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#高校生
第82話 「あと一勝」
2023年7月。
福岡大会決勝。
柳城高校―九州第一高校。
朝から球場は満員だった。
夏の甲子園まで。
あと一勝。
両校の応援席も熱気に包まれていた。
柳城のアルプスには。
在校生。
保護者。
卒業生。
そして舞の姿もあった。
試合開始。
初回から緊張感が漂う。
九州第一のエースも好投手。
簡単には打てない。
塁も負けていなかった。
ストレートが走る。
変化球も低めへ決まる。
三回終了。
0対0。
投手戦だった。
五回表。
九州第一が先制する。
二死二塁。
センター前タイムリー。
0対1。
球場が沸く。
柳城はこの夏初めて追いかける展開になった。
しかし。
ベンチは慌てない。
六回裏。
史陽が先頭で出塁。
レフト前ヒット。
盗塁成功。
無死二塁。
続く打者が送りバント。
一死三塁。
ここで主将。
初球を叩く。
ライト前。
同点。
1対1。
アルプススタンドが揺れる。
舞も立ち上がって拍手していた。
試合は終盤へ。
七回。
八回。
互いに譲らない。
そして九回裏。
1対1。
柳城の攻撃。
先頭打者が四球。
送りバント成功。
一死二塁。
打席は史陽。
スタンドが静まる。
初球。
見送る。
ボール。
二球目。
ファウル。
三球目。
高めのストレート。
史陽が振り抜く。
打球は右中間へ。
外野手が追う。
追う。
しかし届かない。
フェンス直撃。
二塁打。
二塁ランナーが三塁を回る。
ホームへ。
クロスプレー。
セーフ!
ゲームセット。
柳城高校 2-1 九州第一高校。
サヨナラ勝ち。
甲子園出場決定。
歓声。
拍手。
涙。
選手たちがグラウンドへ飛び出す。
史陽は仲間に囲まれる。
塁はその場で空を見上げていた。
去年の夏。
春のセンバツ。
苦しかった日々。
その全てが頭をよぎる。
すると。
福間監督が近付いてきた。
「おめでとうございます」
塁が笑う。
監督も少しだけ笑った。
それだけだった。
だが十分だった。
表彰式。
優勝旗。
校歌。
柳城高校。
二年連続夏の甲子園出場。
しかし。
帰りのバスで福間監督が言う。
「甲子園出場は目標ではありません」
選手たちが頷く。
そうだった。
目指す場所はもっと先。
全国制覇。
そして。
宮城育英。
夏の組み合わせはまだ分からない。
だが。
誰もが心のどこかで願っていた。
もし会うなら。
最後は甲子園の決勝で。
そのために。
柳城高校は再び聖地へ向かう。
第83話 終
コメント
1件
ついに掴んだ甲子園、おめでとうございます…! 投手戦から史陽のヒットと盗塁で同点、そして九回裏サヨナラまでの流れが、短い描写なのに手に汗握る臨場感で、思わず「行け!」って声が出そうになりました。塁が空を見上げるシーン、去年の夏や春の苦しかった日々がよぎる一瞬がじんときますね。福間監督の「甲子園出場は目標ではありません」――そう、目指すは全国制覇。宮城育英と最後の舞台で会えるか、続きが本当に気になります。