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『さぁ、ロシア。ご挨拶なさい』











物心ついた時にはもう、俺は祖父と公の場に出ていてそれはなんら特別なことではなかった。










『まぁ!お可愛い子!!』










祖父と、その孫である俺に媚びを売る人々。











『えぇ、本当に。祖国様によく似てらっしゃる』












華やかな雰囲気とは真逆に人々の腹の中の思惑が渦巻いた腹の探りあい。













『本当にそっくりだわ』













クソみたいな贅沢の限りを尽くした舞踏会。











そんなゴミ溜めのような社会の縮図に子供を連れて行った祖父も祖父だった。











あくまで主役を引き立てる花として、優雅に音を奏でるオーケストラ。

中世ヨーロッパを思わせる豪華絢爛な装飾に、一切手を付けられていない美味しそうな料理たち。











贅沢の限りを尽くした光景が、幼い俺にとって『当たり前』だった。











まわりの大人たちは皆、祖父に抱き上げられた俺をチヤホヤともてはやした。大抵は目に入れるとたちまち花を咲かせるように顔を緩めたが、祖父の昔馴染みの国なんかは嫌なものでも見たように顔をしかめた。










そして、父は後者のほうだった。









只、両者とも誰も彼も口をひられば揃えて同じ事を言った。








『そっくりだ』、と。










当時、祖父のことが大好きだった無知な俺はそれを大層喜んだ。

…勿論、今では立派な黒歴史である。









父に嫌煙され、視界に入るだけで怒鳴られ手をあげられた当時の俺にとって、優しく手を差し伸べてくれた祖父はまるで生神女マリヤのような存在だった。

地獄のようなところから救い出してくれた祖父はまさしく神同等であり、半ば依存していたとも言えた。










今となってはわかることだが、幼い子供の俺には何故何もしていないのにこんな目に遭わなくてはならないのかが分からなくて只只泣いてばかりだった。










頻繁に悪夢に魘された俺を祖父は優しく抱きしめて、頭を撫でて俺が眠るまであやしつけた。









悲しいことに今でもその記憶は色褪せることなく鮮明に覚えている。








こうやって一人になる度に思い出し、そして考えることがある。







一体、どこまでがロシア帝国の謀略だったのだろう、と








こんなこと、考えるだけ無駄であるとわかっていても思わずには居られなかった。








実の息子のことでさえ、認知しなかった祖父が何故孫の私は引き取って育てたのか。









理由は簡単である。

祖父は、美しいものを好む。









絵画に、彫刻品に、金工品に、女。

一生、遊んで暮らせるような額をする様々なモノが宮殿のどこかの部屋には今でも忘れ去られ、埃をかぶって眠っている。











それらの多くは、祖父がふらっとどこかで買ってきたもので、長くて一月、短くて二日でまた別のものに取り替えられた。あるいはまるで最初からそこに『無かった』ように忽然と居なくなった。












