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「ただいま」
「お帰りなさい。龍聖君、お仕事お疲れ様」
何気ない会話とこの可愛い笑顔。
それだけでホッとする。
昼間、お姉さんと会ってから胸の奥がモヤモヤしたままで……
突然会いに来たことを知ったら、琴音はまた俺に申し訳ないと心を痛めるだろう。
「どうかした?」
「いや、別に何でもない。今日は少し疲れたから」
「そうなんだ……。じゃあ、先にお風呂に入る?」
「ああ、そうしよう。琴音も一緒に」
「えっ、あっ、でも……」
俺は、目の前にいる大切な人を強く抱きしめた。
ずっと……こうしたかった。
琴音の良い香りと温もりを感じ、狂おしい程の愛おしさが俺の中に充満した。
琴音を自分だけのものにしたい。
誰にも触れさせたくない。
なのに俺は……
どうしてあと1歩前に踏み出せないんだろう。
こんなにも琴音への想いが溢れ出しているというのに――
俺が女性として魅力を感じるのは、この世の中でたった1人。
「鳳条 琴音」だけだ――
今日、お姉さんに会って、余計にその思いが強くなった。
一緒に入浴することも夫婦なら当たり前なのかも知れない、なのに、こんなにも鼓動が激しくなって……
湯船に浸かる琴音の恥ずかしそうな顔を、ものすごく可愛いと思った。
その火照った体に触れたくて、俺は指先をそっと伸ばした。
「龍聖君、大丈夫? 何だかいつもと違うよ」
「そう? いつもと同じだよ、何も……変わらない。いつもと同じように琴音が欲しいって思う」
本当は、同じじゃない。
心が騒いで、動揺している自分がいる。
ちゃんとそう認識しているのに……
「あっ、ダメだよ。まだ食事も済んでないのに」
「キスしたい」
俺は、嫌がる琴音の唇を奪った。
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