〈peint side〉
彼は俺をよくわかっていて欲しい言葉もして欲しいこともなんでもしてくれるずるい人だ
rd 「好きだよ、ぺいんと
俺と付き合ってくれる?」
でもわかっていない。
俺は彼の瞳をまっすぐに見つめてはっきりという
pn 「ごめん。」
彼は驚きを隠せないようだった。
当たり前だ、日記も読んで自分の気持ちと俺の気持ちを照らし合わせて完全に完成するはずだったこの形は俺のたった一言で崩れてしまったのだから
rd 「なんで、今の一件で嫌いになった?」
そんなわけないじゃんか、お前のかっこいいところもだらしないところも、ムカつくところも全部大好きだ。
でも、だからダメなんだよ
pn 「もちろんお前のことは好きだよ。でも、
らっだぁの気持ちに応えることはできない」
rd 「意味わかんないよ、ちゃんと説明して」
pn 「それは、、」
言葉が詰まる、身体がこわばる。
それでも彼が向き合ってくれたなら俺も一歩踏み出さないと
pn 「俺、あと三ヶ月で死んじゃうんだ」
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これは俺の引越しが決まる少し前の話
看護「ぺいんとさん、院長が呼んでいるので診断室にきてください」
pn 「、、、はい」
元から体は強くはなかった。そのせいで小さい頃から病院暮らしで、外でサッカーをする子どもたちを見てはそれをまるでドラマの世界のように眺めていたのをよく覚えている
外を眺めると駅を埋め尽くす地味な色のスーツの中に鮮やかなランドセルの色が目立った
建物ばかりで桜吹雪なんて見れるわけもない場所でも不思議と風が春を運んできてくれたあの暖かい時期に、俺の体調が悪化した。
何か良くない病気なのかもしれないと精密検査を受けることになって、
今日はその検査結果を聞く日
ガラガラッ
pn 「失礼します」
院長「おはよう、調子はどうかな?」
pn 「特に大きな変化はないです」
院長「うん。早速だけど検査の結果にうつるよ」
癌だった。
俺の中で静かに根を張っては、急速に姿を現したそいつは、もう手遅れだったらしい
院長「とても厳しいお話だけれども、ぺいんと君は半年、長くて一年と思われる」
pn 「そうですか」
特に何も感じなかった。強いていうならこの若さでも癌ってほんとにあるんだなぁ、くらい
俺は孤児院育ちだし親もいないから悲しむ人もいないだろうし、別に死ぬことを恐れたわけではなかった。
ただ、もう少し自分が強くあれたらやりたいことが山ほどあるのにな
そのタイミングで病院で治療を続けるか、自宅治療を行うかの提案を受けた。
もし最期に抗えるのであれば、、、
俺は自宅治療を選んだ
とは言っても家族なし、孤児院育ちだし俺は今まで病院で過ごしてきたから家という概念が正直に言って、ない。
そこで病院側が用意してくれた家に行くことになったわけだけど色々あってらっだぁと出会ったってこと
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pn 「らっだぁと出会ってから感情も豊かになって、身体も前よりも動けるようになって」
必死に話していたら涙が溢れ出てきてしまった。
pn 「いやなんだっ、死ぬことなんて怖くなかったのに、、。 友達のままなら笑って楽しかったってそれで終われるのに」
pn 「片思いならまだよかった。一方通行の気持ちにすぎないからっ」
pn 「でも恋人になんかなったらそうはいかなくなるでしょ?執着して、未練がましくなって、」
pn 「死ぬのが、俺を好きでいてくれる人を置いていくのが、つらくなるでしょ。」
あぁ、俺いま超ダサい
結局は死ぬのが怖くなって、欲しいものが手に入ることに恐れているんだ
それがお互い求め合ってできるものなら尚更、片方が欠けた時のダメージはもの凄いから
pn 「だからっ、付ぎ合えない”」
泣きすぎて過呼吸になる俺をらっだぁは静かに抱きしめてくれた。
だからそういうところが、大好きで1番怖い
rd 「わかってないなー、ぺんちゃんは」
優しく笑うその声はどこか切なくて、でもどこか心強かった
rd 「俺が知らないとでも思ったの?」
pn 「、、へっ?」
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〈radao side〉
プルルルルップルルルッ
rd 「はい、もしもし」
院長「あ、らっだぁ?元気してたかー?」
rd 「電話してくるなんて珍しいじゃん」
rd 「きょーさん」
俺と院長は歳の離れた幼馴染で、俺が看護学生であった時にきょーさんの病棟でお世話になっていた
ky 「ちょっといい話があるんやけど、
二人暮らししてみない?」
rd 「え、きょーさんと?無理だよ」
ky 「俺じゃなくて笑
実は余命宣告した男の子がいてさ」
そこでその子が精神的にも身体的にもボロボロになってきているのを知っていたきょーさんは俺との相性がいいんじゃないかと踏んで話を持ってきた
病院の経費で引越し及びその後の生活費まで負担してくれるとのことだった
決して悪い話ではなかった
俺がその子の最期を見届けなくてはいけないこと以外は。
看護学生時代からそういったことがないわけでもなかった、患者さんの最期を目にする事なんて珍しいことでもなかったし
ただ俺が乗り気じゃなかったのは二人暮らしをするその子のこと。
俺に光を与えてくれたあの子だったから
コメント
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悲しいおわり方かと思ったら超展開で思わず飛び跳ねました✨