Muiさんのリクエストであきてるです。
ドSあっきぃ✖️てると
すみません、作ってる途中に嫉妬シーンが抜けてて書くの忘れてしまいました…
前半もあまりあっきぃのドS感はないです。後半はドSになる、予定、!
殺し屋のあっきぃとてるとくん設定。
前半エロはないけどダークめに書いたので雰囲気暗いかも。
苦手な方はお戻りくださいまし!!
雨が降る夜、濡れた路地を僕は影のように追った。
フードを深くかぶり、足音を消して前方の標的を見逃さない。
依頼内容は簡潔で、ただ冷たかった。
『対象はアキラ。裏切り者はすぐに始末しろ。回収された“データ”が残ったままだと厄介だ』
組織の地下で聞かされたその言葉が、いまも頭の奥で重く響く。その標的の名前を聞かされた時は一瞬呼吸が止まった。
僕がまだ組織に染まる前、あの人はただの優しい兄みたいな存在で。僕を何度も助けてくれた。
任務成功率トップで有能な彼が突然、任務中に組織の重要データを奪い、そのまま逃走。
理由は不明。
裏切りの動機も、データの目的も、誰一人知らない。
だからこそ“消せ”という命令は絶対だった。
「…。(あっきぃ…)」
心がざわつく中、あっきぃが古い倉庫街へ入った。街灯が少なく、闇が深い。
路地裏へ入った瞬間、僕は足音を消し、身を潜めながらも距離を詰めた。銃口は慎重に下げ、音を立てないよう呼吸を整える。
てるとは、元仲間で信頼していた相手を狙うこの任務に、理屈では納得していても感情が追いつかない。
心に迷いが生まれ銃を握る手が震えている。
ライフル銃を持った仲間が狙撃態勢に入り、
「……狙撃準備完了」と無線越しの声が耳に届く。
すると突然、あっきぃが立ち止まり振り返る。
「…そこにいるんでしょ」
冷たい声が静かな路地に響き、てるとの心臓が跳ねた。影の中に潜んでいたはずの位置を、完全に見抜かれていた。
てるとは反射的に銃を構えるが、あっきぃは一瞬の躊躇を見逃さずに地面を蹴って一気に距離を詰めてくる。
「っ…!(速い…!)」
銃を撃つ間も与えられず、あっきぃの腕が僕の手首を掴む。抵抗しようと力を込めるが、びくともしない。次の瞬間、肘打ちが僕の腹部をかすめ、息が詰まる。
そのまま銃を押し返され、壁に弾かれそうになる。
よろけた体を何とか踏ん張りながら、僕は咄嗟に銃を手放し、腰のナイフに切り替える。
刃先を向けて一歩踏み込む。
でも、どうしても躊躇してしまう。
刃を振るうべきなのに、手が止まる。
「…迷ってるんだね」
「……だって、あっきぃ…こんな…、何でなの…?」
「相変わらず、てるきゅんは優しいんだね」
「あっきぃ…」
「でもそんな優しい心は、殺し屋には必要ない。」
あっきぃがゆっくり近づく度に後退る。足を踏み出す度に一歩ずつ合わせるように、確実に近づいてくる。
「てるきゅんに、人殺しは向いてないよ」
刃先を突き出しても、肩先に触れられるか触れられないかのぎりぎりの距離まで迫られる。
あっきぃの声は優しいが、目は笑っていなくて冷たい。
そして、突然首の付け根に衝撃が走り、視界が揺れる。頭がふわりと揺れ、全身の力が抜ける感覚。
「……っ……!」
てるとは指先から放たれた衝撃に耐えきれず、膝から崩れ落ちる。
濡れたアスファルトの冷たさ、夜風に混じる鉄の匂い――
すべてが僕の意識ごと遠ざける中、最後に映ったのは、冷静に立つあっきぃの瞳だった。
力の抜けたてるとの体を、あっきぃが片腕で支える。
遠くでライフルのボルトが引かれる音をあっきぃは聞き逃さない。てるとが完全に無力化された今、狙撃者は仲間ごと、始末の優先を選んだらしい。
気を失ったてるとを片腕で抱えたまま、あっきぃは一歩だけ身を引いた。
風の流れがわずかに変わる。狙撃手が次の射線を探している気配――。
「……下手だな」
独り言のように呟くと、あっきぃはてるとの身体を自分の胸元に寄せ、最小限の姿勢で陰に入る。
そして、ほとんど迷いのない動作で腰から銃を抜いた。
パンッ――。
乾いた音がひとつだけ響く。
狙撃手が潜んでいた建物の上で、何かが沈むように動きが止まり、気配が消えた。
◆◇◆◇
頭の奥がズキズキして、ゆっくり目を開ける。
目覚めの悪い割りには、柔らかい寝心地の良いマットレスの上。
