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「ねぇ買ってよ! 買ってぇ」
「わかったから、くっつくなって!」
学校からの帰り道では大抵、寄り道をして帰る。駅の構内にある店に寄って、クレープやソフトクリームや焼きたてのパンなどを買ったり、マックでハンバーガーを食べたりする。また、駅前のコンビニで揚げ物や中華まん、挽き立てコーヒーを買って、店内のイートインで食べたりした。それから宿題をするスペースを見つけて宿題をやる。本当なら学校に残って教室や図書室で、宿題をやった方がいいに決まっているけど、マナが嫌だと言って言うことを聞かないので仕方なく学校の外でやるようになった。でも、いつからかマナにとっては、店に寄るのは腹を満たすためのもので、宿題をするのは、おまけのようなものになっていた。
「圭ちゃん、今日はファミレスでチーズinハンバーグが食べたいなぁ」
「家帰ってから夕飯食べるんだろ?」
「食べるよ。当たり前じゃん」
「ハンバーグなんて食べたら食べられなくなっちゃうだろ?」
「食べられるって。食べたら宿題やるから、お願い!」
「わかった。ちゃんと宿題やれよ」
「うんっ! あとドリンクバーもいい?」
「あぁ、いいよ」
「やったぁ。圭ちゃん、だ~い好き!」
こんな調子で、俺はマナの言うことを聞いてしまう。それにマナは俺が何でも聞いてくれると思っているらしく、平気で何でもお願いしてくる。こいつは俺を何だと思ってるんだ? 何でも望みを叶えてくれる魔法使い? 召し使い? 都合のいい男? それとも―――。こいつの気持ちなんて全くわかないし、わかったところで何かが変わるとも思えない。時々、マナと一緒にいると俺は何をしているんだろうと、自暴自棄になる。
「あぁぁぁぁぁ~おいしかった」
「食べ終わったなら、宿題やるぞ」
「ちょっと待ってよ。もう一杯ドリンク飲むんだから、少しくらい休ませてよ!」
「わかったから、早く取ってこいよ」
「ふん!」
マナは、色んな手を使って何とか宿題を後回しにしようとしてくる。でも俺は幾度となくマナとのやり取りを重ねて、マナのやり口が数パターンあるのを知っている。だから、こいつの考えていることは大体わかる。この後の行動も大体予想はつく。まず戻ってきて、ドリンクを飲み干すと俺の顔色を伺いながら、宿題をテーブルの上に並べ始める。
「圭ちゃん見て! コーラとメロンソーダを混ぜてみたよ」
「旨いのか?」
「う~ん、微妙――」
「自分で入れてきたんだから全部飲むんだぞ」
「わかってるよ。今飲むから待っててよ! うっさいなぁ」
ゴクゴクゴク―――
「ぷはぁぁぁぁぁ~~飲み終わったぁ。それじゃあ宿題やろうかな」
そう言うと、マナは鞄の中から宿題で使う教科書とノートをダラダラと取り出し始めた。何とか時間をかけて、出来る限り1分1秒でも先延ばしにしようとしているようだ。早く始めて早く終わらせようという考えはマナの中には存在しない。
「宿題の準備が出来ましたぁ!」
余程やりたくないようで、不貞腐れながら言っていた。