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1. 破壊された自我
ポオの中に、“何か”があった。
それは、乱歩を守りたいという想い、そして“もう一度”と願う弱さ、――それらすべてを含んだ、痛みのようなものだった。
だが今、そのすべてが、無慈悲に崩れていく。
ポオは気づいてしまった。
自分の心の中に、感情が多すぎることに。
「怒り」「悲しみ」「愛」「憎しみ」——
それらが、次々に具現化して彼の中で人格として現れる。
冷酷に微笑む「冷徹ポオ」。
涙を流しながら「泣き虫ポオ」。
すべてを破壊しようとする「暴君ポオ」。
そのどれもが、ポオの心の一部でしかなかった。
そして、ポオはそれを知る。
「……これが、俺だ。」
2. 過去と現在、交錯する記憶
「君を殺さなきゃならない。」
その言葉を、乱歩が口にした瞬間、ポオは凍りついた。
その目は、もう彼が知っていた乱歩のものではなかった。
冷たく、理性を欠いた、ただの機械のようだった。
「……君は、“僕を殺す”のが正しいと思ってるんだ。」
乱歩の顔が歪む。
「違う。君を殺さないと、僕が壊れるからだ。」
その言葉に、ポオは震えた。
――ポオを殺せば、自分が救われると信じている乱歩を見て、
ポオは、それを止めなければならないと思った。
だが、どうしても言えなかった。
3. 感情の終焉
乱歩の目に、ポオのすべてが映らない。
その瞳に残るのは、ただの冷徹な表情でしかない。
ポオはその目を見つめ、手を伸ばした。
「君を――」
「止められない。」
ポオの言葉に、乱歩の目が揺れる。
ほんの一瞬、乱歩の心が戻った気がした。
だが、それを認めるわけにはいかない。
「僕は……君を殺したくないんだ。」
その言葉を発するために、乱歩は自らの身体を引き裂くようにし、精神を絞り出す。
**“ポオを殺さなければならない”**という矛盾した命令が、彼の中で絡み合い、無理矢理に振り下ろされる。
4. 自分を壊して、君を救う
ポオは、その時、全てを知った。
自分の“感情”が分裂していたこと。
それは、自分が本当に怖いものを、 守れなかった自分を消し去ろうとしていたからだ。
その恐怖、拒絶、後悔——
それらが形になって、ポオの中で暴れていた。
「俺が、壊れることで君を救わなきゃならないんだ。」
その瞬間、ポオは何かを決心した。
「君を……守るために、俺は自分を壊す。」
その言葉と共に、ポオは一歩を踏み出す。
そしてその手が、乱歩の胸に触れたとき、彼は心から、笑った。
“壊れた感情”が、最後に一つにまとまったとき、
初めて二人は、繋がることができた。”
5. 絆の再生
ポオが乱歩を見つめる。
彼の目には、もう迷いも、憎しみも、冷徹さも、何も残っていなかった。
ただ、愛する者を救うための力が、そこにあった。
「乱歩、君を……守る。」
その言葉がポオの中で響く。
やっと、彼の中の感情が、全てを超えてひとつになった瞬間だった。
乱歩はポオの手を握り返す。
そして、そこに――
“もう二度と壊れることのない強さ”が芽生えた。
6. 新たなる命の約束
――全てを壊した後に、残るもの。
それは、二人の間に生まれた“真実”だった。
「これで、全てが終わったわけじゃない。」
ポオが呟く。
乱歩は静かに頷き、目を閉じる。
「うん。でも、これからは――二人で歩む道がある。」
その言葉に、ポオは再びその手を握りしめた。
もう何も怖くない。
どれほど深い闇に落ちようとも、二人なら乗り越えられる気がした。