返りなど打てない。
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「ピザガイ」
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「なんだ」
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「でかい」
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「知ってる」
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「半分くらい外にはみ出てる」
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「お前が中央を占領してる」
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「えへへ」
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「笑うな」
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しばらくして。
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部屋が静かになる。
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外では風が吹いていた。
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遠くからゾンビのうめき声も聞こえる。
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だが。
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ここは不思議なくらい穏やかだった。
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エリオットが目を閉じかけた時。
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ふと。
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腰に重みを感じる。
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「……?」
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ピザガイの腕だった。
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大きな腕。
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無意識なのか。
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それとも意識的なのか。
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エリオットには分からない。
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ただ。
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自然な動作だった。
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まるで。
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そこにいることを確認するように。
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逃がさないように。
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守るように。
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「ピザガイ」
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小さく呼ぶ。
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「なんだ」
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「抱き枕扱い?」
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「違う」
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即答だった。
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「じゃあ何」
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「落ちる」
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「ベッドから?」
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「ああ」
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エリオットは笑う。
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絶対に嘘だ。
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この男は昔からそうだ。
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本当のことを言わない。
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大事なことほど。
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だから。
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エリオットも何も言わない。
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代わりに少しだけ身体を寄せた。
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広い胸板。
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温かい体温。
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聞き慣れた鼓動。
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自然と頬がそこへ触れる。
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「おい」
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「なに?」
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「近い」
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「君も近いよ」
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「……」
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反論できなかった。
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部屋の外で何かがぶつかる音がする。
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ゾンビだろう。
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うめき声も聞こえる。
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危険は決して遠くない。
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明日生きている保証もない。
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それでも。
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今だけは。
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エリオットは目を閉じた。
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腰を抱く腕の温もりを感じながら。
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ピザガイも何も言わない。
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ただ腕を離さなかった。
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終わった世界の中で。
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唯一変わらず残った居場所みたいに。