テラーノベル
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第3話
※そのじん❤️💛要素があります
柔太郎site
あの夜、どうしてもだいちゃんが隣にいると思うと眠れなかった。
自分が少し怖かった。だから逃げた。
逃げる前にだいちゃんの寝顔を見て、どうしようもない感情を焚きつけられてしまった。
寝てるだいちゃんに愛の言葉を囁いた。最初で最後の”好き”。
でもそれから何だかだいちゃんの態度がおかしい気がする。気づかれた?と思ったけど避けられるというよりむしろ近くなった感じがする。
食事をした時にテキトーな悩みでもでっちあげて話した方が良かったんだろうか。
だいちゃんに心配はさせたくない。いつも笑っていて欲しいのに。
やっぱり隠していても好きでいること自体がダメなのだろう。何か感じ取られてるのかもしれない。
そんなことを悩んでる時、楽屋に舜太が入ってきた。
いつも通り挨拶した後、すがるような気持ちで話しかける。
「しゅんってさ、もし絶体敵わない相手に恋したらどうする?」
「何それ?ドラマの話?」
「…まあ、うん。ちょっと話がきてるやつでさ。でもリアルでそうなったらどうする、みたいな」
「うーん難しいなぁ。叶わないって思ってるのがもうちゃうやん?」
舜太は一瞬悩んだ後、ぱっと顔をあげる。
「そう思ってたら叶うもんも叶わんよ」
「…そう、かなぁ。本当に叶わないことってあると思うよ。色々さ」
やっぱり、しゅんは俺と考え方がまるで違う。そういう所が面白いんだけどさ。このポジティブさが本当に羨ましくなる。
「それは告白して玉砕したってことなん?」
俺の顔を覗き込んで聞いてくる。
「……いや、しないでも分かるっていうか」
「えー!しないのに分かることなんてあらへんよ!」
大きな声で反論されてちょっとびっくりした。
「…でも、伝えて断られたら?ずっと気まずくなって友達ですらなくなるとしたら?」
「それでも俺なら伝えるなぁ。その状態じゃ前に進めんやん」
今まさに悩んでいることだ。別の子を好きになれたら、と思うがそんなことができる気がしない。
だって常に好きな子が隣にいるんだ。ほぼ毎日のように会う。目なんて離せない。でもこのままじゃ…。
「…でもそれで相手が嫌な気分になったらって思うと言えなくない?」
「好きって言われて嫌な人なんておる?勇気出して自分に告白してくれただけで嬉しいやん」
舜太の言葉に思わずぽかんとする。
「伝えるしかないって!諦めても後悔するだけやで!」
両手でガッツポーズをとって言ってくる舜太を見て、思わず気が抜けて吹き出してしまう。
本当にびっくりするぐらい真っ直ぐだ。
「あ、設定やっけ。なんか忘れてて熱くなってもた。ごめん!」
「いや、いいよ。めっちゃ元気出たわ」
「俺もなー最近そういう事あったからさ、でもちゃんと言ったで」
「え?しゅんも…」
ビックリした、そんな話聞いた覚えがない。確かに最近何か考えてる様子はあったけど、すぐにいつもの様子に戻っていたので気にしていなかった。
詳しく聞こうとしたところで他のメンバーも楽屋に入ってきた。もちろんだいちゃんも。
「おはよ!柔太郎」
「おはよー」
満面の笑みで挨拶をしてくれる。きっと励ましてくれてるんだろう。優しいね。
だいちゃんだったら告白しても受け止めてくれるんだろうか。言わないことを当たり前にしていて考えていなかったけど、断られて俺は素直に受け入れられるんだろうか。
自分でもよく分からない。
俺が舜太だったらそんな勇気も出るのかな。
太智side
「最近のお前の柔太郎への態度、何?」
「違うねん、どうしたらいいか分からへんの!」
「はあ?」
吉田さんは俺に辛辣な目を向ける。今日は2人で雑誌の撮影。休憩中いきなりつめられた。
前々から吉田さんが俺が柔太郎に話しかけてる時変な顔をしてるなとは思っていた。
あの日の翌朝、起きるともう柔太郎は朝食の準備をしていてソファで寝たことも何も言わなかった。
