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「ただいま。」
「おかえり。今日は早かったのね。」
いつもの会話だ。
母は料理中でも洗濯物を取り込んでいる最中でも僕が帰ってくると玄関まで来て「おかえり」を言ってくれる。
だから僕は愛されてるなと日々感じる。
「ねえ母さん。」
「なあに?」
母さんはくしゃっとした笑顔で言った。
「母さんはさ、子供が何してくれたら嬉しい?」
僕は聞いた。
「そうねえ。何をされても嬉しいけど楽しく生きてくれればそれだけで嬉しい、かな」
あの隣の女の子が言っていたことと同じだ。
女の子はすごいなと思いながら、僕は「そっか」とだけ言い部屋に戻った。
部屋に着いた途端僕は窓を開けた。
するとすごい匂いが部屋に充満した。
窓の外を見ると隣の家には金木犀の木があったのだ。
オレンジ色で鮮やかで綺麗だった。
僕がしばらく窓の外から顔を出し、外の空気を吸っていると隣の家の窓が開いた。
「あれ。君。今日の。」
ビクッとしてその顔を見ると今日、親孝行の話をした女の子だった。
「君ここに住んでるの?」
と聞かれ、僕は「うん」と答えた。
その時、強い風が吹いてきて咄嗟に窓を閉めた。
微かに何か聞こえた気がしたが風の音だろうと思い気にしていなかった。
そして女の子とちゃんと会話を終わらせずに閉めてしまったと思いもう一度窓を開け、外を見た。だけどそこにはその女の子はいなかった。
その日から僕と女の子はほとんど毎日家に帰ってくると窓から2人で話すようになった。
たまに僕の家の急に押しかけてきたり、お惣菜を「余ったから」と言い届けてくれたり。
母さんは女の子と僕は付き合っているんじゃないかとワクワクしていたみたいだが、
付き合ったりはしていない。
そして僕には女の子に対して一つ疑問があった。
会う時には必ずどこかを怪我しているのだ。
僕は何度も聞いた。だけど女の子は「大丈夫。なんでもないから気にしないで笑」
と毎回流されてしまう。
親とあまり仲が良くないのか、彼氏がそういう人なのか。なぜかは分からないが僕はその2つのどちらかな気がした。
深堀はされても嬉しくないだろうと思い余り問いただしていない。
でもやっぱり気になってしまう。
そしてとうとう女の子から理由を聞けたのだ。
「ねえ。しつこいかもしれないけど、そのあざどうしたの?心配だよ。」
と僕は少し震えながら聞いた。
すると彼女は、「私さ。ずっと前から体が普通の人より少し弱くて、私の兄だけ特別扱いされてて、テストの点数が70点以下だと少し殴られちゃうんだ。」
泣きながら話してくれた。それは辛かっただろうな。
聞かない方が良かったかな。
「君は今私にそんな質問しない方が良かったかな。とでも考えてるんでしょ。気にしないで。」
と女の子は僕に言った。
「よく分かったな。」と僕は苦笑した。
翌日いつも通り学校に行った。
そしたら女の子は僕の親友と楽しそうに話しているのを見た。
僕は胸が苦しくなった。この苦しいは、病気とは違う何かだ。
もしかしたらこのとき僕は恋と言うものをしてしまったのかもしれない。
続く