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ミラエルツ、最終日の朝。
今日も今日とて天気良し。
窓から射し込む朝日は、いつもと変わらず気持ちが良い。
「……はぁ。この部屋ともお別れかぁ……」
この1か月、毎日寝泊まりをしていた部屋。
少なからず、愛着が湧くのは仕方ないというものだろう。
しかし宿屋に泊まっている限り、いつかは離れなければならない日が来るわけで。
……そういえば、私もいつかは自分の家を持ったりするのかな?
何せ不老不死だからね。ずっと宿屋暮らしというのもあり得ないだろうし……。
家を持つとなると、それは私の旅が終わったときになるかな?
つまりは神器を作成し終わったとき――
……なんだけど、別に神器はひとつしか作れないとは限らないからね。
そうなると、家を持つのはいつになることやら……。
もしくは王都なら王都に家を構えて、あとはそこを拠点に行動をする……っていうのも良いかもしれない。
王都の家がどれくらいの値段なのかは分からないけど、稼ぐ方法なんていくらでもありそうだし。
「夢は広がるけど、まずは一歩一歩ずつ……っと」
そうつぶやきながら、部屋の中をひとつひとつお片付け。
立つ鳥跡を濁さず……って言うからね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おはよー」
「「おはようございます」」
部屋の前で、いつものように三人で合流する。
ここで合流するのもこれが最後になるのかな? いちいち最後が続いてしんみりしてしまう。
「アイナさんとルークさんとここで挨拶をするのも、これが最後なんですねぇ……」
「そうですね。何ともしんみりしてしまいます」
「あ、二人もそうなんだ?」
「アイナ様もですか?」
「何せ、1か月もここにいたからね。
色々あったし、思い出もたくさんだよ」
「確かに、そうですね。
この1か月の思い出は、わたし、一生忘れませんから!」
エミリアさんが、そんなことを言い始める。
そういうことを聞いちゃうと、しんみり具合に拍車が掛かってしまうんだよなぁ。
「まぁまぁ、先はまだありますから。
次の宗教都市メルタテオスと、その後の王都。まだまだエミリアさんにはお世話になりますよ!」
「ふふふ、そう考えると楽しくなってきました!
アイナさんたちと、もっと思い出を作れるんですから」
……何だ、この可愛い生き物。
私と同性だけど、こうも違うふうに成長するものか……。
もしかして異世界パワー?
……なわけはないか。
「そうですね、もっと思い出を作りましょう!
……さて、それでは現実に戻って出発の準備をしますか。
荷物は私のアイテムボックスに入れていくので、入れたいものは出してください」
「はぁい。
それではわたしは、この荷物を……」
エミリアさんは自分の部屋のドアを開けて、近くに置いていた荷物を出してきた。
「それじゃ入れていきますね。
すぐ使うものとかお金は持っておいてください」
「はーい、大丈夫でーす」
「……っと、ちょっと増えましたかね?」
「ああ、そうですね。
本とか、ちょっとしたものとか買っていたので」
「なるほどなるほど。……はい、おしまい。
ルークも準備は大丈夫?」
「はい、私はこの荷物をお願いします」
「はいはい、っと。
ルークは……増えたのは、買った鎧くらいかな?」
「そうですね」
「いくらでも持てるから、欲しいものがあったらどんどん買っても大丈夫だからね?」
「はい、分かりました。
しかし旅路ですから、なかなか物を増やすというのはどうにも」
「……普通の旅だと、そうなんだよね。
私がアイテムボックス持ちだからアレなだけで……」
「そういえばアイナさんって、錬金術と鑑定と収納がおかしいですからね。
レベルはおいくつなんですか?」
「えっ」
「まぁまぁ、エミリアさん。そういう詮索は無しですよ」
ルークが穏やかに注意する。
うーん……でもさすがにこれだけの付き合いをしているわけだし、それくらいは教えても良いのかな?
「……えっと。
他の人に黙っててくれるなら、教えても良いんですけど……」
「大丈夫ですか? アイナ様」
「まぁ隠しておきたいことは他にもあるからね、
それくらいなら、まぁ」
「無理をしないでも大丈夫ですが、アイナさんが教えてくれるというなら是非!
私の予想だと、レベルは70くらいかなって思うんですよ!」
「ははは。エミリアさん、レベル70なんて伝説級じゃないですか。
私はレベル50くらいだと思いますね」
ルークも実は、案外聞きたそうな様子だ。
しかもレベルの予想については、何やら自信満々である。
そういえばユニークスキル『情報秘匿』を使っているから、他の人から見ると、私の錬金術ってレベルが低いんだよね。
折角だし、このタイミングでルークの言った50くらいに更新しておこう。
それじゃ、一般スキルだけちょっといじって……よし、こんな感じで!
「では鑑定のウィンドウを出しますね。
一般スキルのところだけですけど」
「どきどきです!」
「緊張しますね」
──────────────────
【アイナ・バートランド・クリスティア】
一般スキル:
・錬金術:Lv99(Lv51)
・鑑定:Lv99(Lv52)
・収納:Lv99(Lv50)
──────────────────
「はい、どうぞ!」
「むむむ……?
アイナさん、何だか表記が見慣れない感じになってるんですけど……?」
「50くらいのと99が、ごちゃ混ぜになっていますね」
「えっと……ちょっと訳ありで、対外的には括弧の中のレベルで見えるのです。
で、本当のレベルは外の数字」
「へぇ……?
そうすると、アイナさんの錬金術は対外的にはレベル51に見えるけど、本当のレベルは99ということなんですね。
なるほど――……って、はぇ?」
「……99?」
「うん、3つともレベル99……」
「…………」
「…………」
「…………ま、まぁ、なんというか……」
「…………そ、そうですね。アイナ様ですし……」
「他の人に言っちゃダメですからね?
いざとなれば、50くらいの方でシラを切り通しますからね!?」
「……アイナさん、さすがにこれは誰も信じられないと思いますよ……」
「私、すごい方をお護りしているんだな、と。
そんな思いで胸がいっぱいです……」
……何だろう、この感じは懐かしいぞ。
最近は錬金術で何かを作っても軽く流されるけど、ここまで引かれるのは少し懐かしい。
「一般スキル以外のところも、恐ろしいことになっていそうですよね……」
「ははは……。そこは見ない方が良さそうですね……」
ちなみにルークは、レアスキル『不老不死』のことは知っているけど、それ以外のところは知らないんだよね。
さすがに、神器作成のことを話すときになったら言うかもしれないけど。
……でも、それはまだ先のお話なわけで。
「とまぁ、何やらこんなレベルですが、引き続きよろしくお願いします」
「はぁい。少し驚きましたけど、さらに尊敬するようになりました!」
「私もです。アイナ様にお仕えすることが天命だったように思えてきました」
「ああ、うん……。
でも、これからも今まで通りの感じでお願いしますね、本当に」
「「はい!」」
実は途中から、話すことにして失敗したかとも思ったんだけど――
……嫌な方向に話が進まなくて良かったかな。
これで態度を急に変えられていたら、正直かなり落ち込んでいたと思う。
やっぱりこの二人は良いよなぁ……。大好きだー。