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転じる立場、滅と鬼

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転じる立場、滅と鬼

5 - 【番外編】柱達が宿泊した結果・弐

♥

185

2025年10月30日

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続きです

注意事項は前の話と同じなので、見ていない方は先に【壱】お読み下さい。

※前半に少し露出表現あり




ガララッ

勢いのいい音を立てて男性用の脱衣所の扉が開いた。

普段から使われているのか、身長と同じ位の高さのロッカーが積まれていた

勝手な想像だが、飯の所が鬼殺隊だったから、鬼殺隊で使う方を同じく使うのか……と思いきや、謎に教会で使っている方に案内された。

いやなんでだよ、信者の人々が困らねぇのか…?と疑問を抱いていたが、童磨曰く「それは‪”‬特別なお客様に使って貰うから、少しの間貸切状態にしていいかい?‪”‬って信者の子達に聞いてきたから!!」 と返された。

『特別なお客様』……何だかんだ言い方が童磨らしい。

ロッカーの箱に荷物を置いた童磨が、向かいではぁ、と声を落とした

一体何だと俺は耳を少し傾ける。それは共に来た益魚儀も同じだ。

「はぁ、やっぱり分けなければよかったかなぁ…皆とお喋りしながら浸かっても良かったかも」

───その件か。それは俺も「ん?」って思ったけどなぁ。

柱の男性勢は人数が多い為、三人三人で分かれることにしたのだが、普段から信者の人々____つまり大人数が利用しているのに比べたら、六人なんて軽いものだろうに……。

それは童磨が「広く使って欲しかった」と読むのが妥当だろう

ちなみに、女性勢は二人なので問題なしに女子風呂へ……、

男性勢は①(先行)を俺___妓夫太郎、童磨、益魚儀で、②(後行)を巌勝、狛治、半天狗となったのだが……

俺は違う視点の違う、素直な感想をすぐに思った。本当に何言ってんだとなるかも知れねぇんだがァ……

『②…風呂で会話がほぼ無さそうだな…。』と。



「「「へくちっ」」」

「…埃が立ったか?」

巌勝が問うが、二人は首を横に振る

「何もしていないが…。謎に狛治が逆立ちしてた以外は。」

「……私も同感だ、半天狗…」

二人の視線が仰向けに寝転がっている一人に注がれる

「何となく落ち着かなかったからだ」

…どういう事だ?

