テラーノベル
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月曜日。
朝の教室。
「おはよう、玲くん!」
「……おはよう」
いつものように星羅が笑う。
けれど、玲は少しだけ彼女を見つめていた。
「……?」
「いや」
「どうしたの?」
「なんでもない」
――やっぱり似ている。
声。
笑い方。
仕草。
そして、昨日の配信。
偶然だと思いたい。
でも。
偶然にしては重なりすぎている。
「玲くん?」
「ん?」
「今日、ぼーっとしてるよ?」
「ちょっと考え事」
「何考えてるの?」
「……秘密」
「えー」
星羅が頬を膨らませる。
「私には教えてくれないの?」
「そのうち」
「約束?」
「ああ」
「じゃあ待ってる♪」
星羅は笑った。
――何を考えているのか。
少しだけ気になる。
でも。
もし玲くんが私の正体に気づいているのなら。
それはそれで――。
嬉しい。
昼休み。
二人で弁当を食べていると、星羅がスマホを取り出した。
「玲くん」
「ん?」
「今日の夜、配信あるんだけど……」
「ああ。見る」
「……絶対?」
「たぶん」
「絶対がいい」
「……分かった」
「約束ね?」
「はいはい」
星羅は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日の配信は絶対見てね」
「分かった」
その日の夜。
22時。
星乃セラの配信が始まる。
『みんなー! こんばんはー!』
いつもの挨拶。
いつもの笑顔。
しかし今日は、少し雰囲気が違った。
『今日はね……』
セラはカメラに向かって微笑む。
『特別な話をします』
コメント欄が一気に流れる。
『何!?』
『重大発表?』
『結婚!?』
『彼氏できた!?』
『ち、違うよ!』
セラは慌てて否定する。
『今日は……私が大切にしてる人の話』
玲の手が止まった。
「……」
配信を見ながら、玲は黙っている。
『その人はね』
セラが少し照れたように笑う。
『昔、私の言葉で元気になってくれたんだって』
「……!」
玲の心臓が跳ねる。
『私はただ配信してただけだった』
『でも、その人にとっては大きな意味があったみたい』
玲は画面から目を離せない。
『それを知ったとき……』
セラは胸に手を当てる。
『すごく嬉しかった』
『私の存在が、その人の役に立てたんだって』
玲は息を呑む。
これは――。
自分のことだ。
『だから私は、その人を絶対に大切にしたい』
コメントが流れる。
『誰なの!?』
『気になる!』
『セラちゃんの好きな人?』
セラは笑う。
『秘密♪』
そして。
ほんの一瞬。
画面の向こうの玲を見透かすように――。
『でもね』
『その人には、ちゃんと幸せになってほしい』
配信終了。
玲はスマホを置いた。
「……」
しばらく何も考えられなかった。
翌朝。
教室。
星羅はいつも通り玲の隣に座る。
「おはよう、玲くん」
「……おはよう」
「昨日の配信、見た?」
「ああ」
「どうだった?」
「……よかった」
「ほんと?」
「ああ」
「どの辺が?」
玲は少し迷ってから答える。
「……大切な人の話」
「……!」
星羅の頬が赤くなる。
「そ、そこ?」
「ああ」
「……そっか」
星羅は俯いて笑う。
「嬉しいな」
「何が?」
「玲くんが、ちゃんと聞いてくれてたこと」
「……」
玲は星羅を見る。
「星羅」
「ん?」
「もし……」
言葉が止まる。
「……いや、何でもない」
「?」
玲は聞けなかった。
――「星羅って、星乃セラなのか?」
その一言が。
どうしても口から出なかった。
もし違っていたら。
変に思われる。
もし当たっていたら――。
もっと怖い。
一方。
星羅は玲の横顔を見ていた。
玲くん。
何か言いたそうだった。
でも聞かない。
今はまだ。
この距離が心地いいから。
放課後。
星羅は玲の袖を掴む。
「玲くん」
「ん?」
「今日、一緒に帰ろ?」
「ああ」
「……よかった」
二人で並んで歩く。
星羅は小さく笑った。
「ねえ、玲くん」
「何?」
「いつか私の秘密、教えてあげるね」
「……秘密?」
「うん」
「どんな?」
「まだ内緒♪」
玲は少しだけ笑う。
「分かった」
星羅も笑う。
「その代わり――」
「?」
「玲くんも、いつか私に秘密を教えてね」
「ああ」
「約束だよ?」
「……約束」
二人の小指が、そっと絡む。
星羅はその手を見つめながら思った。
――いつか。
ちゃんと伝える。
私が星乃セラだって。
でも。
その前に。
もっと玲くんに近づきたい。
もっと好きになってほしい。
もっと私を必要としてほしい。
そして――。
「……私だけを見てほしい」
「何か言った?」
「ううん♪」
星羅は笑った。
その笑顔の奥で。
独占欲は、静かに育っていた。
#恋愛
まり
40
奇蹟あい
1,760
#一次創作
コメント
1件
わあ、第11話……読み終えました。 玲くんが星羅=セラだと気づきかけているのに、確かめるのが怖くて言葉を飲み込む場面、すごく切なくて胸がぎゅっとなりました。 逆に星羅も、まだ秘密を明かさず「もっと好きになってほしい」って思ってる……その距離感の描き方が、本当に繊細で好きです。 ラストの「私だけを見てほしい」の独占欲が、ほんのり闇を帯びていて、これからどうなるのかドキドキします。 春さんの心理描写、いつもながら見事でした。続きが気になります……!