試しに「俺、寝相大丈夫だった?」と言ってみたけど「朝までおとなしくしてたよ、ちゃんと眠れた?」なんて返されてしまった。
柔太郎は何も気づいてない。俺だけが気づいている。
そう思ったらどうすればいいか分からなくなってしまった。最初は避けようかと思ったがそうした事で柔太郎が傷付いたら、気づいたらと思うとそれもできず…。
でも柔太郎の顔を見るとあの時の言葉を思い出してしまい頭がぐちゃぐちゃになってしまう。
結果、得意の笑顔でごまかすことにした。
「付き合ったの?」
「いやいやいや!ちゃうて!」
「じゃあ何であんなに構うんだよ」
「いや…それはぁ〜……」
めんどくさそうな顔をする吉田さんにこの前あったことをつい話してしまった。
ごめん、柔太郎。俺1人じゃ抱えきれへん…。
「恋愛小説かって」
「そんなしょぼいツッコミで終わらせんでよ〜!」
乾いた笑いをする仁人の肩に頭を突っ込むと無情にも押し返される。吉田さんは冷たい。やっぱ佐野さんに相談した方が良かったかなぁ。でもこれ以上こんな話誰かにする訳には…。
「で、お前の気持ちはどうなん」
「…え?」
「嫌だった?」
「いや…ではあらへんよ」
「怖いと思った?」
「ベッドの時は一瞬ビビったで?でも別に怖い、とはちゃうかなぁ」
「寝てる柔太郎見た時は?」
「…なんか、ほんと優しくてええ男やなぁって」
淡々と素直に答える。
「じゃあ、いいじゃん」
「…何が?」
「付き合えば」
スマホを見ながら表情も変えずに吉田さんが言う。
「何その軽さ!?真面目に考えてへんやん!」
吉田さんっていつもこうだ。真面目なふりをしてテキトー。
「…だって、俺も舜太と付き合ってるし」
「……え?」
「お前絶体喋んなよ、喋ったら今の俺に相談したって柔太郎にチクる」
スマホからぱっと目を離し俺に向かって早口で捲し立てる。その目を見て冗談じゃない、と分かった。
それだけ言うとまたスマホを見はじめてしまう。混乱する俺をおいて。
「え?ちょ、え?待って待って…どういうこと?」
「そのまんま」
「え、だってメンバーやで…?っていうか男やし…吉田さんそっちじゃないやろ?」
「色々あったんだよこっちはこっちで」
すまし顔で話す吉田さんにびっくりする。いつ?ていうか何で舜太?それも吉田さんと?
色々聞きたくなるが話す気がないのを圧で伝えてくる。あの時ああいう発想になったのもそういう事だったのかと納得する。
情報量でパンクしそうになる俺に吉田さんはため息を吐きながら言う。
「そんだけあって拒否反応出ないんなら悪く思ってないんじゃないの?」
「………だって、相手柔太郎やし」
「友達だってなんだって、男が相手でそういう感情向けられて嫌だったらあんな風に喋れないだろ」
「そういう…もんなんかなぁ…」
分からない、そんなこと。こんな状況になったことがないし。好意を嫌だと思ったことがない。
俺を好きだと思ってくれることが嬉しいし、でもそれは今まで全部女の子だったり、ファンとして友達としての好きやったり…。
考えすぎて頭から煙が出そうになる。
「でも柔太郎ってお前に伝える気なさそうなんだよな。あいつって周りのことまでよく考えて行動するし、何よりお前のこと考えてるだろうし」
そう言われてあの「ごめんね」の言葉が頭の中で再生される。
「舜太にも見習ってほしいわ、マジで」
呆れるように言っているけどそれでも付き合ってるとまで言うんだから悪い気はしてないのだろう。吉田さんは嫌なものは嫌と言うタイプだ。
ようこれを落としたなぁ…なんて舜太に関心してしまう。ってそういう場合じゃなくて……。
「すみませーん!そろそろ休憩終わりです」
「あ、はーい」
「えっちょっ吉田さん!」
「仕事、ちゃんと切り替えしろ」
さっさと吉田さんは先を行ってしまう。
「……じゃあ、俺はどうしたらいいん?」
そう呟いた俺の言葉は誰もいない休憩室に消えていった。
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