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いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

205 - 第205話*坪井side③特別な夜に俺を想っていてほしい*33

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2025年06月04日

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隼人に言いながら、本当に? と自分に問いかけた。女ってなんだろう。

自分を縛りつける嫌な思い出の中心で、手のひらで転がして思い通りになれば心の底で嘲笑って気分を良くしてくれるもの。


(でも、ひとりになるのは嫌なんだ……夜って特にバカなことばっかり考えるだろ)


その”夜”に、より深く触れ合える相手は、隼人たち気の許せる友人ではなくて。肌を合わせ快感をあたえてくれる女たちだった。

だから嫌いじゃないと、好きだと思い込んでいたというのか。


「……え、嫌いなの? 俺、女が嫌いだった? マジで?」


自らを指差して眉をハの字に下げながら、唇の端を僅かに上げて隼人に聞き返した。なんとも弱々しい声で、聞き取った耳の機能を疑いたくなる。


隼人は、信じられないとでもいうように、ゆっくりと頭を振った。


「自覚ないのこえーって。お前の言ってる好きな子って、女を道具扱いしてたお前が、そう出来なくなった相手ってことか」


へえ……、と。 髪を掻き上げ目を細めて、坪井は普段はバカげた態度を取るばかりの隼人をまじまじと眺めた。


(物は言いようだな、道具ね……確かに、女ってバカだなって見下して精神保ってたんなら、道具だな)


女に対してずっと嫌悪感を持っていたのだから、嫌いなんだとろ、と。そう言われれば、その通りじゃないか。

なぜ思い至らなかったのか、その方が不思議な気さえしてきた。


触れて、欲情して、快楽に身が包まれて。けれど欲が果ててしまえば例外なく押し寄せる吐き気は”それ”が原因だったのだ。

辻褄が合う。見下していることも、傷つけて平気だったことも、嘲笑うことも何もかも。


あの頃からずっと、女という生き物が嫌いだったのだ。


目元に手を押し付けて、思わず漏れ出たのは小さな笑い声だ。


「はは……、お前は単純でバカだけど、そーゆう奴だったな。だから10年以上も付き合い続いてんのかな」

「な、なんだよ急に……そりゃ、俺もお前が1番付き合い長い連れになってきたけど!」


目元を押さえつけていた手をゆっくりと離し、隼人を見ればモジモジと身をよじらせて照れているような動作をしていた。「気持ち悪いって」と言いながら、頭を引っ叩く。


「痛いだろが!」と喚いた隼人は、けれどすぐに「……こんなとこでする話でもねぇけどさぁ」と、もごもご言った後咳払いをした。


「真面目な話、俺はあの頃のお前には同情してるぞ」

「あの頃って」

「青木たちのこと、ちょうどおばさんのことでゴタゴタしてた時じゃん」


「あー……、そうだったかな」と、呟いた坪井はカウンターテーブルを背もたれにして、不規則に点滅するカラフルなライトを見上げた。


青木とは、例の中学の頃一悶着あった坪井の初恋の女だ。


「元々の、なんつーの? お前の逃げ癖も少なからず原因だと思うけど、あれは……女が無理になっても仕方ないなって思って俺は見てたぞ」

「へー、初耳。今更どうしたの」

「……捻くれた女の扱い方も、何て言えばいいかわからんかったとこある。こいつ最低だなって思ってても、言い出しにくかったてゆーかな。お前の言う通り今更だけどな」


(……だからって、人を道具にしていい理由にも傷つけていい理由にもならないんだよな)


騒がしく流れる音楽が、ただの雑音になっていくのがわかる。それだけ、この会話が坪井を揺さぶっているということか。


下唇を噛んだ後、軽い雰囲気を忘れないように、いつも通りを心がけて声を出した。


「まあ、言ってもあれいつ? もう親に頼る歳でもないじゃん、家のこと関係ないって」


はは……っと、語尾に乾いた笑い声を付け加えておいたら。


「調子乗んなよ、中学生男子なんてガキだよクソガキ! 親にイライラしたもんをぶつけんのも甘えだろ」


意外にも勢いよく隼人が言い返してきた。


そして、言われても経験がないものだったからかピンと来ず、坪井は曖昧にうなずいた。


「八つ当たりなんてなぁ、母親くらいにしかできなかったって。少なくともあの頃の俺は!」

「……そんなものなの?」

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