───だとしたならば…

「「「(誰か噂したか?)」」」



まぁ少し前を振り返るのは後でもいいんじゃねぇのか?飯も美味かったしよ。

「いやはや…こちらに入らせて頂くのは初めてですねぇ、鬼殺の方には何度も行かせて頂いていますが…」

「あっちだと傷を癒せるような感じのお湯にしてあるんだけど、こっちはぬくぬくリラックスできるようなお湯って感じかな?まぁ入ってみておくれよ益魚儀殿、妓夫太郎!」

「それは楽しみですねぇ、早く入りたい」

───飯行く前誰かが言ってた「完全に宿屋」ってのはあながち間違ってないぞ?お湯にこだわってるのは宿しか聞いた事ねぇよ…

それで傷が治るのが早くなってたのか?本当ならありがたいんだけどよ……

そんなことをずっと考えて、たびたび聞く話を脳内にぶち込んでいたせいか、気付けば準備は終わっていた

「…こっちの準備は終わったぞ、行くかぁ?」

「あ、ちょっと待って……。よし大丈夫だ、行こう二人とも〜」

童磨はニコッと笑い、風呂の入口の扉に手をかけた

ぐっ、と左から右へスライドさせると、途端に湯気の独特な香りと感触が肌を伝った

一歩足を踏み入れると、水気を吸い込んだ床を、足の裏で静かに感じる

右の壁に沿うように、けれども軽い仕切りが施された洗い場、左にホカホカと湯気を立てている湯船。

落ち着く光景に思わず普段の癖で凝り固まっていた心がほんの少しだけ____解けた気がした

「さー入ろ!もう気が済むまで楽しんじゃっていいからさ!普段は入れたとしても秒に近い早さだし」

そうそう、と童磨はポン、と手を叩く

「女の子達は結構長風呂するんじゃない?ほぼ機会なかったようなものだからね」

「……確かになぁ、梅が楽しそうだったら別になんでもいいんだけどよぉ……」

「…正直ですねぇ、妓夫太郎殿」

「そうだねぇ〜」

「おい、何か言ったか?」

何だか苛立って僅かに声を荒らげて言うと、二人はスンと静かになった

───声が小さくて聞こえなかったが…これ絶対からかってんだろ…。

内心愚痴りつつも、俺達は洗い場に並んで座る

人が他にいないからか、面積に対して自分達が小さく思え、ほんの少しだけ孤独感を覚えるが、そんなのを感じる程暇ではない。

____むしろこんなに個性的なメンバーで感じてしまう方が、どことなく馬鹿らしく思えてくる。

「よし、洗うか〜」

童磨がお湯で満たされた洗面器をよっこらせ、と持ち上げ、髪と顔をお湯で盛大に濡らした

なみなみまで入っていた為、軽く傾けただけでザバッと水飛沫が飛び、所々明後日の方向へ跳ねていた童磨の長い髪が白髪がまとまっていた。

「あー気持ちいいな〜」

「いいですねぇ…では私も行きますか」

益魚儀が楽しさを隠せずに声音に含ませ、同じくなみなみまでお湯が入った洗面器を顔の上からまるで滝のように流し、彼の紫の髪が水を含んで先っぽからポタポタと垂れ落ちる

───あ、俺の番か、次は。

「さてとォ…俺もさっぱりするか」

両手でしっかりと洗面器を掴むと、顔の上から勢い良く流し、浴びる

一瞬、じゃぁぁぁっと激しい音と一緒に視界が滝で埋まる

すると、上…頭のてっぺん辺りから温かみが染み渡って来た




ザフンッ─────

「あ〜あったか〜…風呂ってこんなに気持ちいいものだったかしら?」

私……梅は肩から下までしっかりとお湯に沈めると、先に入っていた鳴女と顔を見合わせ、思わず笑ってしまう

真面目に見つめ合うのが何だか新鮮で。

鳴女は黄土色の瞳でこちらをスッ、と見つめると、口を開く

「いや〜落ち着きますね、こんなにしっかりとしたお休みを貰うのはいつぶりでしょうか? 」

「そうね……。あ〜それにしてもあったかい!いい気分……」

自分でもびっくりするくらいリラックスしているのが分かる。きっと私の身体はいつしか休みを欲していたのだろう

いつも鬼を倒し、昼間にもやる事は山ほどある。

私はうんと腕を上へと伸ばした

「疲れが溶けていく感じがしますね〜…こんな時間もいいですね」

「ええ」

私は静かに天井を見つめる

湯気が絶え間なく上へ、上へと天に昇っている

ふと、鳴女は呟く

「…あと何回、こんな思いを体験することが出来るんですかね」

その発言に、私は思わず振り向いて、ハッとした

「……鳴女………」

「…本当の事を言えば、本当の事…私達はいつ、言葉を交わせなくなり、姿が二度と見えなくなるか…全く予想がつきません。____柱になる前、いや…鬼殺隊に入る前から、その件については深く理解しましたが…」