視界に入ったのは高い天井と間接照明だけが柔らかく光る広い寝室のような場所。部屋自体は異様に豪華で、大きな窓の外には夜の町が広がっていた。街の光が遠くできらきらしている。
自分が、かなりの高さのある建物、高層マンションに居るということに気付く。
「……ここは……」
声にならない声を漏らす僕に、低く静かな声が返る。
「おはよう。よく眠れた?」
背後からの低い声にてるとは全身を強張らせた。振り向くと、ソファに腰掛けてこちらを見ているあっきぃがいた。手にはカップを持って、穏やかな仕草のくせに、目だけはひどく静かで、底が読めない。
そして、両手首には布のロープで縛られていて、逃げられないように絶妙な長さでベッドの端に固定されている。
「気分はどう?」
「…ここは、どこ?」
「俺の家。」
「……どうして、僕を生かすの?」
「…なんでだと思う?」
近づいてくるあっきぃの足音が、やけに大きく響く。ベッドの縁まで来ると、てるとの髪をそっと指先で整えながら、低く呟く。
「死ぬのも殺すのも下手なてると。お前を外に出すと、見ててイラつくから。」
心臓が一瞬で掴まれたみたいに跳ねた。
胸の奥がぎゅっと縮んで、呼吸の仕方さえわからなくなる。
冷たい目で見下ろしてきて、僕は視線を逸らす。
すると、あっきぃの指が顎を掴み、強制的に顔を上げさせられる。
「…ここから、出して…っ」
「…正気?今さら外の世界へ出ても、お前を守ってくれる奴なんていないし、ただの駒として使い捨てて終わる。……それとも、死にたいの?」
「っ…そんなことっ、」
「純粋すぎるんだよ。すぐ感情に流されて人を疑わない。…甘いよ、全部。」
その言葉が残酷な真実のように思えて、反論すら出来ない。
「お前は俺の言うことだけ聞いてればいい。
それ以外のことは、全部しなくていいし、全部できなくていい。——わかった?」」
喉が塞がって声が出ない。
「今日からお前は此処で大人しく居ろ。…俺の言う通りにてるとがお利口に出来たら…また外の世界に連れ出してやってもいいよ。」
てるとは小さく息を呑んだ。
“外の世界” それが、もうここが牢獄であることを決定づけるようだった。
あっきぃはゆっくりと屈み、顔を覗き込む。
距離が近い。逃げ場がない。
「分かった?それとも、逆らう?…逆らった時にはそれなりの罰は与えちゃうけど。」
「……わ、わかった。」
かろうじて出た声は震えていて、自分のものじゃないみたいだ。僕の返事にあっきぃは満足したように微笑み、僕の頬を親指で軽く撫でた。
「いい子。」
支配と宣告が、やわらかい声に乗って落とされたのだった。
◆◇◆◇
監禁されてもう何日も経った。
この高層マンションの一室は、時間の流れまであっきぃの手の中にあるみたいで、窓の外に見える景色は夜なのか朝なのか、時々見失いそうになる。
監禁されてから一歩も外へ出ていないし、僕の行動も制限されている。
あっきぃとは、必要最低限のことしか話さない。
けれど、僕が思っていたよりも、ずっと穏やかで優しかった。
毎日、食事を用意してくれるし嫌がる素振りひとつ見せずに僕の前に皿を置いていく。
「…」
「…食べないの?」
「えっと、…あまり、食欲なくて。」
「ふーん…」
気づいたら、あっきぃが身を屈めて、僕の額に手を当てていた。ひやりとした指先が、火照った皮膚に触れる。
「…少し、熱あるな」
「……僕、平気。」
「体調悪いのは事実だろ。黙って」
あっきぃの指が額を優しいなぞる。命令口調なのに、僕を逃がさない様に閉じ込めている張本人なのに、心配そうに見つめてくる表情が、ずるい。
あっきぃは手を離し、立ち上がると玄関の方へゆっくり歩いた。
「薬買ってくる。食べられるだけ食べな。」
そう言って、あっきぃはカードキーと暗証番号を使い、扉を開けて外へ出ていった。
カードキーを取り出す瞬間、あっきぃ指で迷いなく操作する暗証番号が、僕の目に自然と焼きついていた。
見ているのがバレないように横目で追うたび、胸の奥がざわついた。
ここから逃げられるタイミングを、ずっと探している…はずなのに。
あの冷たい瞳の奥に、時々ほんの一瞬だけ見える柔らかい表情。その瞬間を思い出すたびに、胸が変に温かくなる。
(僕、どうして、迷ってるんだ?逃げることだけ考えてたのに)
