「ある人って、一体誰が?」
そばにやってきた勘右衛門が眉をひそめる。
忍び達はタソガレドキ忍者隊が拘束しているため、学園にいる全ての者が私の後ろにいるのがわかる。
「それを知ってどうするつもりだい?」
「別に?少し興味があって。タソガレドキを動かすほどの何かを持っている人物がいる。気にならないわけがないでしょ。」
ニヤリと笑う勘右衛門を見た雑渡は、肩をすくめて笑った。
「いいよ。教えてあげる。」
「組頭!」
部下の諸泉が雑渡に抗議するが雑渡は諸泉の肩をもち言った。
「尊奈門。今ここで言わないと我々が被害を受けることになる。それに私もあんな優秀な人材が無くなるのは惜しいんだよ。幸い口止めはされてないしね。」
「しかし、」
「あの子のためだ。」
「‥‥はい。」
引き下がった諸泉から視線を外した雑渡は、真剣な顔で私達を見た。
「依頼主は、竹谷八左ヱ門クンだ。」
「‥‥は?」
思わず変な声が出てしまった。
先輩方も、先生方も、意味がわからないという顔で雑渡を見る。
「私の認識では竹谷は先程学園を裏切り、そこに拘束されてる忍びたちをよこした張本人なのだが?何故竹谷が襲う予定の学園を守るように依頼するのだ?」
立花先輩が眉を顰めて雑渡を睨む。
「‥‥‥全て、これからおこす事への準備だ。」
雑渡はゆっくりとあるき出し、長屋の廊下に腰掛けた。
「どういうことだ。」
潮江先輩が雑渡を睨む。
「今までの行動は全て、準備だ。彼はある目的のために学園を自分から遠ざけた。」
「目的?」
兵助がそう言うと、雑渡はニヤリと笑い足を組んだ。
「復讐。だそうだ。」
「復讐?」
「一体何で?」
冷や汗が止まらない。
「‥‥‥十年前、竹の里という里があった。里は美しい自然に囲まれていて、沢山の人が暮らしていた。竹谷クンは、里の長の第八子として生を受けた。皆、幸せに暮らしていたそうだ。‥‥‥竹谷クンが、4歳の時までは。彼が4歳のとき、里が何者かの襲撃にあった。そして一夜にして里はおちた。竹谷クンはお兄さんに逃され生き残ったらしい。」
雑渡がそう言い終わると同時に、ドカーン!と遠くの方から爆発音が聞こえた。
「何だ!?」
「‥‥‥始まったようだね。」
雑渡は呑気にそういった。
「あの方向は八左ヱ門が走っていった!‥‥‥まさか八左ヱ門が復讐したい城って!」
「夕立氷樹郎城主の城。夕立城だ。」
「でも夕立城は八左ヱ門が仕えてる城だよ!?」
雷蔵の焦った声が耳に入る。
「復讐のために夕立城に仕えて機会を伺っていたのか?」
「さすが冷静沈着な立花仙蔵クン。正解だ。そしてあの爆発音は合図。竹谷クンが攻撃を始めるようだ。」
「っ!止めないと!」
「なぜ止めるんだい?」
今すぐに駆けつけたいのに雑渡が私の前に立ちはだかる。
「そんなの決まってるだろ!恋人が危険なところにいるんだ!」
私がそう叫ぶと、雑渡はフッと笑った。
「その恋人は君のこと情報屋としか思ってなかったみたいだけど?」
「っ!」
言葉に詰まった。
「情報を得られるなら勘右衛門でも良かった。」
先程の八左ヱ門の言葉が頭に浮かぶ。
「たとえ、八左ヱ門がそう思っていたとしても、八左ヱ門の恋人はこの私だ!」
「よく言った!鉢屋!」
叫んだ私の前に七松先輩、潮江先輩、食満先輩、中在家先輩が武器を持って立った。
「そこを退いてもらおうか。」
「そんな警戒しなくても行かせてあげるさ。さっきもいったけど、あんな優秀な人材が無くなるのは惜しいんだよ。」
肩をすくめた雑渡は、道を開けた。
私は学園を飛び出し、八左ヱ門のもとへと走った。
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