「…そうね…。だからこそ、楽しまなきゃ行けないんじゃない?こんな珍しい和やかな休みを…」

私が口にしていい言葉じゃないと思うけれど、これは伝えたかった。

すると、彼女は口の先っぽを少し引き上げる。無理にって感じではなく、自然と。

「そうですね。喜びを感じている時に悲しい事を考えるのはもったいないですね。____梅さん、今度自宅にお邪魔させて頂きますね?」

「……!もちろん!いつでも待ってるわ!」

私はそっと笑うと、彼女も釣られて笑う

…何だろう、やっぱり気が張りつめていたのか、否か───表情を崩して笑うのは、どことなく久しぶりな気がした。

気付けば緩やかな雰囲気が身体を纏っているとも思える。

「…ふぅ、かなり温まってきたわね…汗が大量に…」

「そろそろ出ますか……」

じわりじわりとお湯の熱がはっきりと伝わり、身体の中が、芯が、解かれていく。 その証拠に、顔や首筋、手から汗が沸騰するかの様に湧いていた

ついでに頬も微かに染まったりして。

「そういえば、男性の一グループ目はもう出ているんですかね?結構こっちは遅い方だと思いますが… 」

「さぁ…分からないけれど…」

確実にいつもよりは長風呂するでしょうね。私達だって相当長いと思うし…。

もしも仮にお兄ちゃん達が出ていたなら、それはそれで話し相手が増えるから盛り上がるでしょうし。

その時、はあっと大きめな息をつく

____そろそろ出ないと本気で身体の中の水分がからっきしになりそうね…水をガブ飲みして頭が痛くなってる未来しか見えない……。

私は鳴女に向かって再び口を開いた

「一先ず私達は出ない?出ていたらあちらとも会えると思うし…」

「そうですね、行きましょうか」

水の抵抗を受けて身体を動かし、風呂のど真ん中から淵へと向かい、ゆっくりと立ち上がる

水中だったから感じられなかった重力を、出た途端にひしひしと伝わってきた。と同時に、お湯の中の熱に触れ続けていなくても体全体がずっと熱を保っているのが分かった

これが「温まった」という事なのだろう

足を持ち上げ、スタスタと湯気の中を泳ぐように進んだ

───少し興味あるわね…あの三人がどうなっているのか…

……ま、私達がのぼせる前に着替えましょ。



──────間が持たぬ…

私は一人、そう思い始めた



別に話していないと心が落ち着かない…という人では自分はないと思っているが____。

ここまで静かか…と、驚きとよく分からない感情がかき混ぜられ、一度整理しようと一つ吐息をつく。

どことなく漂う雰囲気に似合わぬ温められた空気が、すぐに口の中を埋めつくした

先に入った三人が戻ってきた為、私…巌勝、狛治、半天狗は向かった。───言えばそこからだったか。

最初はちょくちょく言葉を交わし合っていたが…浴槽に入ってからは、めっきり会話が減った。

ぶっちゃけてしまえばここは他の柱から見た印象は「無口、寡黙組」になるだろう……。

そして今は個人の世界に入ってるだろう…、そこまでは私も構わない、‪”‬構わない‪”‬のだが……。

───流石にこのままシーンと、無音すら雑音と聞こえてしまいそうなこの空間、少しは距離を近づけようと努力してもいいのだろうか?

