テラーノベル
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放課後の共用自習室。その一番奥にある、音が反響しにくい「指定席」に3人は集まっていました。
「はーい、注目! 初めてのテストで不安な二人のために、僕が過去問と傾向をバッチリ分析してきました!」
涼架は、ふわふわしたいつもの雰囲気はどこへやら、ホワイトボード(自習室の貸出用)を前に、眼鏡をクイッと上げて「先生」モードです。
「涼架さん、わざわざありがとうございます。中等部の勉強、もう忘れてるかと思ってました」
「失礼だなぁ、滉斗! 僕はこう見えても、藍林檎学園の試験を5年間パスし続けてるんだよ?」
特訓が始まると、涼架の教え方は意外にも(?)的確でした。
英語の単語は、涼架がリズムに乗せて教えてくれる。
数学の勉強中は、滉斗が元貴の隣で、数式の解き方を指でなぞりながら教える。
30分に一度、休憩ということで、涼架が持参した「糖分補給用」の甘いお菓子が配られる。
元貴は、真剣な表情でノートに向き合っていました。少し耳が疲れてくると、滉斗がさりげなく元貴の髪を耳にかけ、遮音用の柔らかな耳栓を付け直してあげます。
(……あ、今の元貴の横顔、まつ毛が長くてすごく綺麗。……じゃなくて、今は因数分解だ、因数分解……)
滉斗は心の中で必死に雑念(元貴への「かわいい」)を振り払い、シャーペンを動かします。
「元貴、この歴史の年号、無理に覚えなくていいよ。この『流れ』さえ掴めば、答えは自然に見えてくるからね」
涼架は、元貴が苦手な暗記分野を、まるでお話を聞かせるように優しく解説します。普段は天然で、二人に「りょうちゃん、しっかりしてよ〜」と言われている彼ですが、いざ勉強を教える姿は、やはり3つ年上の余裕に満ちていました。
「……涼ちゃん、教えるの上手。僕、ちょっとわかってきたかも!」
「でしょ? 終わったら、学園のアイス自販機で好きなの選ばせてあげるからね」
3時間の猛特訓を終える頃には、元貴のノートは達成感でいっぱいになっていました。
「……お疲れ様。二人とも、これなら平均点は余裕だよ」
涼架は満足そうに笑い、二人の頭を同時にわしゃわしゃと撫でました。
「テスト当日はね、ペンが紙を走る音が気になっちゃうかもしれない。でも、その時は隣の滉斗の背中を見て。僕たちがずっと一緒に勉強したこの時間を思い出せば、きっと大丈夫」
「……はい。俺がついてますから」
滉斗が力強く頷き、元貴の手を机の下でそっと握りました。
初めてのテスト勉強は、ただの「苦労」ではなく、三人の絆をより深める大切な時間になったのでした。
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