只、そんな祖父が唯一飽きなかったものがある。















それは、まったくうれしくもないことに俺だった。












祖父は美しいものが、好きだ。













だから、祖父は自分によく似た孫を引き取って自分の後継として育て、いつも離さず傍においていた。












自分に似るようにマナーや礼儀作法、そして帝王学。その他にも他方に及ぶ学問を俺に学ばせて。

もし、少しでも間違えれば厳しい折檻がまっていたし俺は大好きな祖父に少しでも近づくために努力した。


















………………………昔の俺が、今の俺を見たら一体何というのだろうか。
































































「…………………………はぁ…」
















ぱちっ、と何の前触れもなく目が覚めた。

そこはいつもの自分の部屋だ。

………まったく、イヤな夢を見た。














最悪な目覚めに、俺はため息を吐き重い体を起こした。













ちらり、と窓に目を向ければ外はまだ暗闇に包まれていた。

まだ夜の帷は降りたままらしいのを見てずんっ…、、、と更に気が重くなったのを感じた。










ここは酷く息が詰まる。











祖父が死んで、成長していくうちに妄信的な祖父への信頼と信仰…もとい洗脳は解け嫌悪へと変わっていった。





そして、時を超えて再開した祖父はそれをまるでわかっていたように嬉嬉と受け入れ、同時に力でねじ伏せて囲いこんだ。





勿論、最初こそ抵抗していたがかつてとは比べ物にならない折檻…というより蹂躙にしだいにそんな気力も起きないようになっていった。

かわりに、





なるべく、祖父と顔を合わせないよう大人しく。






なるべく、祖父の機嫌を損なわないように言葉には細心の注意を払ってきた。






つまり、徹底的に他人として接してきたのだ。

それが唯一俺ができた抵抗であり、そして身を守るための策だった。






少しでも息がしやすいように、なるべく祖父の領域であるこの屋敷から離れていたのだが…それはもう昔のことだ。

戦争が始まって、益々孤立すると屋敷から出る必要もなくなってしまった。








だが、もしかしたらそれすらも………。

そこまで、考えて思考を止めた。

短く息を吐く。…こんなこと、考えるだけ無駄である。









今ではもう祖父に『散歩』に連れて行かれること以外で外に出ることはない。









肌に突き刺さる冷気にすっかり目は覚めてしまい、俺は仕方なくベッドから降りた。

春も近づいてきたとはいえ、まだまだこの時間は寒い。










クローゼットにしまってある羽織りを取り出して肩に着ると部屋の外へと出た。










木造の廊下に出ると、部屋の中よりも益々寒さが顕著になって部屋の出るのを一瞬迷ったが、結局部屋の中に引き返そうとは思わずそのまま真っ暗な廊下に足を踏み入れた。











最初のうちは何も見えず、壁伝いにギシッ…と不気味に軋む床を確かめるように一歩一歩踏みしめて歩みを進めていたが、やがて目が慣れてくると徐々に歩くスピードを上げていく。











廊下の薄ら寒さに腕をさする。

吐く息は白い。

無駄に広い屋敷が、まるで出口のわからない迷宮のようで、薄気味悪く感じた。

ただでさえ、思考が悪い方向に行っているのにそれを煽るようなじめじめとした雰囲気に嫌気が差した。







それでも、引き返すことなく歩みを進めているとやがて大広間につながる大階段へとたどり着いた。

上からちらりと下を見下ろせば、暗闇の奥に重厚な扉が見え久しく見るそれをじっ、と見下ろす。








もう随分とあの扉に触っていない。

そんなことを考えているとふとあることが脳裏に浮かんだ。

自分はあの扉をまだ開けられるのだろうか…?







赤の他人がそれを聞けば馬鹿馬鹿しく思うかもしれないが、俺は存外本気で不安に思った。







あの重々しく立ち塞がる扉の向こうへ、俺はまだ自分で行けるのだろうか?








勿論、あの向こうは広すぎる箱庭があるので、完全に外に出られるわけではないが、それでも外へとつながる関門と言える目の前の扉を開けれるのか開けられないのかということは俺にとって、重要なものであった。










「………………………」











ボーーーン…………ボーーーーーーン









どのくらい、そうしてその場に突っ立っていただろうか。

突如として自分の吐息くらいしか聞こえないような静まり返った空間に、意識を浮上させるように大きな音が鳴り響いた。

その音に思わずびくんっと大きく肩が跳ね上がった。

バクバクと煩いほど高鳴る胸を押さえながら、ほぼ反射的に音をした方に向くとそこには健気に振り子を振ってその存在を主張する振り時計が佇んでいた。

やがて、反響すら消えて未だにバクバクと激しく律動している心臓以外の一切の痕跡が無くなるとはっ、と意識が戻った。






一体、俺は何をそんなに焦っているのだろうか?








