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ななはま
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パスタ🍝
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僕は翔、今日は柄にもなくバーに来ている。
何故か吸い寄せられるように来てしまい、ミントの味のするノンアルコールのカクテルを蜜漬けのオリーブと生ハムをつまみながら飲んでいる。
吸い寄せられるように入ったバーは、僕の愛するご主人様、首領さん(マスター)に初めて連れてきて貰ったお店で色々と思い入れがある。
それももう6年前の話でその6年間の間にバーのマスターさんはお孫さんに代替わりをしていて今のマスターさんは僕と同じくらいの年齢らしい。
バーテンダー
あの、お客様?
翔
…?
バーテンダー
その、先代のおじいちゃんが言っていた方そのものだと思って…
翔
どうかされましたか?
バーテンダー
小柄で明るい常連さんがいて、その人がとても綺麗な美人さんを連れて来たと前に言ったことがありまして…
白い肌に綺麗な銀髪、珍しい紫の瞳を持っていたとか…
翔
どんなお酒を飲んでいましたか?
バーテンダー
今日お客様が注文されたノンアルコールのモヒートを。
失礼ながらご本人様かと…
翔
ふふ、ご本人様ですよ。
反応が可愛らしいもので、少し意地悪をしてしまいました。
バーテンダー
その、僕も当時下積みとして裏で材料の仕込み作業とかをしていたんです。
その時、お客様はまだ顔に軽い傷を負った状態で何があったのかと心配で…
翔
心配してくれてありがとうございます。
ここは僕の護衛区域なので、普段明るい時間帯に散歩をしているのでよくこのお店を横切るんです。
バーテンダー
その、ここには2人きりですしおこがましいのはわかっています。
その小柄な常連さんとどういった関係でそこに至るまでの経緯を教えて欲しいんです。
翔
ふふ、良いですよ、バーテンダーさん。
今日は美味しいお酒とおつまみがあって気分が良いので。
……………………………………………
…僕は翔。
親への復讐を果たし、実家とも完全に決別したが、従兄弟の栄翔君だけとは連絡を取っていた。
簡単に言えば私利私欲で僕を本家から絶縁し僕の母親を奪い本家の資金を賭博て使い果たすという僕の地雷を踏み荒らした父親に復讐をしたのだ。
勿論、手荒な真似はしていない、博打で分からせただけ。
ただ20歳から3年間僕は復讐の為だけに生きてきたので無気力状態なのだ。
だから刺激を求めて裏社会の人間の経営する違法賭博場に入り浸る生活を送っていた。
なんだか馬鹿な人間ばかりで勝つことも容易になってしまった。
傍から見れば賭場荒らしでイカサマさえ疑われるだろう。
勿論イカサマを疑われる。
裏社会ではイカサマをしていた事が有罪なのではない、疑われる事こそ有罪なのだ。
銃口を向けられてあぁ、命は終わるんだ、私利私欲の為に生まれて復讐の為だけに生きて価値なんて無かったからここで派手に散るのも良いかもしれない、なんて思った。
でも、燃え尽きる命こそ美しい、生き延びる為だけに煌々と輝く命が綺麗でたまらなかった。
銃口を向けたそいつは隙だらけで銃を奪うには十分な隙があった。
だから銃を奪い取り、そいつを撃ち殺した。
血飛沫が上がって顔にまだ温かい血液が飛びついた。
銃を奪い取り、銃口を向けると何か命乞いをしていたっけ?
これこそ生き延びるために煌めく命なのだろうと半ば無理やり結論付けた。
殺して返り血を浴びた瞬間僕の中の何かが外れた音がした。
この手で煌めいて消えゆく命を見届けたい。
そう思った。
銃の持ち主からよく手入れされた刀を拝借し手始めに賭場を運営していた人達を皆殺しにした。
現場は傍から見れば阿鼻叫喚の地獄でも僕からすれば煌めくものを破壊し散ってゆく姿を沢山見届けることが出来たし何より肉を切る不思議な感覚が病みつきになってしまった。
その感覚を深く味わう為に人の身体をもっと勉強したくなり、狂ったように人体の急所だの長く苦しめる為にはどこが良いのかだの、これは毒でどういった症状なのか、量は?
