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ーーーーー10月17日 博麗神社ーーーーー
玄関の方で物音が聞こえた。誰だ。
「霊夢ー、起きてるか―。」
朝から騒がしい。こんな時は居留守を使うべきだ。
「起きてないのか―。」
しめしめ。これで奴も去っていくだろう。
「ならば起こすまで。」
…去っていかなかった。しかし、家主の許可も得ずに家に入るとはどういうつもりだろう。吸血鬼でもそんな無礼な真似はしない。
「起きてるじゃないか。」
「起きてない。」
「変なこと言うな。訓練場行くぞ。」
「こんな朝早くからー。」
「当たり前だろう。善は急げっていうしな。」
「急ぎすぎよ。」
「四十秒でしたくしな。」
「はいはい。」
今日の魔理沙はやけにテンションが高い。人と戦うのも久しぶりなので仕方が無い気もするが。
ーーーーー妖怪の山サバゲ―大会 訓練場ーーーーー
「ここが訓練場だ。」
100mごとに木の的が3つずつ置いてあるだけだった。
「簡素ね。」
「しょうがないだろ。ここでしか撃っちゃダメって言われているんだから。」
初耳だった。そこら辺の妖精を撃つところだった。危ない危ない。
「あら、あなたたちも来ているのね。」
「随分と速い出勤だな。レミリア。」
「そちらこそ。霊夢と魔理沙はチームだったわよね。」
「そうだが。」
「奇遇ながら、私もチーム全員できたのよ。」
「後ろのパチュリーと咲夜と美鈴はあんたのチームなのか。」
「そうよ。ところでせっかくだから対戦してみない。いい練習になるでしょ。負けるのが嫌なら無理やりにとは言わないけど。」
「言うな…」
「霊夢。やってやるぞ。」
「いいわよ。ここまで言われて引き下がるのも嫌だしね。」
対戦なんかもできるんだ。
「はいはーい。皆さん対戦するのですね。」
「うわ。昨日の河童か。」
「じゃあルールの確認しますよ。まず皆さんに結界を張らせていただきます。結界の残量は頭上のゲージで確認してください。結界がある分は青色、削れてしまった分は赤色になります。ゲージ全部赤色になったら結界全損、ゲームアウトとなります。そしたら我々が速やかに回収します。ああ、対戦用の結界が全損したら安全用の頑丈な結界がすぐ張られますのでご安心を。相手チーム全員の結界を全損させたら勝利です。分かりましたか。」
「「ええ」」
気合が入ってきた。ちょっと前からイライラしてたし良い機会だ。ぶちのめしてやる。
「神社の裏山の柵で囲ってあるところが会場です。じゃあ奥はレミリアさんチーム、手前は魔理沙さんチームにします。それとこれ、小型の電話みたいなものです、頭につけてください。準備ができたらこれに「準備完了」と言ってください。」
ーーーーー妖怪の山サバゲ―大会 ミニゲーム用会場ーーーーー
そうして私たちは会場に入った。1000m×1000mくらい、起伏は少ないが木が多い。狙撃は難かしそうだ。そういえば魔理沙の銃はなんだろう。
「魔理沙、銃、何。」
「FN SCARだ。アサルトライフルって種類、連射性に長けている。私が突っ込んでいくから、霊夢は後ろから援護してくれ。」
「なるべく被弾しないように隠れなさいよ。」
「当たり前だ。」
準備はできた。高めの場所に陣取り、土の上に伏せた。。
「「準備完了」」
「では始めますよ。」
あの河童の声だ。
「よーい。」
「どん!」
始まった。まずは味方と周りの状況確認。そのあと相手の姿を見つける。そしたら前線の魔理沙に伝える。当てれそうだったら撃つ。後方支援に大切なのは前方との連携。…本に書いてあった。
魔理沙は私の前方300mの位置、大きめの木の陰に隠れている。私の後ろは柵、後方からの襲撃の心配はない。相手は…いた。美鈴が魔理沙の右斜め前、約700mの位置にいる。武器は恐らくミニミ軽機関銃、広範囲制圧ようだ。もう一人横からせめて、真ん中の人が撃つ戦略だろう。
「魔理沙、1時方向に敵発見。武器は恐らくミニミ。戦略的に11~9時方向に一人、12時方向に一人いる可能性が高い。挟み撃ちだ。」