三人、揃って肩くらいの高さに浸かり、何故か横一列に並んで浸かっている。私は丁度真ん中だ。

上の方へ腕を動かし、髪を結び直そうと指先を動かす。

…そのついでにちらっと視線を、彼らに察されないように向けた

私から見て左は半天狗。真正面をずっと見つめている、何も考えずに、ただただ。髪の先から滴る雫が、まるで楽器を奏でるように落ちている

息付く間もなく右へ少しばかり傾ける

こっちは逆に両目を閉じて動かない。一瞬寝ているのか?そう思ってしまうくらい、じっと座っていた。

その二人に挟まれる自分自身。

───カポーン。

間抜けに響く湯の音、どこから垂れているのか分からないが、ピチョンピチョンと雫を落としては水溜まりを広げる水雫。

…まぁ…静かなのは悪くない…、環境音にそっと耳を澄ますのも良い事だ……。別に話そうと思えばすぐ行動に移せる距離感…焦る必要は全くもってない…

腕を下ろし、湯に浸す。水面がまるで鏡のように光る

「たまには休むのも悪くはないな…」

何気なく呟かれた一言。その瞬間、私の頭の中は「!!」で一時的に埋め尽くされたが、その風船はすぐにパンッと破裂した

声の主は狛治だ。今度は人が作り上げた音色がパンッと弾ける

「嗚呼…、たまにはこうして汚れを落とすのも大切な事だ…」

つられて呟くと、横で半天狗が僅かに笑い声を上げた

「…何が可笑しいのか、半天狗」

「特にない…と言えば偽りになるか。柱の中でも指折りの戦闘狂がそんな事を言うのは……どうしても珍しいと感じてしまった」

馬鹿にしてる訳ではない、と顔を笑わせながら喋る半天狗、おい、と反射的に声を荒げつつも、目元は細めている狛治。

───ああ、平和だ。温かさで心の防御が崩れたのか。

「そう噂されても過言では無いか…。…狛治、半天狗よ、今度打ち合いでもするか?私が相手してやる……」

「用事がなければ頼みたい」

「…久しぶりだな打ち合いは…五ヶ月ぶりか?もちろんやらせてくれ」

「…そういえば二人は何度かやっていたんだったか…」

日中、何度か二人は稽古として戦いあっていた事があるが…、仕事が多く、実際に行えたのは一年に一、二回あればいい所。

せっかくだからと今誘ったのだが…タイミングを間違えたか?____まぁいいか、恐らく狛治はノリ良くやってくれるだろうからな。

…場が和んだならば、それに超したことは無い。

「…ふっ、楽しみにしている…」

「もちろん」

狛治がそう答え、目が合うと僅かに微笑む。───会話している内容は多少ぶっ飛んでいるかもしれないが、何だか和んで仕方ない。

口が開かなかったのは、緊張感が体に張り付いていたのだろう、きっと

そこからはぁ、と温かい吐息が、堅苦しい空気も包んで吐き出した

「…温かい……心地よい… 」

少し柔らかくなった表情で、半天狗は呟く。

───カポーン。

先程と同じ風呂特有の音が耳に入る。 心做しか愉快な音色に聞こえた。

そして、私は吸い付くようなお湯の中に、更に身体を無防備に預けた



「は〜あ〜…疲れた〜……」

「おい、子供みたいに布団の上に転がるんじゃねぇよ梅」

「えぇ…せっかくだしやればいいじゃない。風呂から出たばっかりの今がチャンスなのに」

といって梅は口をムウ、と膨らませる

その後、彼らはテキパキを敷布団を敷き、突然、梅が待ちかねたように梅がダイブしたのだった

「ちょっと梅ちゃん、そのままだと夢の中に落っこちない?俺はまだまだしたい事あるのにさ〜」

「もう散々やった、さっさと寝ろ」

「全く、狛治殿は相変わらずつれないな〜、まぁ、強制的に入れちゃうけどね」

「…は?」

帯を整えていた彼は今の一言を聞いて目元を微かにピクピクとさせた

遠くから眺めていた巌勝は、あー…と、まるで親のように小さく苦笑いしてしまうのだった。



2×4の形で敷かれた真っ白い敷布団。その上に改めて梅がダイブしたかと思えば、彼女は兄の手を引いていて、驚いた表情のまま妓夫太郎も落ちる。無邪気な子供みたいな光景に、笑い声を必死で押し殺す六名。