まさに煌めきを長く見つめ続けるためにありとあらゆる人体や薬学のアレコレを狂ったように頭に叩き込んだ。
拷問器具の勉強もした。
その拷問器具が生み出された背景を知るだけでもゾクゾクする。
どういった思想で生み出されたのか何のために使っていたのか。
特に気に入ったのは鉄の処女、アイアン・メイデンだった。
その器具は諸説あるもののある一説ではある貴族の女性が自身の髪の毛を解いていた侍女が誤って髪を抜いてしまったことに怒った女性がブラシで侍女を殴った。
その返り血を浴びると肌が輝いたように見え、生娘の血液を浴びたらもっと美しくなれると思った女性は村の娘や下級貴族の娘をお茶会や淑女の礼儀を学ばせると言った名目で攫い拷問死させる過程で生み出したもの。
貴族の女性自身は侍女が逃がしてしまった捕虜の少女が教会に駆け込み事件が発覚し、貴族の女性の召使い達は皆殺し、女性は上級貴族という立場の関係上処刑が出来ず自身の城の地下牢に幽閉され衰弱死した。
なんとも、私利私欲の為に人を殺すところはあまり理解が出来ないが本命はその器具の特徴にある。
鉄の処女、アイアン・メイデンは棺桶のような形に女性の顔が彫られていて、その棺桶の中には無数の長くて太い針が付けられている。
それも人体の急所は外していて長く人を苦しめる為だけに作られているのだ。
人の苦しむ命の煌めきを眺めながら散りゆく姿を見ることができる。
それこそ、僕が見たかった光景だった。
しかし、そんな快楽も長くは続かない、飽きてしまったのだ。
そのため、また無気力な状態に戻ってしまった。
でも、面白そうな人達を見つけた。
反社会的勢力の治安維持をする組織の人達。
凡庸な組員に興味は無いが、組織の頭とその側近。
どちらかを殺せばどちらかは絶望した顔を見せてくれる。
今思えばすごく独りよがりな考えだったと思う。
そこで今のバディ関係にある一惺や愛しいご主人様になる首領さんに高い廃れたビルの頂上で出会った。
刀を持っていたから一惺には一瞬で警戒され武器を構えられた。
一惺
…首領(マスター)、この馬鹿を無力化する。
少し下がっててくれ。
首領
う、うん…!
一惺
噂になってるぜ?
お前、賭場荒しとしてな。
噂通りの美人だな。
翔
ふふ、褒めてくれてありがとう。
一惺
ッあ……?!
(斬られた、殺気も予備動作も一切感じられない…俺の苦手なタイプの相手だな…)
翔
あれぇ…?
人体の急所をことごとく斬ったはずなのに生きてる…
この出血量じゃあ死んでるよ?
人間じゃないのかな?
ッ!
刀を蹴り飛ばされ、僕はすぐさま銃を抜いた。
一惺
流石、反応速度が速ぇな。
お前…接近戦は得意か?
翔
ッ…!!
(速い…)
一惺
凄え動体視力…
全然攻撃が当たらない、まるで桜吹雪を斬る修行をしてる時みたいだ。
面白い奴。
殺すには惜しいな。
翔
やられてばかりじゃ…!
かはっ…!!
翔
躱すのに集中しすぎて足元が疎かだ。
初めてだった。
自分がこんなに物理的に追い詰められるのが。
そのまま二人で斬り合いになる。
甲高く刃がぶつかる音が響き渡った。
ただ、僕は非力だったから顔は傷だらけだしスタミナ勝負には勝てず鳩尾を一惺の愛刀で貫かれた。
一惺
マスター、無力化しました。
ってお前何する気だ…!?
翔
ふふ、元から僕はね、生きるための未来なんて考えた事無かった。
親の都合で生まれて、縁を切られて自分の価値を見出す為にこの業界に来たのに、ボロボロにやられて自分の価値を見出す理由も無くなっちゃった。
久しぶりに感情のこもった涙が出た。
頬を伝ってボタボタと自身の血液と一緒にこぼれ落ちる。
フラフラと僕はビルのふもとに立った。
夜景をひとしきり見つめ続ける。
こんな遠回りしなくたって自分の価値を見出すきっかけはいくらでもあった事、自分の母親と幸せになるという約束を交わしたのに守れず、その約束を死に際にやっと思い出した事…
悲しさと後悔しか頭になかった。
翔
(お母さん…ごめんなさい。)
(僕は幸せになれなかったし、沢山の人を不幸にしてしまった)
(自分の価値を見出すことも出来なかった)
僕は後悔を抱いたままビルから身を投げた…
はずだった。
今のご主人様、マスターがすんでのところで僕が飛び降り自殺するのを防いだ。
一惺
マスター、助けて良いのか?
首領
うん!
この子は大物になる素質しかないよ!
と、言うわけで君はぜーったい死なせないからね!!!
翔
その手を離してくれないかな…?
首領
嫌だっ!!!!!!!!
死なないで欲しいの、だって約束してたんだよね、幸せになるって。
引き上げられたと同時に僕は出血多量で意識を失った。
???
…う!!
翔?!
翔
……?
ッ!
お母さん…?!
どうしてここに…
雪芽(翔の母親)
とりあえず順を追って説明するわね。
まずまだ貴方は死んでない。
ここは狭間の世界よ。
貴方は今、生かしてもらおうと色んな人が頑張っているの。
だから、とにかく生きるのを諦めてはダメ。
私はもう元の世界に帰らなきゃならない。
言いたいことはそれだけよ。
約束忘れちゃだめよ?
