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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ある日、ナースと言う女性とあともう一人の鐘を持った男が、私にこう言った。『たった一人で一人前のキラーになろうとしている子がいる』と。さらに詳しく言えば、その子が今は肉体改造を頑張っているから、協力出来るならして欲しいと言ってきた。

それだけなら別に私は特に気にすることもなくいつもの様に儀式へ行くはずだった。しかしあの鐘を持った男がボソリと呟いや事で、私の考えは180°変わった。


「もシかしタらだケド、君ミたイニなリたいんジャなイ?君、筋肉質ダし…」

「あら、そう言われてみれば…まぁ私たちが深掘りしても意味ないわ。行きましょう」

「まタね、エクセキューショナー」


私の様になりたい…一体どんな子なんだろう。私は試しに同室のトラッパーに聞いてみる事にした。しかし私は話す事ができない…流石の彼でも無言の質問を勘で受け取れる訳がないしどうしたら…あ、そうだ。

私は彼を手招きし、彼の目線を壁に向けて、私はキッチンから取ったナイフをそこに突き刺さす。


「えっ!?ちょ、エクセキューショナー!?」


私はガリガリと壁に文字を彫り始めた。人と話す事が一度もなかった私には一番の案だと思っていたが、彼は私を焦る様に止めてきた。そこまで悪い事はしていないはずだが…よく分からない。


「い、いいか?人の部屋に傷を増やすな。そんな事しなくても、文字が書けるなら筆談でいいだろ!?」

「……」


ヒツダン?それはどう言う事だと首を傾げると、トラッパーは引き出しから紙とペンを持ってきて机の上に叩きつけた。どうして怒っているのか私にはさっぱりだ。


「筆談っていうのは、文字で会話する事だ。お前のしようとしてた事も筆談だろ?まぁ壁に文字を彫って書くなんて脳筋にも程があるが…」


ノウキン…分からない言葉が多すぎる…しかし、これなら無駄な体力を使わずに伝えたい事をすぐに書けれる。俺は試しに、紙へ彼への感謝の気持ちを綴った。


ーありがとう、トラッパー。これならすぐに伝えたい事も伝わりそうだ。ー

「お、おお…もう二度とあんな真似するなよ?…で、なんだ?俺を呼び出しておいてこんなくだらない事ばかりなら怒るぞ」

ー聞きたい事がある。ー

「なんだ?」

ー噂を知っているか?ー

「噂…嗚呼、“ジョーイ”の事か?」


ジョーイ?もしかして、彼が私の様になりたいと思っている子なのか…ますます興味が湧いてくる。私はトラッパーに、その子の事を隅々まで聞き出した。いつからこの世界に来たのか、どんな見た目なのか、なぜ私の様になりたいのか…。


「ちょ、ちょっと待ってくれ…!」

「?」


次の質問を紙に書いている私の手を彼は勢いよく掴んできた。少々下唇を噛んでいる様に見える…何か怒らせる様な事をしてしまったのか…?


「お前は限度を覚えろ…流石に俺でも答えるのが面倒になってきた…」

「……」


しかし彼の事を今一番知ってそうな者は君しかいない…それに、彼の事をある程度知っていた方が話しやすくなると思う…まぁ、そもそも声帯が無いから話せないんだがな。


「はぁ…分かった。面倒って言った事は謝る。」


単なる予想だが、トラッパーからすると私が急にペンを動かす手を止めた事を怒ってしまったのだと勘違いして、こんな謝罪をしたのだろう。謝るのは私の方だと言うのに自分が謝るなんて、本当に紳士的だな…。


「だが、本当に俺なんかの安直な答えでいいのか?」

ー構わない。ー

「うーん…余計困る返答だな…俺以上にアイツを知ってる奴は沢山いるぞ?」

ー君がいいんだ。それに、私は他のキラーからも少し距離を取られているからな。話し掛けた所で、君の様に会話は長くは持たないだろう。ー

「そ、そうか…(コイツ、意外とちゃんと考えてたんだな…)」

ー質問を続けてもいいか?ー

「もちろん。だがその前に儀式に行ってきてもいいか?さっきからあの邪神の囁き声が聞こえて来て鬱陶しいんだ」

ー分かった。ー


私は彼が帰って来るのをただ待っていた。この世界に来る前に、一度存在を無かったことにされてしまった過去を思い出しながらずっと待っていた。忘れられると言うのがどれだけ苦痛で恐怖なことか…今では怒りしか感じないが、当時は本当に気が狂いそうであった。

自分勝手に行動した奴が、都合よく私の存在を消しかけた事に理解が出来なかった。忘れられる、消されると言う事は『もういらなくなった』と同じ事。


正直、誰かに自分を求められる、求めてくれる相手がいるだけで私は幸せだった。それ以外に何もいらないから。私だけを見て、側にいてくれるなら、邪神から与えられる苦痛も、永遠に続く儀式と呼ばれるものも怖くはなかった。


だから、ジョーイと言うものが私の様になりたいと聞いた時、心が恍惚感で溢れていた。それは言えば私の事を求めてくれているのと同じこと。彼がどんな思いで私の事を見てくれているのか想像するだけでも最高だ。私に表情なんてないが、心では気持ち悪いほどの笑みを出している。彼はどうして私なんかに興味を示したのだろう…。


かなりの時間考えていたのか、トラッパーの部屋の扉が開かれた。しかし妙だ。彼以外の気配がもう一人…。そのまま動かず待っていると、見るからに生存者そっくりの青年が部屋に入って来た。もしかしてこの子が…?

その子は執拗に私を見て来ていた。ここまで自分に興味を持ってくれたのはいつぶりだろう…速く彼と筆談がしたい。


「俺はシャワーを浴びて来るから」


トラッパーが気を使ったのか、単なる偶然なのか席を外してくれた。さて、どんな事を彼に聞こう…。私はとりあえず彼に手招きをした。

憧れだったあなたと。

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三角様の過去を知ってから見た方が良さそう。😉私がオリジナルで考えた三角様の過去ではない事は頭の中に入れておいて下さい🙇‍♂️🙏

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