キキーーッッッ!!!
「えっ…?」
学校が終わり校門の前で香織と別れた梨子は家から1番近い横断歩道でトラックに轢かれた。
下校中の児童も多かったことから梨子はすぐに発見された。
だが打ち所が悪く、病院行って運ばれた頃にはもう息を引き取っていた。
そして梨子は幽霊としてこの世に留まった。
幽霊とはこの世界に未練を持ったまま死に、成仏しなかった者をいう。
梨子は香織との約束という未練抱え、死亡して幽霊になった。
「香織と私は大人になっても友達だからぁー…、将来は一緒の職業についてぇ、シェアハウスもしたいなー!」
「うん!香織も梨子とだったらシェアハウスしたいなぁー」
だが未練を叶えようも、死んではできないことだった。
幽霊になってしまったら成長もしないし、香織に姿を見せることも不可能だった。
-香織宅-
「香織っ!?梨子ちゃんママから!!梨子ちゃん病院だって!!」
「えっ…?梨子が…?」
「山本病院だって!車出してあげるから行って来な!!」
香織の母の甲高い声が部屋中に響き渡る。
香織は部屋の隅に投げ捨てた靴下を履いて家を出た。
病院の前に車を止めると香織は強くドアを開け走った。
一瞬だけ振り向き、手を振ると「早く行け」と言わんばかりに手を仰がれた。
病院の受付にいる女性に事情を説明して、病室を教えてもらった。
走って息が荒くなったばかりに、受付の女性の香水の匂いが離れなかった。
ガラッ!!
病室のドアを勢いよく開けて、閉めるのも忘れて梨子の所に駆けつけた。
「梨子っ!!!」
「…」
返事も、息の音もしなかった。
香織は声が出なかった。
ただ梨子の両親の涙を啜る音だけが病院を包んでいた。
「香織ちゃん、来てくれてありがとうね。きっと梨子も喜んでるわ。来てもらったのは1番仲の良かった香織ちゃんに梨子の姿を見て欲しかったからなの…。来てもらったばっかりで悪いんだけど今日は帰ってほしいの。ごめんね。また、お葬式には呼んであげるから…。」
「はい…。」
バタンッ
「…」
「死んだかぁ…」
香織は小声でそう呟き、伸びをして歩き出した。
受付の所で香織は母に会った。
「今日は帰ってほしいって。ママが行っても多分同じだよ。」
「そう…。」
車に乗ってまた家に戻る。
走って疲れた足を休める為に靴は脱いで座った。
窓の外には居残りでいつも遅くぬ帰っている同級生達の笑う顔が見えた。
家に帰って手を洗いすぐに自室に篭った。
「今日は塾お休みする?」
ドア越しに母の声が聞こえた。
「うん…」
香織はぼぉーっとして気の抜けた返事しか出なかった。
という一連の流れを梨子は幽霊になった身体で上から見ていた。
「香織…。」
同情するような眼差しで香織を眺めていた。
香織は友達が多くなく、毎日のように梨子と遊んでいた。
だが、最近になって香織は中学受験をすると言い出し、忙しいからと遊ぶ機会も少なくなって来ていた。
梨子の目には、1番の親友を無くして涙も言葉も出ない程に悲しんでいる香織の姿が映っていた。
だが、実際は違った。
「…」
「…ははっ、やっと肩の荷が下りたみたい…。」
「中学受験する意味も無くなったけど…、まぁ受験先の学校も楽しそうだったしこのまま受験でいいかなぁ。受験しないなんて言ったらママ怒るだろうし…。」
香織の独り言に梨子は度肝を抜かれた。
確かに2人でいる時は香織も笑っていた。
「中学受験をするのは私と離れる為…?」
嫌な予感に鳥肌がたった。
「香織ー!ご飯作るから手伝ってー!」
「はーい」
香織はギシギシ音が鳴る椅子から立ち上がって部屋を出た。
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