「12~9時方向は私が見張る。まずはミニミを仕留めてくれ。」
「了解」
私からの距離は大体800m。ちょうど有効射程範囲内だ。まずは頭に合わせる。そして移動方向の距離分右下にずらす。M110の弾は早いらしいので、スコープの中心点と頭二つ分ほどの距離になったら撃つ。
「狙撃準備…発射」
「命中。ゲージ全損確認。」
「霊夢!10時方向から敵が撃ってきた!こいつも多分ミニミだ!ここは私がどうにかするから、12時方向を見張っててくれ!」
「分かった。」
[やっぱり!12時方向からも撃たれている。多分なんかのアサルトライフルだ。」
次の瞬間、前方で何かが光った。とっさに首を横に振った。ゲージが一気に6割ほど削れた。どうやら相手にもスナイパーがいたようだ。急いで近くの岩の陰に隠れる。
「同じく12時方向、狙撃された。」
「あいつら、作戦がばれたから一気に畳みかけてきたな。どうする。」
「魔理沙はミニミとスナイパーを避けて、アサルトを倒して。私がミニミを仕留めるわ。スナイパーは後回しよ。」
「分かった…」
私はミニミの裏を取るために、銃を肩にかけて9時方向に走り出した。あまりにうるさい発射音で、私の足音位はかき消されているだろう。確か本には、マウントされたマシンガンは上に撃てないと書いてあった。木の上に登って、上から撃ちおろせば勝てるはずである。
ちょうどミニミがマウントされている岩の後ろに木が合った。手早く登る。そして撃つ。ゲージは一気に消え、ミニミ使いの体は素早くどこかへと連れ去られた。
しかし、撃った後のわずかな隙をスナイパーに狙われ、木の枝に隠れ切れていなかった足を撃たれてしまった。ゲージは残り1割ちょっと。
「魔理沙。ミニミは倒した。また被弾したけど、スナイパーの位置は変わってないわ。」
「こっちもアサルトを倒したぜ。スナイパーはどうする。」
「方角が分かってるから。狙撃戦に持ち込むわ。魔理沙は指示を待ってなさい。」
「はいはい。」
先ほど狙撃された方向へ目を向ける。藪の中から銃口が突き出ていた。パット見たところ、口径は10mmは超えていた。恐らく重さのせいで動けなかったのだろう。実は私も重さが肩に来ている。位置が分かれば、もうこちらのもの。相手がいるのは藪、言い換えれば葉っぱと細い枝の集まり。こっちは木の上なので、大半の銃弾は太い枝が防いでくれる。
念のため木の反対側に移動し、銃を構える。相手は微動だにしない。恐らく私がまだ気づいていないと思っているのだろう。相手の頭の位置を予測して、撃つ。パリーンと小気味いい音が鳴り相手のゲージが消し飛ぶ。
「おめでとうございます。魔理沙さんのチームの勝ちです。入った時のドアから出てください。」
河童の声だ。
ーーーーー妖怪の山サバゲ―大会 訓練場ーーーーー
外に出てみると、レミリアのチームのほかにたくさんの人が集まっていた。
「なんでこんなに…」
「全員観戦していたそうよ。」
レミリアが言った。
「あんた結局どこにいたのよ。」
「魔理沙に倒されたわ。8割持って行ったのに最後の最後で撃ち負けたの。」
そう語る少女の手に、長方形から穴を二つくりぬいたような形のものが握られていた。
「何よ、それ。」
「ああ、これね。FN F2000ていうの。かわいいでしょ。」
「かわいいかはさておき、奇妙な形ね。」
レミリアは何か言いたげな目をしていたが、めんどくさいので無視した。
「それはそうと、あのスナイパーってパチュリーだったのね。」
「そうよ。私はあんまり動けないから、後ろから狙ってやろうと思って。」
「じゃあ咲夜と美鈴があのミニミ?」
「そうね。」
「咲夜と美鈴が左右に展開して、敵を挟み撃ちにする。レミリアが近づいて、前に上がった敵を撃破。パチュリーが後ろに下がった敵を撃破。って感じね。」
「そこまで分かってたら、勝ち目はなかったわね。」
結局私の頭脳の勝利ということだ。魔理沙は何やらあっちでちやほやされていて、訓練できるような状態ではなかった。私は私でもう疲れてしまったので、ここは家に帰ることにした。