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臣桜
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BrownSugar
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#オフィスラブ
猫塚ルイ

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眠気のとれない眼で
パソコンのスクリーンを見つめる
斜め後ろの席では
何事もなく業務に勤しむ伊藤さん
と、
突然伊藤さんの着座する椅子が回り
伊藤さんがこちらを向く
目が合ってしまった
伊藤さんを監視していたみたいで気まずい
だが
伊藤さんはそうは受け取らなかった
「もしかして水川さんにもメール届きました?」
「……え?」
「何の話?」
開口一番
伊藤さんの口にした言葉の意味を分かり兼ねた
どうやら
飛び込んで来た特大ニュースに
思わず情報屋の血が滾り
言いたくて居ても立っても居られず
速報として告げねばとの使命感から
こちらを振り向いたようだった
「鈴木さん、懲戒解雇ですって!」
「……」
ボーっと伊藤さんを横目で眺めていただけだった
突然振り向き
目を見開いて
あからさまに大ごとな様子で
泡を吹いて話す伊藤さん
その突然のオーバーアクションに
心底驚き
一気に目が覚めた
まだ心臓がバクバク言っている
(ついに確定してしまったのか……)
(ということは純也も……)
そうなることは予想出来ていたが
下されたのは最も重い懲戒処分
いざ確定の報を聞くと
何ともいたたまれない
実際
そんな悠長なことも言っていられない
夫も同様の状況にある
決して対岸の火事ではない
昨日純也は
離婚後のお金の心配をしているように見受けられた
ある程度処分の察しがついていたのかもしれない
「えーっと……」
業務時間中にもかかわらず
夢中になって語る伊藤さん
情報共有されたメールを
読み終わらないうちに話し出したのか
懲戒解雇の速報を私に伝えると
再び自身のパソコンに向かい
そのままメールを読み漁る
そして
メールを読みながら
私に背を向けたまま
メールの続きを共有してくれた
「刑事責任までは問われなさそうですね……」
「ただ……会社は損害賠償請求に向けて動いてるっぽいです」
「損害範囲と損害額については継続して調査中」
「被害の回復、調査にかかる工数、社内規則とチェック体制の見直しなど……めっちゃ広範囲に波及してますねこの件」
「社内外への広報対応の可否も検討中みたいです」
いよいよ以て
純也にも処分が下るかもしれない
処分に止まらず
会社は損害賠償請求に動いている
その額は
外野の人間には伺い知れない
下手したら多額の損害請求を受けるかもしれない
愛し合って結婚
曲がりなりにも連れ添った間柄
情が無いわけではない
それでも
この事案が離婚協議に強く影響しそうなことに
一抹の不安も覚える
私への愛情がなかろうと
金銭的な支援を求めて
私との関係維持を求める気がしてならない
昨日の感触からはそう伺えた
***
「いやぁ~結構大ごとになっちゃってますね」
昼食時
共にランチを食べながら
伊藤さんは色めき立っていた
スキャンダルとはいえ
既知の同僚の不幸話でもある
嬉々として話すのもどうかと思うが
伊藤さんに悪気はないのだろう
鈴木さんが嫌いなのではなく
噂話が好きなのだ
神崎さんや小山田さん然り
伊藤さんに限ったことではなく
女とはそういう生き物なのかもしれない
しばらくランチを一緒に出来ていないが
神崎さんや小山田さんは
そう楽観的にはいかないだろう
法務部の神崎さんは直撃
就業規則にも関わる事だけに
処分に係る今現在も
処分が済んだ後も
回復や改善にと多大な工数を割かれるだろう
人事部の小山田さんも
懲戒解雇となれば煩雑な手順に工数を割かれ
その先には穴埋め人事へも動くことになるだろう
そうなれば
二人への悪影響は免れない
会社だけに止まらず
私だけに止まらず
周囲にも傷跡を広げながら
この事態の収束地には
一体どんな結果が待ち受けているのだろう
純也には
申し訳ない気持ちもある
後ろめたい気持ちもある
でも
私と我が子の未来が掛かっている
私も決断しなければならない
非情であろうとも
冷徹になりて
成し遂げなければならない
その為にも今は
最善と思しき決断を重ね続けるしかない
目前が険しくとも
結果の確率が少しでも上がる選択を——
私は
母親と対峙することを決意した
離婚に向けた報告と
証人としての署名を依頼する為に
それが
離婚届の証人を選定する工程において
並んだ選択肢の中で
見据える結果に辿り着く確率が
最も高い選択肢だから
コメント
1件
第90話読み終わったよ〜!!😭✨ 伊藤さんの突然のオーバーアクション、めっちゃ目に浮かぶんだけどwww でもその裏で主人公ちゃんの心臓バクバクしてる感じとか、純也くんへの複雑な想いとか…胸がぎゅってなった🥺💔 最後の「母親と対峙することを決意した」で鳥肌…!確率を選ぶって言葉、すごく重くて深いね。次どうなるのか気になって仕方ないよ🔥 ゆめかも応援してる!!