テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
江戸の街。誰もが目を引くような、籠を中心にした行列があった。長崎屋の向いに、着物を売る吉田家があるが、吉田家に養子の娘が来たという。
これには、街のみんなも妖たちもこぞって興味があった。
「坊ちゃん。足元、お気をつけなさって」
「大丈夫だよ、佐助」
「にしてもすごい人ですね」
「そうだね、仁吉。あの気難しい吉田比叡(よしだ ひえい)様が養子を見つけたとあっちゃ、みんな気になるさ」
ゆっくり降ろされた籠の戸が開く。すると、隙間から花菖蒲が漏れ出るように零れていき、花の主が1歩、また1歩と姿を表した。
黒い髪は艶が良く、小柄にしては存在感があり、肌は白粉も塗らずのはずだが透き通るような白さ。幼い顔付きに奥二重。まつ毛は密度が高く、紫根の瞳は伏せれば黒に、顔を上げれば紫に見える。
橙色の振袖を身にまとい、若葉色の帯が色の緩急をつけている。
女性にしては珍しく、眉毛が太いが、それも相まって目力が強く見える。可愛らしいか美人かで言ったら可愛らしいが、その場にいる全員が釘付けになるような存在感であった。娘を見ると、その場にいた多くの人間・妖は
「おぉ….」
と声をあげた。
ひとつ手前の籠から降りてくるは吉田比叡。吉田はどっしりと地面を踏みながら、養子の娘を確認したあと、長崎屋の跡取り息子の一太郎に向き合った。自然と佐助と仁吉は距離を取る。
「若旦那。うちの娘・ゆうという。何かと世話になる」
ゆうは吉田から1歩引いた場所でお辞儀をすると
「若旦那さま。よろしくお願いいたします」
と、鈴が転がるような声で言った。
「歳も近い。仲良くしてやってくれ。では」
吉田の後に続いて、ゆうも向いの吉田家に入って行った。
佐助と仁吉は、ただならぬ何かを感じ、ゆうがくぐった暖簾の先をみていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
10,362
24