何も悪いことはしていないのだからそんなに驚く必要などないだろうに、俺は何をそんなに驚いているのだろうか。









まるで言い訳のように、そう考えてしまった自分に思わず顔をしかめた。










…何を考えてるんだ、俺は…、

これじゃ、まるで………………………………、、、












そこから、先の言葉を遮るようにちっ、と舌を打つと、大きく階段に足を踏み出した。











とんとんとん、と一定の間隔で降りていき、迷宮の出口にたどり着いたハンターさながらに扉の前にたつ。









…………ちょっとだけ。……ちょっとだけ、開けてみるだけだ。

…そう、月がいまどこにいるのかを確かめるだけだ。











そう、誰にしているのかわからない言い訳をしながら、丸い取っ手に手を伸ばす。










久しぶりに触れたそこはひんやりと冷たくて手のひらから温度を奪っていった。











そして、扉を開くべく、ゆっくり、とそれを引こうと手に力を込めた。











































「おやおや、こんな時間に外に出るのはあまり感心しないね」










背後からはっきりと聞こえたその声にロシアはゆっくりと、けれど自然なそぶりで振り向いた。











「…目が覚めてしまって、散歩でもしようかと…貴方こそこんな時間にどうされたんですか…?」











そこに居たのは、いつもと寸分変わらない姿のロシア帝国だった。

内心、バクバクと今にも爆発しそうなほど激しく心臓を鳴らしながらあくまでも『自然』に応える。

しかし、目の前のお人は全てを見通しているようにニヤニヤと口角を吊り上げて、にこり、と絵に描いたように胡散臭い風体に眼を細めてロシアを見ていた。












「私も少し目が冴えてしまってね。この年になるとどうも体がなまっていけない」










如何にもとって貼り付けたような軽薄とした嘘くさい笑みでそう応える帝国に愛想笑い返しながら、つくならせめてもっとマシな嘘をつけよと、毒づく。

変な感が働くのかどうしてかこの人はいつも『タイミングが悪い』









「ふふっ、長く生きてると大抵のことはわかるものだよ」









まるで、見計らったかのように発せられた言葉に思わずじっ、と目の前の人物の顔を見つめたが、いくら見てもぴくりとも表情が変わらないのをみとって、早々顔を読むのは諦めた。









「…ははっ、…そんなものですか」







「ふふっ、そんなものだよ」










お互いにニコリと顔を合わせて、談笑し合う。

これもただの第三者がみれば、仲の良い祖父と孫に見えるのだろうか。

忌々しいこの顔は憎々しいことに第三者から見れば間違いなく、この男との血縁を感じさせるものだ。

父と子だったり叔父と甥だったりとそれに差異はあれど、この男が上で、俺が下にあるのに変わりはない。











「風邪をひくから外に出るのはやめておきなさい。眠れないなら……そうだな、」









二言目に出たセリフに嫌な予感がしたが、時すでに遅し。

首を傾げて如何にも『考えてます』と言うように顎に手を当てて考えるような間をあけると、若干口角が更につり上がった次の瞬間にはもう言葉が発せられていた。










「私の話相手でもしてくれるかい」










迷いない口調で、そう発せられた言葉に顔こそ崩さなかったが、内心荒々しく舌を打った。

最早、疑問形でもないソレに勿論拒否権など存在しない。

この男がこう言う時は決まって、『アレ』をする時だ。

同時に、あの時部屋の中に引き返さなかったのだろう、とらしくないことをしたつい数分前の過去の自分を責めた。

こう言われてしまえば、もう引き返すことはできない。

舌打ちを飲み込んで、ニコッと笑い返すとお決まりのセリフを吐き捨てた。










「Да, конечно」







《 ええ、もちろん 》


























































あぁ、クソだ。









何度でも言おう。












目の前のクソジジイも、父親に似ているからという理由だけで俺を嫌悪して捨てた挙句俺を使い潰して世界から孤立させたクソ親父も、俺を悪だと後ろ指を指すアイツラも、倫理も道徳も欠如したクソジジイに似てしまった俺も、ぜんぶクソだ!!!







