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「今週末さ、みんなで遊園地行かね?」
気だるい午後の光が差し込む昼休みの教室。
須藤くんが自分の机にどっかと座り、頬杖をつきながら放ったその一言。
それは凪いでいた僕の日常に、小さな、けれど確かな波紋を広げた。
「いいじゃん、それ。賛成!」
向かいの席の加賀くんが、待ってましたと言わんばかりの笑顔で身を乗り出す。
僕はその輪のすぐ隣で、母さんが作ってくれたお弁当の卵焼きを口に運んでいた。
箸を動かす音さえ響きそうなほど、僕の中ではその単語が異質に響く。
遊園地
それは僕にとって、遠い異国の出来事のような縁のない場所だった。
原色のポップな看板、絶え間ない音楽
そして何より、見ず知らずの他人が放つ圧倒的な「陽」のエネルギー。
人が多くて、騒がしくて
きっと一日中神経を尖らせて……帰る頃には泥のように疲れているに違いない。
そうやって、自分には関係のないことだと心のシャッターを下ろそうとした、その時だった。
「水瀬も来る?」
不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
顔を上げると、天馬くんがごく当たり前のこと
例えば「今日暑いね」とでも言うような自然な顔で、僕の目を見ていた。
「えっと…ぼ、僕……?」
「うん。せっかくなら四人で行こーぜ」
あまりにも迷いのない誘い方。
拒絶の余地なんて微塵も感じさせないその真っ直ぐな瞳に、一瞬だけ言葉を失う。
「い、いや…僕なんかいたら、その、空気悪くしちゃうし……」
「なんで?」
食い気味に返された言葉に詰まる。
「なんで」って言われても、理由はいくらでも思いつく。
僕が暗いから。
盛り上げ方がわからないから。
でも、それを口にする前に、須藤くんが追撃してきた。
「水瀬、気にしすぎだって!人数多い方が絶対楽しいじゃん」
「そうそう。水瀬ってさ、ああいう場所だと絶対リアクション面白そうだし。見たいわー、ビビってる顔」
加賀くんがニヤニヤしながら勝手なことを言う。
いつもの僕なら、ここで曖昧に笑って身を引いていただろう。
けれど、天馬くんだけはじっと僕の返事を待っていた。
断りづらい、それは事実だ。
でも、それ以上に────
天馬くんと同じ景色を見て、同じ音を聞いて、同じ時間を過ごす。
そんな「普通」の特権を、少しだけ、手に入れてみたいと思ってしまった。
「…じゃ、じゃあ……行きたい…」
消え入りそうな声で小さく頷くと、天馬くんの表情がぱっと華やいだ。
「よっし決まり!じゃあ土曜な、楽しみにしてるわ」
その屈託のない笑顔を見た瞬間。
胸の奥の、自分でも気づかなかった深い場所が、ほんの少しだけ軽やかに浮き立った。
◆◇◆◇
そして迎えた休日
駅前の待ち合わせ場所に現れた三人は、学校で見るよりもずっと眩しかった。
「おーい、水瀬!こっちこっち!」
#シリアス