カジキマグロの色々な部位の刺身は、醤油で食べると、スーパーの刺身どころではない本格的な味を示していて、どれも驚くものばかりであった。
渡部と角田と私は最初、食べられれば何でもいいと思っていたが、改めて安浦の料理の凄さが身に染みた。
―――
それぞれとてもゆっくりした食事を終え、必要だった塩分の補給もできて満足する。呉林は私に言ったことを、もう一度みんなの前で冷静な口調で話し出しはじめた。
「それはどんな方法ですか?」
渡部は2リットルのペットボトルからのお茶を、みんなのコップに入れながら尋ねた。
「解らないの。けれど、見つければきっと、それがどんなものなのか解ると思うわ」
呉林は自信を完全に取り戻し、落ち着き払って、いつの間にか刑務所での呪い師の雰囲気を纏っていた。
「何日くらいかかるの?」
角田は仕事の途中だったので、あまり時間が経つのは好ましくないようだ。けれども、この世界に来ると元の世界での時間はどうなるのだろう?
「解らないけれど、この人数で色々と探すなら、以外と早く見つかるかも知れないわ。この世界から一日も早く抜け出さないと……」
呉林の意味深な言い方に私は顔を強張らせた。それもそのはず、食料や水などの深刻な問題がある。日が経てば経つほど命にかかわってくる。
角田と渡部は呉林の刑務所での不思議な力を認め、心強い羅針盤のようなものだと思えているようだ。私もそうだが……。安浦は食器を片づけたりしながらこちらに耳を傾けている。
4人で呉林を中心に、丸テーブルを囲み、この不可解な世界から抜け出そうとしていた。
それには、やはり羅針盤である呉林の力が大いに役立った。
「どこかが解ればいいけれど、解らないのよ。みんなそこは協力して」
「協力してって?このゴルフ場は広すぎるぞ。地平線まで広がっていて、いくらなんでも……」
角田は不安げな声をだした。
私は呉林に浮かない顔を向け、
「呉林頼むよ。少しでいいから、探すところを少なくしてほしいんだ」
「そうね。では……」
呉林はそう言うと下を一度向いて、それから顔を上げ、
「芝生と池、そして雑木林は除けると思うわ。だから……砂地だと思う」
呉林はバンカーを砂地と呼んだ。ゴルフをあまり知らないようだ。私もだが。
「この近辺ですか。それとも……」
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