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「あははははっ! やめろって、蜂楽! くすぐったい……っ、あははっ!」
トレーニングルームのマットの上で、蜂楽は潔を押し倒すような姿勢で、脇腹や脇の下を容赦なく「こちょこちょ」と攻め立てた。潔は涙目になりながら、親友同士のじゃれ合いだと思って必死に身をよじって笑っている。
「えー、もっと笑ってよ潔! ほらほら、ここも弱いんでしょ?」
「ひ、あはっ! ……っ、待っ、……ぁ、……っ!!」
最初は純粋な笑い声だった。けれど、蜂楽の指先が、昨夜から過敏になりきっている潔の肌を執拗に刺激し続けると、潔の喉から漏れる音色が徐々に変質していく。
「あ、は……っ、……ん、んぅ……っ、は、ぁぁ……っ!!」
極限までくすぐられた人間特有の、呼吸が荒くなり、笑いと悲鳴が混ざり合ったような、ひどく艶っぽい「甘い声」。
潔は酸欠状態で顔を真っ赤にし、くねくねと腰を揺らしながら、蜂楽の手を力なく押し返そうとする。その姿は、端から見ればどう見ても「何か」をされているようにしか見えない。
「……っ、ふ、あ……っ! 蜂楽、……もう、……むり……っ、……んっ、……あ、あぁぁっ!!」
その時だった。
「潔っ!! 大丈夫か!!!」
「……潔の声、……今、すごかった……」
ドガァン!! とトレーニングルームの扉が勢いよく開き、顔面を蒼白にした玲王と、瞳をこれ以上ないほど見開いた凪が飛び込んできた。二人は潔の「切迫した声」を廊下で聞き、何者かに潔が襲われていると本気で勘違いしたのだ。
「蜂楽、テメェ!! 潔に何……って、え?」
玲王が怒鳴りながら駆け寄ると、そこには床で涙目になって「はぁ、はぁ……っ」と肩を上下させている潔と、その上に乗っかって楽しそうに指を動かしている蜂楽の姿。
「……あ、玲王ちゃんに凪ちゃん。おはよー」
「お、おはよー……じゃないだろ!! 潔がそんな、今にもイキそうな……いや、ひどい声出してたから、俺たちは……っ!!」
玲王は赤くなったり青くなったりしながら、潔の乱れたジャージを直そうと手を伸ばす。
「……潔、……大丈夫? ……蜂楽に、何されたの?」
凪は、昨夜の自分の「余韻」を上書きされたような気がして、少しだけ不機嫌そうに潔の顔を覗き込んだ。
「あ、あはは……。……違うんだ、二人とも……。……蜂楽が、くすぐり……っ、してきて……。……なんか、極限までやられたら……変な声、出ちゃって……」
潔は真っ赤な顔で、涙を拭いながらゴニョゴニョと釈明した。
蜂楽はケラケラと笑いながら、「そうだよー、くすぐりしてただけだよー! 潔、リアクションいいから楽しくなっちゃって」と、悪気ゼロ(を装った)笑顔でピースサインを作っている。
「……くすぐり、……だと……?」
玲王は、その説明を聞いて、逆に恐ろしいことに気づいた。
(くすぐられただけで、あんなエロい声が出るのかよ、今の潔は……っ!!)
昨夜からの「上書き」の連続で、潔の身体が全方位に対して、もはや「刺激」そのものに弱くなりすぎている。
玲王、凪、そして蜂楽。三人のエゴイストたちは、互いを牽制し合いながらも、赤くなって息を整える潔を見つめ、全く同じことを考えていた。
(……これ、他の奴らに見せたら、マジで終わる……。……俺が守って(独占して)やらないと……!)
潔の「無自覚な怪物」っぷりは、もはや笑い事では済まされないレベルまで加速していた。