翔
…?
ここは…
首領
やっと起きた〜…
ほんと危なかったんだよ?
5ヶ月眠ってたし。
一惺
マスターが病院まで直接輸血して命を繋いでくれたんだからな。
光栄に思え。
あ、無理に起き上がるな?
傷が開くぞ。
翔
……ありがと。
首領
今日のところは長居するのもアレだし!
また明日ね〜!
それから僕のご主人様は毎日毎日、嫌という程何かしらのお花か果物を携えてお見舞いに来た。
最初の方は鬱陶しくてたまらなかった。
傷が癒えたらまたどこか放浪するつもりだったから。
首領
今日はねぇ、お医者さんから何か食べていいって許可が出たんだ!
あと…翔ってすごい経歴持ってたんだね!
君の身辺を調べあげたの!一惺が!
翔
それで?
組織に入れって言うなら聞かないからね。
首領
うげ…
なんで分かるの…
翔
顔に出すぎ。
まぁ、交渉次第で考えてあげないことないけどね。
首領
まぁまぁ、君には大きな知らせがあるんだ?
翔
はぁ、しょうもない事言わないでくれる?
いい加減鬱陶しいの。
で、その書類は何が書いてあるの?
驚きの事が書いてあった。
自分に養女ができること。
翔
僕承認してないけど。
まぁ、その相手が僕の叔父さんの娘である涼葉ちゃんである事には驚きだけど。
首領
面識はあるの?
翔
親戚の集まりで何度か。
それで、涼葉ちゃんはもう10歳とかだよね?
涼葉
…翔、さん?
翔
本人連れてきたの?
涼葉
その、翔さん?
そんなに警戒しないで?
私、首領さんに面倒見てもらってたから!
翔
……????
涼葉ちゃん、どういう事?
涼葉
えーっと、まず私の親が事故で他界したでしょ、それから引き取り手が居ないからなんか色々あって、お父さんの遺書に私の親権は翔さんがいいって書いてあったけどあんな事があったから、翔さんが入院してる間は面倒見てもらってたの!
翔
何もされてない?
涼葉
…?
めっちゃ充実してたよ!
畑仕事手伝ったりとか美味しいお野菜に果物に…
翔
はぁ、幸せになれって…
色々起きすぎでしょ…疲れちゃう…
涼葉
それでね、翔さん、今夏なんだけど昨日桃が採れたの。
皮向いて切ってきたから食べて欲しいな。
首領さん
涼葉ちゃんが収穫手伝ってくれたんだ!
翔
そう…
いただきます。
………久しぶりに美味しい物食べた。
涼葉
私からもお願いなの、翔さん組織に入って欲しい。
翔
…………(とてつもなく長い沈黙)
わかった。
首領さんには直接輸血してもらって生かされた恩があるからね。
それで?
僕は何をすればいいの?
首領
ワイのこと守って!
一惺とバディ関係結んでもらうからね!
そんな事で退院後は親権手続きだの養子縁組だの、組織入りで事務手続きやらなんやらであっという間に年が明けてしまった。
娘となった涼葉や、首領さんの真っ直ぐな気持ちに心を動かされてやっと自分の人生を生きることが出来るのが何よりも幸せだった。
その後は涼葉の中学受験や自身のプライベートで忙しくも幸せな毎日を送り、あっという間に現在に至る。
翔
……という訳ですよ、マスターさん。
バーテンダー
そ、壮絶すぎる…
そんな辛い過去だったとは…
軽率に過去を聞いてしまってすみませんでした。
翔
いいんです。
僕も、ようやく人に頼るというのを覚え始めたのですから。
バーテンダー
確かに、6年前のあの時よりもずっと幸せそうですね、お客様。
翔
守りたいものや自分の価値を見出すことが出来ましたから。
さて、僕の可愛い娘が待っているのでここらでおいとまさせていただきます。
バーテンダー
ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております。
…………………………………
涼葉
お父さん、おかえり!
夕飯なぁに?
翔
うーん…
久しぶりに外に食べに行こうか?
涼葉
やったー!!
私洋食が良い!
翔
そっか。
それじゃあ行こうね。
コメント
1件
うわああああ翔さんの過去エグすぎる…!!😭💔 でも今の幸せな姿とのギャップに胸がぎゅってなったよ…。首領さんが「死なないで」って引き上げたシーン、母さんとの約束思い出して涙する場面、もうエモすぎてやばい…。涼葉ちゃんとの親子関係も尊すぎるし、よくぞここまで幸せ掴んだね翔さん!! うーしゃんさんの紡ぐ世界観、めっちゃ刺さったよ〜!!🌸💕 続きも