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「……どうかしたんですか?」
尋ねると、彼はいささか顔色を悪くし、片手を挙げて「懺悔する」と言う。
「レティシア、俺は君に謝らなければならない。君が帝都に来て魔石と相対する前から、そのような感情を持っていたのは、恐らく俺のせいだ」
「「え……っ?」」
私とレティは、同じタイミングで声を漏らす。
「父上は『嫉妬のあまり、自分が妻を死に追いやったかもしれない』と言っていた」
頷いた私の顔を見て、アルフォンス様は苦しげに表情を歪める。
「俺はレティシアを憎んでいた訳ではない。……だが昔から双子だというのにフェリばかり蔑ろにされるのを見て、『同じ双子なのになぜレティシアばかりもてはやされるんだ』と思っていた。レティシアは悪くないと分かっているのに、フェリが悲しむたびに憤りを感じていた」
私は彼の怒りが何を引き起こしたかを想像し、静かに嘆息する。
「……明確にレティシアを憎んだつもりはないが、無意識に彼女の性格を歪めた可能性がある。……それが結果的にフェリを苦しめてしまった」
私たちは沈黙し、室内全体が重苦しい空気に包まれる。
色んな感情が胸をよぎったけれど、脳裏に浮かんだのはカール様を許したアルフォンス様の姿だった。
人は誰しも過ちを犯す。
愛する者のために悲しみ、憤るのは人間として当たり前の感情だ。
それがどんな結果を引き起こしたとしても、改心し、二度と同じ過ちを繰り返さないと誓えるなら、前に進んでいける。
(……それに、全部魔石のせいだったしね!)
私は「うん」と頷き、パンと手を打った。
「考えるのをやめましょう!」
勢いよく言った私の声を聞き、二人は驚いて目を見開く。
「全部『かもしれない』なのに、アルフォンス様が自分のせいだと責任を感じる必要はありません。魔石を壊して陛下やレティも元の性格に戻りましたし、これ以上の事はありません。あとは人同士、想いを言葉にして、時には勘違いしたり、間違えたりしながら、前に進むしかないんです」
そう言ってアルフォンス様を見つめると、彼は相好を崩して頷いた。
「さすが俺の惚れたフェリだ」
「すべてアルフォンス様の受け売りです」
顎をそびやかせて自慢げに言うと、レティが「お熱いわね」と茶々を入れてくる。
姉は立ち上がり、私にハグを求めてきた。
「誰よりも分かり合える双子のはずなのに、沢山遠回りしてしまったわ。私はこれからも聖女として活動していくけれど、フェリみたいに自分の幸せを見つけられるよう努力してみせる。あなたから『自慢の姉』思ってもらえるよう頑張るわ」
「もうとっくに自慢の姉よ! 世界で一番凄い聖女様なんだもの!」
私は破顔すると、思いきりレティを抱き締めた。
和やかな雰囲気になったあと、アルフォンス様は息を吐く。
「あとは、解決すべき事は一つか。父上の事は最大限に利用させてもらうとして……」
アルフォンス様が作戦を紙に書き留めていると、レティは私の手をしっかり握って彼に言った。
「私の事も存分に利用してください。なんなら、悪者にしたっていいですから」
「そんなの駄目よ」
「いいの。フェリには沢山迷惑をかけたから、少しでも何かしたいの」
言っている間に、アルフォンス様は「よし」と言って大体の流れを纏めた図を私たちに見せる。
説明を受けていると、なんとなく上手くいきそうな気持ちになった。
「……これならいけるんじゃない?」
「かもしれないわね」
レティと二人で感想を述べ合っていた時、部屋の隅に控えていたジョゼが発言した。
「恐れながら陛下、伝言用の一番速い飛竜をお貸しいただけないでしょうか? ぜひ私にも協力させてください」
「ジョゼ?」
私は目を瞬かせ、彼女の真意を測ろうとする。
そんな私に、ジョゼは「利用できるものはすべて利用しましょう」とニヤリと笑った。
大体の作戦が纏まり、アルフォンス様がカール様のもとに使いをやったあと、私たちは夜の庭園に出て星空を見上げた。
私たちは三人で飲み物を飲み、お菓子をつまみながら、魔石を破壊した時の事や魔王の事など、飽きる事なく話した。
帝国の貴族たちも気分良く酔いながら星を愛で、みんなで寝不足になりながらとても美しい朝焼けを迎える。
「……この空を一生忘れない」
庭園の芝生に直接座ったアルフォンス様は、私の手を握って呟く。
「私もです」
夜の名残の濃紺から青へ、そして紫、ラベンダー色、オレンジ、黄色とグラデーションになる空に、縁を金色に光らせた雲。
この世で最も美しい朝焼けを見ながら、私たちは生まれ変わった心地になっていた。
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