露日です、露日。ふわふわした雰囲気のふたりが好きです。
ロシアさんのキャラがまだ深掘りできてないんですよね…。解釈違いだったらごめんなさい。
個人的には日本さんの一人称揺れに萌えを感じます。
自分と日本という国の接点は、あまりない。
世界を二色で分けた時、彼がいるのは青い世界。
中国のように何か共有できる思い出があるわけでもない。
数年前にG8からも弾かれてしまった。
それに…
「日本。」
「あ゛?」
そう呼ぶだけで、不機嫌そうな顔をしたアメリカがすっ飛んでくるものだから、プライベートどころか仕事での繋がりすら希薄。
そもそもの思想が違うのだ。仕方ない。
自分にしては大人しく、このままずっとぼんやりと認識しあうだけの関係なんだろう、それならばそれでいい、と一種の諦めを抱いていた。
のだが。
「日本、飲めるか。」
キッチンから戻ると、日本はソファの上で舟を漕いでいた。
「んゆ……。」
返事なのか何なのか、よくわからない。
小さな手が伸びてきたので、大方はいとでも言ったつもりなのだろう。
行きつけのバーで飲んだくれていると、日本に声をかけられて、気付けばこのザマだ。
これでは彼が目覚めた後切腹しかねない。
「あれぇ〜?ろしあさん…?あいがとうございます…」
もごもごと回りきらない呂律のまま何かを喋っているらしい。
その柔らかそうな太ももに目がいってしまい、慌てて布団をかけてやった。
「悪ぃがうちにはベットねぇんだ。もう寝ろ。」
自分のでかい体を収められるようなベットを買おうと思えば、大きめのソファベットを買った方が安かったのだ。
日本ならそんな悩みとは一生無縁そうだが、と華奢な肩に目をやる。
食べるのが好きだと公言する割には細い腰に、鶴のようにしなやかな手足。
ほんの少し強く抱きしめるだけで、ぽっきりと折れてしまいそうだ。
そこまで考えて、またその体を見つめていたことに気付き、タバコの箱を見せ、ベランダに出た。
酔い覚ましにはちょうどいいか、と換気も兼ねて窓を開ける。
日本ははまだ、何やらぶつぶつ言っているようだ。
ライターのキャップを開き、インサイドユニットをゆっくりと引き抜く。
少々着火が面倒なオイル式の古臭いライターは、頭を冷やすのには適任らしい。
フェルトパッドをめくってオイルを注ぎ、カムの向きを確認しつつユニットをケースに戻す。
フリントホイールを回転させると、カチリと音がした。
不安定に揺れる炎にフィルターの先を近付ける。
キャップを被せ、ライターとタバコを持ち替えた。
「…あっ!わかりましたよぉ〜……」
初夏特有の涼風が頬を撫でる。頭の芯から冷えていくような気分になった時、そんな声がした。
「…何がだ?」
薄暗い部屋の中、月明かりを浴びた日本が随分楽しそうに足をぶらぶらと遊ばせている。
「めーせきむです、めーせきむ…」
言葉の後半は、むにゃむにゃと世闇に紛れていった。
『明晰夢』。
かろうじて聞こえた単語。
「…意味わかんねぇ……。」
いや、言葉の意味はわかるが。
前後の関係が全くもって不明だ。
明日には全てを忘れていそうな日本を好きに喋らせて、目では薫る紫煙を追いかける。
「ふふっ、我ながらいい夢…」
「…何なんだ、さっきから夢だなんだの……。」
日本がケラケラと声を上げた。
「だってろしあさんが私とふつーにしゃべってるわけないですもん!」
見るに耐えない足取りで、日本がこちらに近付いて来る。
「危ねぇな、もう寝ろって…。」
冬ではないといえど、酔っ払いにこの寒さは堪えるだろうと制止をかけた。
差し伸べた手をなぜか急に掴まれる。日本が胸元に飛び込んできた。
「綺麗な目…お月様みたい……。」
夜空を切り取ったような、濡れ羽色の瞳。
日本の腕が肩を這い、首にまとわりついた。
素数。素数だ。素数を数えろ。
「好きです、ろしあさん。」
1、…あ。違う。
「接点なんてほとんどないですけど、ずぅっと前から好きでした。」
日本が俺にぶら下がるようにして、乱暴に唇を食む。
ぬるりと小さな舌の蠢きを感じ、これ以上は、と身を離した。
日本がぺたん、と座り込む。
「おい、大丈夫か。」
「…ふはっ、……。ふふふっ………。」
そしてなぜだか笑い出した。
笑い転げる日本をなだめて部屋に入れ、並んでソファに腰を下ろす。
本格的に眠くなってきたのか、日本は俺にもたれかかった。
日本の薄い肩が小刻みに揺れる。
くふくふという笑い声がした。
「…うちの国にはねぇ〜、?夢に出て来る人は『夢路』って道を辿って、自分に会いに来てくれたんだ、って言い伝え?みたいな言葉があるんです。」
まぁ迷信ですけど、と言い、日本はまた笑った。
「…すまん、日本、その……」
「んん〜…ぼくのもーそーに謝られてもなぁ……。」
また夢の話か。
本当に夢を見ていると思っているらしい。
「……。」
感じていた申し訳なさが、徐々に苛立ちに変わっていく。
「…俺も、ずっと好きだった、お前のこと。」
「えぇ〜?両思いオチですかぁ〜…ぼくも衰えたなぁ〜…。」
こいつは夢で。自分の頭の中で。
それだけで終わらせるつもりだったのか。
「…ん゛っ………。」
触れるだけの、軽いキス。
綺麗な感情だけが伝わるように、唇を重ねる。
「……んふふっ…。流石にこんな夢見たら、ろしあさんに悪いですねぇ〜…。」
「良い。俺が許す。」
「だからぼくのもーそーに言われてもなぁ……。」
日本は幸せそうにゆらゆら揺れている。
今自分が肩を一突きすれば、倒れ込んでそのまま朝までぐっすりだろう。
そしてそのまま、きっと全て忘れてしまう。
「…ごめんなさい、ろしあさん。やっぱりぼく、あなたが好きです。」
触れられる距離に日本がいて。
ふわりと俺の名前を呼んで、笑って。
この幸せに、どう抗えよう。
「すまん、俺も。愛してる。」
夢と現実の間の、静かなひととき。
幸せな時間を閉じ込めるように、休みなく笑う唇にフタをした。
(終)
コメント
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やぁ〜、、やっぱ神ですね。なんだろう。広角広げさせてくるのやめてもらっていいですか?(失礼) 本当にこのほんわかした雰囲気だいすけです。酔っぱらい祖國に愛の告白をされる露さん。可愛い。そりゃあ素数数えたくなってしまいますよね。わかります。これにはプッチ神父も萌え。かわよい作品ありがとうございます😭