適温に保たれて室内、目の前で上等な椅子に深く腰掛け足を組み、涼しい顔で頬杖をつくクソジジイ。









先程散々内心で罵倒した人物を前に、俺は今立ち尽くしていた。









早くしろ、と言わんばかりに見下ろされているように錯覚しそうな目で催促する男にぐっ、とツバを飲み込む。まるで、すべてを見透かされているように思えて酷く居心地が悪い。










「……………………………………………………………」












それは、無言の抵抗だった。

暴言を吐くこともできず、一歩も動くこともできず、睨むことすらできず、ただただ無言で見つめることでしか抵抗ができない俺は酷く無力で、惨めだった。

















「………………………………………………、」





















俺は自由だ。

一人で、なんでも決めることだってできるし、なんだってできる。

あの頃の俺とはもう違う。

食事をもらえなくてゴミの中を漁ったり、空気のように無いもののとして扱われた、あの無力な子供ではない。

コイツの言う事に従順に従うしかなかったあの無力な頃の俺ではない。








俺は、『支配する側』だ。





























「…………………………………、」

































俺は、支配…する側なのだ………。











「………………………………、」











「……………………………。」











「………………、」












「……………………………。」














「………、」


















目。


















俺と同じ、真っ暗な夜空にその存在を一際主張する如く煌々と輝き、人を魅了させる一等星の輝き。
















…否、正確に言えば俺が、同じなのだ。













「、」













今回も先に目を逸らしたのは俺の方だった。















せめてもの抵抗で、なるだけ緩慢と、片足だけを床につけて地面に跪いた。













「………………………」
















何故、俺は亡国相手を前に、膝をついているのだろうか。











この俺が、











既に滅びた亡国風情に、










「ロシア」











そうだ。俺は………………………………















つーーーーーーーーーーーーーーッ

















「こーら、ダメでしょ?目を逸らしたら」
















ふわり、とむせ返るほど濃い甘い果実の匂いに包みこまれた。

顔を上げれば心底愉快げな三日月と視線が交わった。

メインディッシュに最後の仕上げをするように頭からゆっくりとワインをかけ、嘲笑うでも嘲笑するでもなく只笑う

この男はやはりどこかネジが抜けていた。
















「……、もうしわけ、ございません…………」


















細く長い指先で、行儀悪くステムに指を引っ掛けてグラスを傾ける様は皮肉にもサマになっていた。















「…あぁ、あぁ、泣かないでおくれ。私のかわいいロシア。君がそんな顔してたら、私まで悲しくなってしまうだろう?」













勿論、俺は泣いてなどいない。

…ただ、ひどい顔をしているのは確かだろう。少なくともこの人をあおる程度には顔が引きつっているに違いない。

無機質に只謝罪の言葉を述べれば帝国は、如何にも悲しげに悲観的に目尻を下げ、声をくぐもらせた。

しかし、これがこの人お得意の建前だというのは火を見るより明らかだった。

目の奥に隠しきれない悦楽が滲んでいたのをロシアは見逃さなかった。

だが、ここで真に受けて睨みつけたり反抗的な態度をとっては本末転倒だ。それは、この悪魔を煽るだけの完全なる悪手である。

そうやって、過去の俺はヒドイ目にあってきた。













「…ふふっ、ほんとにお前はかわいーねぇ。どうだい?美味しい?」











ワイングラスをサイドテーブルに置くと、俺の顔を覆うほど大きな手で頭を撫でられた。

ワインでベタベタになっているだろう頭を不快がるどころか満足げに堪能するのだ。