監禁されている相手なのに。
組織を裏切った相手なのに。
あっきぃの顔、声、感触、匂い、全てが僕の中で溢れそうになる。
違う、これはきっと熱のせい…だ。
僕は横になった瞬間、ベッドの柔らかさに沈み込むように、全身から力が抜けていった。
目を閉じると、指先が額を触れた感触が思い出され断片的に蘇る。
「……優しくしないでよ、あっきぃ…」
熱が体の中で滞留しているようで、全身がぼうっとしてきた。そのまま視界がゆっくりと暗くなり意識は沈んでいった。
カードキーの音が響くと同時に、あっきぃは迷わず寝室に向かった。部屋に入るなり、静かにドアを閉めた。
寝息を立てているてるとを見つけると、ほんの一瞬だけ表情を緩める。
ベッドの横に腰を下ろし、乱れた布団の端にそっと手を添え、てるとの肩まで掛け直した。
「…」
寝顔に触れないように、けれど確かめるように、指先で前髪をほんの少し払う。あっきぃはしばらく黙って彼を見つめていた。
あの日、俺は任務帰りに組織の廊下で、不自然に丸められた小さな背中を見つけた。それがてるととの出会いだった。
強がっているようで、今にも泣き出しそうな顔。
『新入り?』
『あ、はい…今日から、ここで』
痩せてて、目だけが妙に澄んでて――それが第一印象で、この場所に似合わない“柔らかさ”があった。
『…迷ってんの?』
『…迷ってます。』
『素直すぎだろ』
『…でも、僕なんかを拾ってくれたから、その恩は返したくて』
素直、真面目、本当に馬鹿だ。何も分かっていない。組織がどういう場所か、そこで生きるってどういうことか。
拾われたことを「恩」だと信じて疑わないバカなやつ。
『あんま無理すんな』
『え?』
『お前、震えてるから』
自分の上着を脱いでかけてやると、慌てた様子で目を瞬かせていた。怯えた顔の奥から、少しだけ表情が柔らかくなった。
『ありがとう』
張りつめてた空気が、一瞬だけふっと緩んだ。そのてるとの笑顔に、俺は思わず目を奪われていた。
任務帰りの廊下で目が合えば、まるで安心したように小さく会釈してくる。
訓練場に顔を出せば、不器用な動きのまま俺のほうを一瞬だけ見て、褒められたい子どもみたいに寄ってきた。
別に指導した覚えも、優しくした覚えもないのに気がつけば、てるとは俺を見つけると表情が緩むことが多くなっていた。そして俺自身もてるとの側に居る時だけは心が救われた気がしていた。
『てると?ああ、あれは使い捨てだよ。便利なだけの駒だ。足手まといになったら、適当に処分すればいい。』
足が止まるどころか、体の芯が一瞬だけ冷えた。
『気まぐれで拾っただけのガキだ。なに、替えはいくらでもある。』
無機質な笑い声が続く。
――ああ、やっぱり現実なんて所詮こんなもんだ。
利用価値が尽きたらそれで用無し。
命なんて、道具より軽い。
俺は気配を殺したまま、その場から静かに離れる。
歩きながら、心の底に沈んだ何かがゆっくりと形を変えていくのを、自分でもはっきりと感じた。
「……あっきぃ。」
「!」
一気に現実に引き戻される。
小さな声で名前を呼ばれて心臓が跳ねた。てるとは寝返りを打って少し苦しそうな顔をしていた。伸ばした指先で頬に触れると、苦しそうな表情も緩んでいって、そのまま静かに寝息を立てた。
ただの寝言。ただ名前を呼ばれただけで動揺してる自分が、心底くだらないと思うのに。
あっきぃは立ち上がり、一歩、後ろへ下がる。一瞬だけ緩んでいた表情は、視線がベッドから離れた瞬間にすっと消える。
クローゼットの扉を静かに開けると、あっきぃは上段の奥へ手を伸ばした。普段なら目に入らない、黒い薄型ケース。
金属の重みが指先に乗ると、あっきぃの表情の柔らかさを完全に消し、冷えた刃物のように戻っていく。あっきぃは音を立てないようドアへ向かった。扉の前でほんの一瞬だけ振り返る。
ベッドの上の小さな寝息。微熱で赤くなった頬。その全部を視界に焼きつけて、静かに部屋を後にした。
まぶたをゆっくり開けた瞬間、部屋は薄い夕色に沈んでいた。体の火照りはほとんど消えていて寝ている間に熱も下がったらしい。
ベッドの横を見ると、小さな袋が置かれていた。中には、市販の解熱剤と、水の入ったペットボトル。あっきぃが買ってきたものの様だ。