そこで何を思ったか、妓夫太郎が隙を見て爆速で瞳を動かすと、一番近くにいた狛治の掴む。被害者は一度目を見開いた

彼はだったらやってやるわ的な精神で、布団の上に身を転がす寸前、彼は企みを潜めた顔になると、これまた同じように一番近くにいた巌勝の手をお構い無しに引っ張る。

そして引っ張られた彼はもう気付いたのか目を動かすこともなく、後ろに突っ立っていた益魚儀の手をねじるように引っ張った。それから───

もう、わざわざ言う必要はないだろう。結論から言えば、柱達がジェンガのように積み上がっていた

『………………』

『(何してんだ??)』

童心に帰りたかったんだ───と、簡単にまとめておこうか。



「では消しますね」

はーい、とゆるい返事を返して、鳴女はゴロンと布団を被っている七人を眺めると、電気をかちりと消した




夜らしく、とっぷりと日は暮れ、星はきっと瞬いている。いつもなら、この時間帯に外に出て、たとえ山や町であっても、刀を手にして駆けているだろう。

少し身が疼く気がするが、トントンと自分の首の下回りを押して気持ちを落ち着けた

落ち着けないと、寝ることすら出来ないし。

シンッと静まった中、日中よりも声を潜めて、囁く

「ねぇねぇ、皆、この際だから何か語ろうよ」

小さい、けれど確実に届く声で童磨は言う。まだ消したばかりで、暗闇に慣れておらず、彼の目は見えない。… 正直誰がどこで寝ているのかすらあやふやだ

「語るとは……恋バナか?」

「「ブフォッ」」

まさかまさかの巌勝による恋バナ発言。裏をかかれた数名は耐えきれず反射的に吹き出してしまう。

真っ暗だがいつもの表情で寝そべりながら言う姿が目に浮かび、笑いを更に加速させた

「一度誰がどこで寝てるか確認しませんかね?」

と益魚儀。

「あ、いいね、そうしよ〜。じゃ、電気つけるね」

「それだけのために電気付けるのかァ?だったら確認しといてくれよォ…」

カチッ。彼が口を開いている最中に電気を付けてしまう童磨。人の気も考えないとはこのことだ。そしてキョロキョロと見回す

左上から梅、妓夫太郎、半天狗、益魚儀、童磨、鳴女、巌勝、狛治。

彼は布団の上に胡座をかくと、分かった分かった〜、と頷く

「これで話す時はそっちの方向いて話せるね!」

「暗いからわざわざ向かなくったっていいだろうが……」

と、ごもっともなことを寝ぼけなまこでボソッと言う狛治。これは完全に眠たいんだろうな…と内心思う面子だったが、とりあえずか否か童磨は微笑んでいた。____何を思っていたのだろうか。

