「‥‥ッフ。」
八左ヱ門は溢れてくる涙を拭いながら森のなかをかけていた。
思い出すのは、嫌悪を含んだ目で自分を睨む先輩方。怯えた目で先生方の背に隠れる後輩達。顔を真っ青にした同級生。そして今まで見たことのないくらい悲しそうな顔で自分を見上げていた愛しい人。
「ごめん。ごめんなさい。」
両手から溢れる涙は、地面におちる。
「クソッ!」
八左ヱ門が去った忍術学園は戦場となっていた。
倍いるであろう忍びたち。それだけでも大変なのに、一人一人の技術も高い。
忍びたちは下級生にも容赦なく攻撃しようとする。安全な所に避難させようとするが、八左ヱ門の狼が戦いの場を囲んでいてかなわない。
「早く八左ヱ門を追いかけないといけないのに!」
「あの人のあとは追わせない!」
私の相手をしている忍びが、声を荒らげて突進してくる。
「クソッ!」
このままだと八左ヱ門を追いかけるどころか、学園が全滅してしまう!
「っ!鉢屋先輩!」
庄左ヱ門の声が耳に届く。
慌てて振り返ると、苦無を振り上げた忍びがおり、その後ろには半泣き状態の一年生。真ん中に庄左ヱ門がいた。
まずい!
「放て!」
聞き覚えのある声が学園中に響いた。と、思ったと同時に周りの忍びたちが叫び声を上げて倒れていった。
「は?」
「無事かい?鉢屋三郎クン。」
声のしたほうを見ると、タソガレドキ忍隊が勢揃いしていた。その真ん中には雑渡昆奈門がいる。
「何で、」
「ある人からの依頼でね。君たちを助けに来た。」
太陽を背にする雑渡昆奈門は悔しくもかっこよく見えた。
コメント
1件