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episode 2
紫紺に染まる夜空。黄金に光る月。
この美しい自然の中、男は山を2つ、3つと駆け上っていた。
淳「ち、ちょっと…!!どこに連れて行く気でっ、」
男「産屋敷邸だ。」
淳「なんだよそれ…、降ろしてよ!!」
男「しっかり俺に捕まっておけ。さもなければ落ちて足が折れるぞ。」
淳「一体何がしたいんだ、!‥もう僕には何も残っていないのに……」
僕は唯一の姉を亡くした悲しみと、これから何をされるか分からない恐怖心でいっぱいだった。
きっと僕はこの男に抵抗できない。
それは彼の果てしない体力が物語っていた。
僕はこれからどうなる…?
この男に良いように利用されてしまうのではいか。と、淳の中で不安が渦巻く。
あぁ、姉さん_ 僕がもう少し早く帰ってきていれば‥
_僕は人を喜ばせることが好きだった。
市場で得たお金で商店に出歩き、よく須美が好きなペンダントを買ってはあげていた。
何かあげるたびに須美は、
「うれしい‥!!淳ありがとう、淳が弟で本当によかったよ!」と僕の頭を撫でてくれる。
僕は、姉さん‥‥“唯一”の家族の笑顔を見ることで救われていた。
たとえ貧乏でも、好きなものを買えなくても、人の幸せそうな笑顔を見ると……どうでも良くなった。
この幸せは…壊してはいけない。いや、壊されてはならなかった。
悔しい。ただただ、悔しい……
そう思いを募りながら、姉さんの襟元にあった血まみれのペンダントを握りしめた。
そうすると、男が察したかのように口を開いた。
男「…姉の件は悪かった。」
その低く冷淡な声に嫌気が差す。
淳「…‥悪いで済まされると思ってるんですか。」
男はいくつか黙ったあと、また口を開いた。
男「すまない、…しかし、これは俺の“仕事”なんだ。」
淳「“仕事”…?」
男「あぁ、俺たちの仕事は鬼の首を討つことだ。」
「…少し鬼について説明をしようか。」
「人は鬼の血を体内に取り込むことで鬼へと変化する。鬼になったあと飢餓状態となり、まず血縁が同じ栄養価の高い家族を食らう。」
「鬼は人を食えば食うほど強くなるんだ。お前の姉ももう少しで飢餓状態に陥るところだった。」
「俺が来ていなければ今頃お前は…ただの骨になっていただろう。」
淳「…ひ、ひぇ‥」
男「しかし、鬼にも弱点が存在する。」
男「日光に当たれば、どの鬼も皮膚が焼けただれて死ぬ。首をはねば、そのまま体が崩れて死ぬ。」
「俺らの仕事は、命を奪う鬼共を討つことで人々の幸せを守ることだ。」
淳「そうなんですか…(だから姉さんも…)」
「あの、ちなみに…何故僕の父を知っているのですか?」
男「……お前の父は偉大な者だったからな。」
淳「(はぁ…、それしか言わないじゃないか!!)」
……
男「着いたぞ。‥‥そういえば自己紹介が遅れたな。」
冨岡「俺の名は冨岡義勇、水の呼吸の使い手だ。」
淳「水の呼吸?」
冨岡「あぁ、‥詳しいことは御館様が教えてくださる。」
冨岡「お前は選ばれし人間だ。御館様もさぞかし喜ばれることだろう。」
ギキィ… [門扉を開く]
このときの僕には、冨岡…というやつが何を言っているのか理解できなかった。
~ 産屋敷邸に到着 ~
そこには、“柱”と呼ばれる9人の者達が、僕の登場を待っていた。
妙な威圧感…行動の隅々まで見られているような感覚……気持ち悪い。
冨岡「事前に鎹鴉で知らせた通りだ。例の者を連れてきた。」
冨岡がそう言うと、彼らは僕の周りに集まり、口々にこう言った。
(煉獄)「これが三ケ峰様の息子か!! 珍しい髪色だな!」
(悲鳴嶼)「生まれる前に父を亡くすとは……かわいそうに、南無阿弥陀仏……」
(甘露寺)「キャーー! ちっちゃい!かわいいっ!!♡」
(当時淳は154cm(13歳))
淳「なっ、可愛いって…!」
(伊黒)「パシィンッ)) 甘露寺に口答えするな。」
淳「痛っ、…ヘ?……???」
訳が分からない。
この人達は誰だ?
どうして僕はここに連れてこられたんだ?
淳「(誰なんだこの人たちは…怖い……。)」
(胡蝶)「こらこら、怖がってるじゃないですかぁ。それに、もう御館様がお見えですよ?」
小柄で不気味なオーラを纏う女性が放った一言で場の空気がピシャっと変化した。
彼らはこの一瞬でこの“御館様”と呼ばれる人物に跪いたのだ。
きっとこの団体の司令官…のような存在なのだろう。
その御館様は顔半分が紫色に変色していて、なんとも奇妙な姿をしていた。
淳「(目下まで広がってる…目は見えないのか?)」
御館様「今日は集まってくれてありがとう。私の子供たちよ。‥さて、先ほど義勇の鎹鴉から**三ケ峰慎一**の子孫が発見されたと聞いたが、本当かい?」
淳「(三ケ峰…慎一?父の名前か?)」
聞いたことがあるようなないような…
冨岡「おっしゃる通りでございます。」
(冨岡に肩をぽんと叩かれる)
淳「み、三ケ峰淳です…!」
御館様「ここに来たことを光栄に思うよ,淳。」
そして“御館様”は、僕の父の話をしてくれた。
御館様「君の父は立派な人だった。最期まで… 。上限の参を倒しに行ったきり、行方不明になってしまったがね……」
淳「…… え、?! 」
「(う、嘘だ……父は失踪したんじゃないのか…?!)」
御館様「慎一はいわゆる柱だったのだよ。」
淳「柱…?」
御館様「鬼殺隊トップクラスで実力を持つ者たちが集まる団体なんだ。慎一は特に強かったと聞くよ。」
淳「(…と、父さんが……)」
冨岡さんは、鬼殺隊の仕事は邪悪な鬼共を討つことで、人々の幸せを守ることだと言っていた……。
僕は勘違いをしていたのか…父は失踪なんかしていない。
父は人々の幸せを守るために、命を捨ててまで戦ったんだ…それでたまたま、僕が産まれる時期と重なってしまったと…
僕はなんてことをしでかしたんだ。愚か者だなんて酷いこと_
御館様「君はそんなお方の子孫だ。きっと実力も凄まじいものだろうね。」
「鬼殺隊になってみないか…?淳。」
「父の仇を討ち、鬼を滅ぼし、鬼のいない平和な世界へ___」
episode 2 complete
次回もどうぞ宜しく❣