「じゃ、電気消すね、ゆっくり休も〜」

カチッ。重ね塗りされたみたいに暗くなる室内。

再度シーンという空気が彼らを覆い尽くしt

「あ〜でも俺何か目が覚醒しちゃって 寝れないかもしれない…ねぇ、皆は?」

早速会話の種を童磨が転がす。狙ったとしか思えないタイミングで、何故か苦笑してしまう人も数人現れていた

「珍しいからなの?」

梅がなんとなく枕を頭上で掲げながら呟く

「どうだろ…でもそうかもね!!」

「童磨殿…今の貴方は友達の家に泊まりに来ている人そっくりでは?」

「益魚儀の例えが意外と分かりやすくて困るぞ…… 」

「ちょっと……そこの二人、ボケとツッコミの練習でもしたの?」

「今の完璧だったよなァ……」

「そうですね…フフッ」

布団に潜り込んでは笑いを噛み殺しているものの、殺しきれていない兄弟。クスクスと、笑い声が小さくも木霊する

ここで皆何かと会話に入ってないか?と疑問を抱いた事は、一旦消そう。

いくらかそんな状態が続き、ついに巌勝が声を発する

「久々に熟睡できるのだから……早く目を閉じろ…」

「これこそが正論だろ…」

ここぞとばかりに吐き捨てる狛治。ついでに仰向けからうつ伏せの格好に変える

すれば運の悪いことに普段の生活のせいで闇夜に対応するのが異常に速い瞳が虹色の目を捉えてしまった

「全く、本当に二人はつれないなぁ〜…この真面目組め…」

「なんだその組は…勝手に作るな童磨…」

「いや実際そんな所あるからね!?乗ってくれないしさぁ、色んな意味で休んだらどうなんだい?」

ほらほらぁ、と両手を肉球っぽくニギニギさせながらいたずらっぽく笑う彼。それを両目で見ながら、チッ、と小さめに舌打ちをした

口を開く前に、真反対の方が先に声を上げた

「さっさと寝るのが正しいんだろォまずは。誰だ話をずらしやがったのは……」

「ちょっと〜!妓夫太郎までそんなこと言わないでよ〜!俺寂しくなるじゃん!」

「気持ちは分かるがァ…もういいか」

彼は諦めてゴロンと寝返りを打つ。その後はしばし、夜らしい暗い静寂が広まった

───頭の中がようやくモヤがかかったみたいな落ち着きg

「ンゴォォォッ」

ブブォォッと盛大に吹き出してしまう者が多発した。

いびき。でっかいでっかい大いびき。絶対わざとだろうが…突かれた笑いが飛び出してしまった

____‪そういえば、”しばし‪”‬といっても、位で言ったら分で二桁に入った…その後…という感じだ。正直二桁に入っていたか怪しい。

「おい誰だ!!」

狛治が怒りの声を上げる。瞬間、ブチッと電気を付ける音が聞こえた

立ち上がっている彼を除き、全員寝転んでいる。____何か妙に布団を顔まで被っている者がいるが。

「童磨!!お前は一旦黙れ!」

彼は自分の枕を掴み、布団を被ってプルプルしている童磨の脳天に打ち付ける。ボスンと、掛ける二回。

「さっさと寝るぞ…。…ん?待て鳴女、その姿勢…まさか童磨に続く気じゃないだろうな……?」

「ぶふっ」

「狛治…お前もどこかでツッコミの練習をしたのか…」

「そんな練習してたまるか、というか鳴女!冗談じゃなくて本気だったのか!?頼むから静かにしてくれ…… 」

はー…と両の膝に手をつくと、童磨が叩かれた部分を痛しげに擦りながら、しれっと顔を出して言った

「狛治殿、眠いの?」

「お前に言われると妙に腹が立つな…。寝れる時に寝るのが一番だろ…、電気消すぞ」

白い浴衣の裾を小さく揺らして電気を消すと、再び静かになる。心のどこかで思っていた。───どうせまた打ち破られるんだろう、と。



──────と、思いきや。

数十分間は目を開けても閉じても暗く静かで、僅かに寝返りを打つ音が聞こえるか否か…まるで合宿の消灯時間を過ぎたように。

何人かがもうすぐ夢に落ちそうだった____時だった。

近くの人は違和感に気付いている事だろう。ただでさえ感覚が人並み外れている彼らだ。

…ガサゴソガサゴソ

……ガサゴソガサゴソ


───カチッ

それはあまりにも突然の事で、いつも見慣れている明かりも、闇に慣れた彼らの目にとってはまるで目眩しを喰らったかのような衝撃を受けた。

でも、一番驚いたのは、周りの景色が直視できた時だった

『…は?』

意味が分からない、と目を擦ってしまいそうだ。

__ほら、見えてきた、立派にてでんと建っている。

まず、どこから手を付けて説明したらいいのだろうか。

布団の上に手を乗せながら、童磨と鳴女、益魚儀、梅、巌勝がピラミッド状に組み立っていた

それを見る三人は呆れるような、どこか遠い視線を刺しているような…そんな瞳で見ていた。

‪”‬眺める‪”‬とは言い切れないのだから、そこだけがマシな所。

「…………。」

乾いた笑いの表情を貼り付けたまま、三人は腕を組み動かない。

向かい合っている五人は!下二人、中二人、上一人で、こちらも動かない。……少しずつ、気まずさが襲いかかってくる

「…何をしているんだ」

やっとの事で一言目が出た。半天狗は腕を組みながら絞り出すように呟いた

「えへへっ、組体操だよ!意外と乗ってくれてさぁ、ちょっと無理に集めちゃったけど、これ面白いよ!三人もやらない?」

「元気だなァ…お前ら……。梅、しれっと一段目に居座ってんじゃねェよ…」

「お兄ちゃんも一緒にやれば良かったのに、今からでもやる?」

「遠慮しとくぜ…後楽しそうだな梅」

満面の笑顔で背中の上に乗っている梅は、まるで幼い子供のようにゆらゆらと揺れた。───そこそこ激しめに。

焦って益魚儀が叫んだ。

「ちょっ…!それ以上強く揺れたら流石に崩───」

ドスンッ!!

