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砂原 紗藍
#再会
「委員長に言われるのは怖いな」
「身に覚えがありすぎる?」
優等生だった彼だ。怒られたことなさそう。
「そういうわけじゃないけど。てか、真琴には連絡してるの」
腕時計を外す仕草が、なんていうのだろう。素敵すぎて戸惑っていたら、私を不思議そうに見つめてきた。
「なに?」
「あ、いや。でも美里は泊まってもいいよって私が言った」
「そう。残念。行ってきますとお休みのキスができないじゃん」
着換えてくる、と背中を向けた一矢くんに、頬が熱くなった。
「いつもしてないでしょっ」
キスの一件以来、一矢くんがとても積極的になった気がする。
いや、積極的になった。
少々卑怯な手で結婚を申し込んできた男だ。
いざ、私に男性恐怖症がないとわかるとこんな感じで本性を出してくる。
クールで爽やかな彼は何処だ。
「そういえば、真琴がさあ」
「えっ着替えながら出てこないで」
美里にタオルケットをかけようとしていたのに、上半身裸で首にTシャツをかけた状態で現れた一矢くんに驚き、タオルケットで顔を覆い隠した。
「セクシーに攻めてみようかなって」
「ただの露出狂です」
はやく服を着て、と叫ぶと、喜々と嬉しそうに笑うから憎らしい。
「真琴が、同窓会の幹事してくれるって」
「へえ。でも美里の結婚式で皆、会ったんでしょ」
美里の結婚式は、自分の政略結婚のせいで完全に頭の隅にいってしまい気づいたら終わっていたっけ。
親友の結婚式に参加できなかったのは申し訳ないけど、私のネイルを身に着けてくれていた写真だけは見せてもらった。それだけで私は幸せだ。
「ほぼ来てたかな。中学から付き合ってるって珍しいし普通にすごいことだから」
「それなのに同窓会って、中学の皆は余程、仲がいいんだね」
私は中学、高校と女子高だったから顔ぶれは変わらない。
しかも高校三年の時に同窓係を卒業式前に決めた。地元で引っ越す予定がない人が、学校が主催する同窓会のお知らせを私たちに連絡してくるってやつ。
私は一人暮らしをするって宣言していたし、私立のお嬢様学校なのに派手は専門学校に行ったから学校側からのうけも悪く、指名さえされなかった。
「華怜も来る?」
「私が? どこに需要があるの」
あんなに親がモンスターして、一矢くんも学校もいじめの首謀者たちも嫌な気持ちになったであろうに。
「需要は俺にある」
「一矢くんだけでしょ。絶対に行かないよ」
もう誰にも怒りはないし、今更誰かを恨んでいるわけはない。
でも和解もしないまま転校していった私に、良い思いをしている人はいないに違いない。
「一矢くんは誰にでも好かれてそうでいいよね」
「俺が?」
メールを打っていたらしい手を止め、顔を上げた。
その驚く様子にこちらの方が面食らう。
「おかしいなあ。好かれたい相手には全く好かれないのに」
「それは可哀想ね」
「キスは試してくれたんだけど、脈はあると思う?」
クスクス笑いながら探る。探る目は、優しいのにこちらの気持ちを見透かそうと真っすぐで、射抜かれてしまうそうだった。
「本人も分かっていないんじゃないかな」
ずるい答え方をした。逃げてばかりの私の曖昧な返事を、微笑んで許してしまう。
ずるいのは私か彼か。
朝、起きて酔いが醒め真っ青になった美里に聞いてみようと思う。
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