テラーノベル
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「おーい!こっちだ!」
——その呼び声に、僕はハッと正気を取り戻した。
まるで、悪い夢を見ていたような気分だった。
頭を振り、絶望を振り払う。
恐怖に飲まれちゃ駄目だ。
最後の最後まで、絶対に諦めない。
声のした方に目をやると、遠くの方——闇の中で白い点が輝いている。
「——右だ!あの、白い光の方に!」
気がつけば、僕はそう叫んでいた。
あれが何かはわからない。
しかし、あの光が最後の希望だ。
僕の勘が、そう告げていた。
「わかった!」
蒼梧が叫び、進路を変更する。
どうやら謎の光は、向こうからもこちらへ近づいて来ているようだった。
「おーい!大丈夫かー!?」
光が、再び僕らに呼びかける。
それは白く輝く、一羽の鳥だった。
鴉だ。
白い鴉は、光の尾を引きながら、凄まじいスピードで僕らの元へと飛んできた。
「門はこのまま真っ直ぐ行ったところだ!早くしろ!」
そう叫びながら、鴉は僕らのすぐ隣を並んで飛んだ。
「お、お前は——?」
「話は後だ!伝言を伝えるぞ!」
伝言?
一体、誰からのだ?
そんな僕の疑問は、すぐに解消されることとなった。
鴉の口から、よく知る声が響き渡ったからだ。
「——この鴉は私の使いです!彼の後を追ってください!」
それは今、一番聴きたかった声と言っても過言ではなかった。
「幸村さん……!」
「さあ、わかったら黙ってついてきな!」
元の声に戻ってそう言うと、鴉はスピードを上げ、蒼梧の前方を飛び始めた。
光の筋を蒼梧が追う。
「往生際が悪いねえ——諦めて楽になりなあ——」
背後からは邪悪な声と共に、いつの間にやら沢山の鳥の羽ばたきのようなものが聴こえている。
距離も、だいぶ近づいてきているようだ。
「くそっ——そろそろ、変身が解けそうだ!」
蒼梧が苦しげに声をあげた。
思えば、ナギも長時間は変身を維持できていなかった。
むしろ、ここまで持ったのが奇跡なのかもしれない。
僕は鴉に向かって大声で問いかけた。
「ねえ、まだかかるの!?」
「もう、すぐそこだ!この先に渦がある!見えるか!?」
「あれは——」
蒼梧が息を飲むのが、背中を通じて伝わってくる。
見れば、遠くの方の水面が一部、円状に光り輝いている。
門だ!
光に照らされ、門の周囲が轟轟と渦巻いているのがわかる。
門からは、数メートル程度の光の柱が立ち昇っていた。
あの円の大きさでは、巨人は腕くらいしか通過できないはずだ。
「拝み屋の姉さんが、門を目一杯に広げてくれてる!真上から突っ込むぞ!」
鴉は光の柱の真上まで来ると、渦の中央に向かって急降下した。
「お先っ!」
鴉が、門の向こうへと消えていく。
この先に——僕らの世界がある!
「しっかり掴まってろよ!」
蒼梧はそう叫ぶと、鴉の軌道を辿り、自らも急降下を開始した。
#怪異
耐え内
233
#怪異
阿炎快空
123
#ダークファンタジー
阿炎快空
82
体がふわりと浮かび上がる感覚。
光が、僕らを飲み込んでいく——
魔女はチイッと舌打ちをした。
すぐ目の前で、獲物は光の中に消えていった。
次元の門——今回、境界街の付近にいくつか空いていた内の一つだ。
特にこの川は、向こう側と繋がりやすい。
かつて赤ん坊だった蒼梧を取り逃がしたのもこの近くだった。
(この巨体じゃあ腕ぐらいしか入らないと思ってるんだろ?残念だったねえ)
巨人の体がグニャリと歪み、不定形のアメーバのような形状へと変化する。
「お前達!ついてきな!」
魔女の周囲には、修達を追いかける途中で境界街のあちこちから呼び寄せた、百羽近い鴉達の姿があった。
それも、ただの鴉ではない。
〝夜〟の力を分け与えられ、黒い靄を全身に纏っている。
そのため、鴉達の大きさは通常の倍ほどはあるように見えた。
赤い目玉で全身を覆い尽くした、真っ黒な液状生物と化した魔女が、渦の中へと吸い込まれていく。
鴉達も、バサバサと翼を羽ばたかせて主を追った。
門を潜り抜けた瞬間、重力の方向が反転した。
落下していたはずの体が、いつの間にか上昇している。
そこはどうやら、街外れの川のようだった。
星の輝く夜空へと飛翔した魔女は、弧を描きながらあっという間に巨人の姿へと戻り、勢いよく水面へと着水した。
水かさは、大体脛のあたりだ。
背後の渦から、手下達の羽ばたきの音が響く。
(んん?夜なのに、やけに周囲が明るいねえ——)
と、魔女がそんなことを思った瞬間だった。
思考を遮るかのように、何者かの巨大な拳が、巨人の顔を殴りつけた。
「——ぐああっ!?」
予期せぬ一撃に、巨人の体がよろめく。
(こ——こいつは!?)
そこに居たのは、ちょうど魔女と同じくらいの身長の河童だった。
河童と言っても、その体は透き通り、川の水と一体化している。
全身が水で形成された、巨大な河童——それが今、魔女の前に威風堂々と立ち塞がっていた。
「水神め——アタシの邪魔をする気かい!?」
「クエーーーーーーーーッ!」
返事の代わりに、河童はひと声、大きく鳴いた。
コメント
1件
おお、第81話!ついに門を通って帰還か…と思いきや、魔女も追いかけてきて、さらに水神の河童が迎え撃つ展開、めちゃくちゃ熱いわ🔥 白い鴉が幸村さんの使いだったっていう伏線回収、痺れたね。あの絶望的な状況で「一番聴きたかった声」が響くの、読んでて鳥肌立った。 そしてラストの水神のカウンター!「クエー」って鳴く河童のインパクトが強すぎて笑ったけど、戦闘のトーンはシリアスで、続きが気になりすぎる。次回、どうなるんだろうな…!