─────間に合わなかったようだ。

ド派手に崩壊したピラミッドは、衝撃で布団を散らかしながら、人がさっきみたいに積み上がっていた

「……片付けるか」

巌勝が潰れていた形から立ち上がって、口を開くと、五人は顔を見合せ、整頓し始める。

まるで他人が散らかした場所を別の人が片付けるように

『お前らが勝手に初めて勝手に散らかしたんだろ』

という事を三人は顔に出しまくっていたからか、教師に怒られた生徒達が仕事を任されている…みたいな雰囲気になってしまった。

終わると速攻電気を消したのも、原因の一つ。



「あれはですね、童磨に半ば強制的に誘拐されて組体操をやらされたんですよ…短時間だったのに疲れました…」

呆れと苦笑が存分に含まれた声で鳴女は言う。顔を両手で隠し、いつもより早口で…。

対していや〜ごめんごめん、とわたあめのように軽い口調。

「結局皆楽しそうだったからいいじゃん〜」

その瞬間。ほとばしるように流れた圧に似る沈黙。にわかに鳴いていた夜鳥も、その時に限っては歌おうともしなかった。…と、ちょっとずれた間を空けて。

「…どこがだ、電気付けた時の出オチ感は半端なかったぞ」

「正直…私も気まずくていたたまれなかった…」

「私は少し楽しかったけどね」

「…お前なァ…。もう別にどうでもいいか……」

出オチ感。あの何とも言えない空気に名をつけるならば、こんな言葉がピッタリとはまるのであろう。

そこからはもうめちゃくちゃだった。きゃあきゃあわぁわぁと会話が飛び交う。まるでサーカスのようにしっちゃかめっちゃかだった。もちろん、真面目に布団を被っている者もいたが……

「だーから仕方ないじゃん?ごめんって〜!」

その刹那

「おい」

何の気なしに童磨が言った直後の事。深く、ずっしりと重い____激怒した声が轟いた

一瞬で空気が生まれ変わる。カチッ、と電気を付けた音も、不思議と染み渡った

ギクリ、と童磨は肩をすくめると、そちらの方を振り返った

───笑顔

声の主…狛治は笑顔だった。‪”‬笑って‪”‬はいただろう。確かに。

でもそれは、鼻から上…丁度目元の部分は黒い霧がかかったように、暗く陰っていた

「少しは静かになれよ…なぁ童磨?」

「あ〜…それはね」

「黙れ」

その時には童磨は何かを察して飛び起き、とりあえず距離を取っていた。が、彼はその笑顔を向け続ける

そして、有無も言わさず数人の枕を拾うと、右手に持っていた枕を後ろに引いた

そして、そのままグンッ、と後ろから前へと放り投げた

画像

まるでマシンガンのように放った一つ目は、顔にクリーンヒットした彼は目を白黒させていた

でも止まらない。一先ず持っているものは投げ切るつもりのようだ。

「ちょ……!?狛治d」

ドンッ!

持っていた枕を投げ切ると、近くにあった枕を再び取り、構える。

しかし、表情は一瞬でブチ切れたものに変わっていた

グンッ______全身を使って振り下ろす。障子を何枚も容易く突き破ってしまいそうな速度で飛び、目を見開いた童磨の顔面に……

ドンッ!!!!

弾けるような音と共に、直撃した。

「いっだぁぁっ!??!狛治殿!?めっちゃくちゃ元気じゃん!」

彼は激突した枕を拾い、痛そうに額をさすっている。音からして、鉄球が宙を舞ったのかと疑うほどだったから、当然っちゃ当然だ。

「……それはお前だろ」

キレ気味な仏頂面に戻すと、そう言い放った






二話で終わらせるつもりでしたが、無理でした…流石に次は本編を書きます。番外編最終話も出すのでお見逃し無く。



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コメント

24

ユーザー

いやぁw今回もカオスでカオスで笑いが止まらんかったよwww みちかつ(漢字変換がでねぇ…!)と狛治と半天狗組は全然喋んないなこれ、って思ってたけど時間が経ったら結構話してて仲いいなぁ…って思わされたよ! 梅と鳴女…柱として…鬼殺隊としての覚悟が決まっててなんか心に来た…あの二人には早く無惨(この世界だったら原作のお館様?)を倒して幸せな日常を手に入れてほしいな… そしてみちかつの急な「恋バナ」発言には驚いたw挿絵の絵もすごい!流石maika!

ユーザー

やっぱ最高~!!!!! 語彙力といい、話の構図いい… やはりリーブは超人だな☆ 挿し絵凄い良いね~!!! リーブは話考えるのも上手いんだよなぁ……僕はネタ切れしそうww リーブの背中追って頑張る!(?)

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