でも、あっきぃの気配はない。買い物から帰ってきてまた外に出ていったらしい。
眠っている間、あっきぃが撫でてくれていたような温度を感じていた。
夢だったのかもしれない。
でも、指先の温度だけが不思議と鮮明で、その余韻がまだ残っているような気がした。
静まり返った部屋の中、玄関の電子ロックが解除される、低い電子音が響いた。
深夜の静けさを裂くようなその音に、僕はベッドから半身を起こす。
ドアが静かに開く。
廊下の灯りに逆光で浮かび上がる影は、間違いなくあっきぃだった。
その姿を見た瞬間、呼吸が止まった。
黒い服にはねた無数の血の跡。乾ききっていない赤が、ゆっくりと滴り床に落ちる。
表情は何も貼り付けていない。怒ってもいない、笑ってもいない。ただ、無。
「……あっきぃ?」
自分でも驚くくらい弱く、震えた声が出た。
あっきぃはゆっくりと顔をこちらへ向ける。
「……終わったよ。」
その声は低くて、妙に落ち着いていた。
返り血の量と声の静けさが釣り合わなくて、背筋が冷える。
あっきぃは靴を脱ぎながら、淡々と話しはじめた。
「えっ‥」
「全部、片付いた。これでもう、あの組織に帰る理由はなくなっただろ。」
淡々と、それがまるで食器を洗った、くらいの気軽さで語られた。
僕の喉が乾く。
「‥ど、どういう、こと?」
「…」
「その、血は、だれの?」
あっきぃは返事をせず、ただじっと僕を見つめ、冷たい表情を維持している。
「組織はもうない。お前を使い捨てにしようとしてた連中も、全部。」
その言葉に、僕の心臓が大きく跳ねた。冷たく放たれているはずなのに、その奥に焦げついた怒りの残滓みたいなものが微かに滲んでいて、ぞくりと背筋が震えた。
「あっきぃ……どうして……」
「お前のためだよ」
それだけ。
淡々と、まるで当たり前のことを言うみたいに。
理由を説明する気も、正当化する気もない。
ただ、その一言だけで十分だとでもいうように。
「……シャワー、浴びてくる。」
短くそう言ってあっきぃがバスルームへ向かっていく。その背中には傷一つなかった。ただ、返り血だけが痛々しく赤い。シャワーが壁に当たる柔らかい反響音が、静まり返った部屋に広がっていた。
視線がふと、リビングのテーブルに落ちた。そこに無造作に置かれたカードキーがある。いつも肌身離さずあっきぃが持っていた。
あのカードさえあれば、逃げられる。それを理解した瞬間、胸がぎゅっと縮んだ。
「…逃げなきゃ、」
あっきぃは僕を監禁した。組織を裏切って、僕のためだなんて独りよがりな理由で勝手に全部壊した。
……本当に、逃げていいの、?
組織に拾われてからずっと、誰も僕のことなんてちゃんと見てくれなかった。でも、僕の帰る場所はあそこ以外になかった。
だけど、あっきぃは違った。
組織で誰よりも強くて、誰よりも冷たいと思っていたのに。僕のことだけは、ちゃんと見てくれていた。
逃げられる。
――今なら。
二度とあっきぃに会わない世界が待っている。
そして、あっきぃが僕のことをどう思っていたのか、本当の理由も知らないまま終わる。
でもこれ以上、僕が居てはいけない気がする。僕は以前から少しずつ緩めていた拘束の紐を一気に解いてカードキーを指で強く握りしめてしまった。
「……ごめん、あっきぃ」
小さくこぼれた声は、シャワーの音にかき消されていった。
あっきぃが毎日入力していた数字を、僕は気付かれないように目で追って覚えていた。
数字が合っているのか不安で胸が締めつけられる。
押し間違えたらどうしよう。音で気づかれたらどうしよう。
最後の数字を押し、カードキーをかざすと錠が外れる小さな電子音が鳴った。
――開いた。
ドアの隙間から冷たい外気が流れ込む。
その空気に押されるように、てるとは足を踏み出した。
シャワーの音がまだ遠くで聞こえている。
そこにいるあっきぃを振り返らないように、僕は一気に廊下へ走り出した。
ドアが、静かに閉じる音が響いた。
後半へ続く。
こういうのめっちゃ好きなんですよね…しかし、ドS難しい。。なんだかんだ優しさを入れたくなっちゃうう
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続き楽しみです✨