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第二章「狂い出す歯車」
9月4日8時46分
両角は今日もまた薄暗い部屋にテレビを灯した。昨日と同じ番組のニュースをつけ今日は何もないと思い深いため息を吐きそのまま朝食の準備へと励んだ。昨日のあれは夢だと安心しきった途端。
「それでは朝のニュースを報告します。今日の今朝方、香烙羅町(からくらちょう)の北、南香烙羅公園に頭と腕と足の遺体がキャリーケースに詰め込まれている所を近辺に住む住民の方が発見しました。痛いはこの公園の近辺に住む影杉 未奈(かげすぎ みな)さん30代女性だと判明致しました。依然、体の遺体は見つかっておりません。発見者はショックのあまり吐き気を催し気絶したとの情報です。」
「またですか。」
「でもなんで今日は北と南なんですか?」
「確かに!東と西は?」
「香烙羅公園は北と南しかなく犯人は上手く四肢を分け北に頭を置いたのだと思います。」
「北枕のようなものなんでしょうかね」
「それはどうでしょ。」
「俺なんざ毎日北枕やで!」
この言葉と共にみんなは笑ったと思っていたがやはり両角の顔だけは青冷め吐き気を催しトイレへと駆け込み嘔吐した。
同日8時45分
森下警察署 会議室
「起立!!」
「「はい!!」」
「礼!着席!!」
刑事一同は鷹島の命令に従い礼をし座席に座った。
「今日も同じ殺人だ。公園キャリーケース殺害事件の犯人を今日こそ見つけ出すぞ!いいな!!」
「「はい!!」」
武と悠哉は他の人とは違い鬼のような形相を見せ咆哮を放つかのように返事をした。
(今日こそはその姿を突き止めてやる)この想いと共に武と悠哉は捜査へ身をうつした。
同日12時
烏間県立病院
両角は待合室で携帯をいじって名前を呼ばれるのをずっと待っていた。携帯には公園キャリーケース殺害事件の内容を見ていた。
(今までで23人も同じ殺害の仕方をしている。体の遺体が未だ一つも見つかってはいない。きっと……)
両角は事件の詳細と20人以上の殺害された被害者の欄を目を細めながら一つ一つ見ていた。
「両角生喜子さん!第1検診室にお願いします!」
「はい!」
両角は若い女性の先生に呼ばれ第1検診室へと向かう。
(生喜子さんだなんて、、、女性みたいな名前ね。)と先生は思った。
「やぁ、八ツ橋先生。」
「久しぶりだね。」
先生の名前は八ツ橋 美咲(やつはし みさき)先生。30代女性。両角の精神科担当医である。
「さてさて。ここからは他の医師の立ち入りは不可能だ。スマンが1度ここを出て言ってくれないか?」
「はっ、、、はい。」
八ツ橋は周りにいたほかの先生に威嚇をするよう目を尖らせ外に出しそのまま立ち上がり準備へと赴いた。
「今日も同じ検査ですよね。」
「そうだよ。ほかの事やったらあなたの両親に背くことになるからね。私は約束と期待は守る質でね。」
いつもやる検査は採血。頭と脳のX線検査。カウンセリング。この方法で検査される。これは幼い頃から父と母が決めたことで両角は何一つ知らない診断である。なので両角は「体が弱いから」や「健康診断の一環」だと思っている。
「これで診断は終了です。次の診断は約1ヶ月後なのでここで言い残したことが無ければそのまま終わりとなります。」
「あっ、ひとつ、、、」
両角は事件のことを相談しようとしたら胸には迷いが壁を作り言うことを妨げた。
(もし言ったら僕は通報され警察行きかも。日常が、、、)
「やっぱりなんでもないです。すみません。」
「それではこれで終わりです。お疲れ様でした。」
「はい。ありがとうございました。」
両角は俯いた顔を見せながら部屋を出た。
「ちっ、あと少しでアイツが誰を殺したのか知れたのに。」
先生は1人だけの部屋でこっそりと一つの言葉を吐いた。
同日 18時
武と悠哉は殺害された人物の身近に共通の白髪の人はいたかを探していた。
すると、武の細めていた重たい目が一瞬で開いた。
「見つけた!!白髪の人を!!」
悠哉もその言葉に驚きを隠せず慌てて武の元へ近寄る。
「本当か!!」
「あぁ。山陰 孝(やまかげ たかし)48歳。」
「でもなんでこんなことをするんだ?」
「過去のデータを見るに10年前の同年会でみんなにバカにされ腹が立ち近くにあったワイン瓶で同級生の1人を殺害したというデータが残っております。」
「その復讐か。」
「そういうことです。」
「武、今すぐ向かうぞ。犯人を野放しにしておけない。」
「はい!!」
武と悠哉は鷹島に許可を取りパトカーに乗り込み山陰の逮捕へと向かった。
同日21時
両角は全てを終わらせいつもの席でぐったりしている。ニュースはつきっぱなしのままであり、最近の彼は詰め込みすぎて肩が下がり目は眠気を誘っていた。
ニュースは一つの報道を言い放つ。
「緊急速報です。先程公園キャリーケース殺害事件の犯人を逮捕したとの情報が入りました。逮捕されたのは烏間町住在の山陰 孝容疑者48歳です。」
「へぇ?」
両角はそのニュースを聞き一瞬で目が覚めた。全てはまぐれだったのだと思い重荷が降りた。そう思うとすぐさま明日の予定を考える。
「明日は朝イチから花壇の草むしりと花植えだな。もう寝るか。眠てぇし。疲れたし。」
両角はいつもより気軽そうだった。
これからの道のりも知らずに。