テラーノベル
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今夜から、ドレスの襟を広げるくらいは始めないと間に合わない。
ゆっくりとは出来ないのだけれど、篤久様の
“ゆっくり準備してくれていい”
は、とても気持ちを落ち着かせた。
「こんばんは。カレーかな?」
「おかえりなさいませ。かぼちゃとオクラのカレーそぼろ炒めの香りですね。こちらは、茄子のおかか煮と長芋の酢の物です。カレー炒めとだし巻き卵は、すぐにお持ちします。お豆腐となめこのお味噌汁は、あとにされますか?」
ご主人様への食事の準備も慣れた。
奥様と遥香は、カレー炒めとだし巻きしかいらないと言ったので、カレー炒めの隣に白米を円型に盛って、だし巻きも一緒にワンプレートにして出した。
「そうだね。あとで、ネギたっぷりにしてお願いします」
「かしこまりました」
ご主人様のお味噌汁に刻みネギは必須だとも学習済み。
今日も日本酒ワインをご自分で用意されているところへ、篤久様もやって来た。
私がだし巻き卵と温めたカレー炒めを運ぶと
「今日も美味しそうだね。ありがとう、いただきます」
篤久様が手を合わせてから、美しい動作でお箸を手にする……って、どうして見惚れているんだ……私は。
「篤久が最近、酢の物を食べるね」
「父さんは前から好きだね。最近、日本酒ワインに合うと感じるし、今日の組み合わせなんかはつるっと食べやすい。これ、真奈美さん?」
「はい。どうして分かりましたか?」
お水の用意をしていると、そう聞かれて驚く。
「真奈美さんが来る前には食べたことのない組み合わせだから」
「そうでしたか……私が作ると具だくさんになって、上品な酢の物にはならないねって、この前、前川さんに笑われました。あ、嫌な感じではなくて、です」
今日私が作ったのは、長芋、ワカメ、きゅうり、ミョウガの酢の物。
「これ、好き。また作って欲しい」
「ありがとうございます。また来週も作ります」
来週……私、ここにいるかな?
ふと、そう思ったから、きちんと広瀬さんたちへの引き継ぎメモに書いておこうと思った。
お味噌汁をお出しして
「お食事中にすみませんが、ひとつ確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
とご主人様に聞いてみる。
「どうぞ」
「何かあった?」
篤久様も聞いてくれるみたいだ。
「遥香様のドレスのリメイク縫製をするための材料を買いに、明日運転手さんを使っていいと奥様に言われたのですが……支払いも運転手さんがしてくれるからって。私が乗せて行ってもらってもいいのでしょうか?」
「確認してくれてありがとう」
ご主人様はゆっくりとそう言ってから
「そういうことなら、私からも彼に伝えておく。車は構わないけれど、そのドレスのリメイクというのは、真奈美さんの仕事に入れていいものかな?」
と続けて私を見た。
彼というのは運転手さんだね。
で、ご主人様から
桑名さんでなく、真奈美さんになったのか……私。
コメント
3件
お二人とも真奈美ちゃんのお料理に胃袋掴まれましたね🤭💗💗💗 お料理上手な真奈美ちゃん✨私、料理苦手やかさかい教えて教えてーーーーッ😂💖💖💖
美味しそう🤤カレー炒めはいろいろアレンジが効きそうですね☺️ ご主人様も何気に名前呼びで好意的!! 買い物も安心だけど、明らかに業務外だよね~😠
真奈美ちゃーん!その酢の物のレシピ....〆(・ω・*)メモメモさせていただきまーす🥃カレー炒めもできそう🤭でもかぼちゃが難関かも😆 ご主人様も真奈美ちゃんのことお気に召してると見た。仕事もきちんとできるし無駄もない。なにか…篤久様から聞いた?もしくは話しはせず調査書だけを渡されてしっかり目を通した? とにかく、ご主人様にも許可をいただけたから安心して運転手さんとお買い物に行けるね!よかった!