次に言う言葉は簡単に予想だにできる。











「本当に、おまえは私に似ているね」











普通孫家族にも恋人にだって、使わないような砂糖を煮詰めて更に致死量の蜂蜜を混ぜたような、そんか吐き気がするほど甘ったるい声で囁かれた。

まさに呪いだ。












あぁ、本当に吐きそうだ。














髪を指で通したり、つまんだりして飽きるまで弄んだその次は耳を満足いくまで触る。

それに、満足したら頬。輪郭を確かめるように撫ぜたり引っ張ったりして愛でられる。

そして、最後は目だ。

大切に大切に隠してある宝石を愛撫するように目元や瞼を撫でられ、じっ、と真っ直ぐに目の中を覗き込まれる。

つまるところ、鑑賞だ。

ここでの対処法は簡単だ。

只管に無を貫けばいい。

俺の役目は、所有物らしく、ただじっ、としていればいいだけの簡単な仕事だ。

そして、この次も既に履修済だ。








祖父が興味を失ったように俺から手を離して手を引っ込ませようとしたのを見計らって、その手を掴んだ。









どうせなら、一刻も早く終わらせようと何も考えないように、まずは指先に唇を落とす。









勿論、この時は我が帝国の顔を仰ぎながら、だ。









視界に大層満足げに見下ろす帝国が映って安堵と同時に吐き気が波が押し寄せるようにやってきた。まるで主人の顔色をうかがって媚びへつらう隷属のようで、少しでも安堵感を覚えてしまった自分に酷い嫌悪感を覚えた。だが、それをおくびにも出さずに続いて手のひらに、手首に落とす。








こんな儀式的なことを初めてしたのは一体いつだっただろうか。

ふとそんな考えがよぎったが、すぐに頭から追い出す。

前に一度、気を紛らわす為に別のことを考えていたら髪を思い切り引っ張られたことを俺は忘れていない。

ただでさえ、体を蝕むような屈辱で頭がどうにかなりそうだというのに、今そんなことをされたらとてもではないが平静を繕えそうにない。

無は、精神的なものだけではなく、物理的にも自分の身を守るのに役立つのだ。










そして、最後にまるで主に忠誠を誓う騎士のように恭しく、手の甲にキスを落としてみせる。










(…俺を支配してる気になってることでしか、欲求を満たせない老いぼれが…)










内心そう毒づいて手を離して、顔を上げたその時だった。











「…っ、!!!ッッっ、っ、ぅ゛、あ゛ッ!!!!!!」











突然、指を口内に帝国の細い指先が侵入してきたのだ。

無理やり割って入ってきたその指は更に奥へと進んでいき、遊ぶように喉奥を引っ掻いたり、押したり、はたまた下を引っ張ったりと翻弄した。

突然の暴挙に咄嗟に、顔を引っ込めかけたなんとか持ちこたえてじっ、と動くこともままならず只相手が満足するのを待つ。

何度もえづきかけたり、呼吸がうまくできないので生理的な涙が滲んだ。それでもなけなしのプライドをかき集めて、この男の前でだけは涙を流すまいと耐えようとした。

帝国はそんな俺が必死に抗う姿を楽しんでいるようで、なけなしのプライドを更に粉々に潰すように何度も何度も執拗に口内を蹂躙した。










「、っう゛っ…あ゛、ぁ゛っッ、!!…、え゛っ…ぅ゛…、ふっ…!!!!っ、、あ゛っ、!!」













どのくらいたっただろうか。やがて、我慢しきれずに一粒二粒と涙が溢れてしまった。

それを見て、ロシア帝国はふっ、と息をもらすとようやく指を引き抜いた。













「は、ぁっ!!げほっ!!!げほっ、ごほっごほっっ!!!!ッ!ごほ、ッ!!!!っ、はぁっ!!…はぁッ!!!」











指を引き抜かれ自由になった瞬間、崩れるように両膝両腕を地面につけた。

正常に呼吸するのもままならず、何度もえづきながら過呼吸気味の呼吸をなんとか整えようと、マラソンをした後のように激しく咳き込む。

帝国は新たにワインを注ぎ入れ、嗜みながらそれを見下ろした。

やがて、やっと呼吸が整ってくるとコトン、とワイングラスを置く音とともに再び祖父の指先が伸びてきた。











「、ッ、!っっっ!!、!」












ぐいっ、!!と乱暴に頬を掴まれて顔を上げさせられる。

思わずゾッとするほど無機質でそれでいて冷ややかな眼光と目が合った。

それは、幼い頃祖父の豪奢な毛皮のマントに縋り付いた孤児を見下ろしていた目を思い出させた。

その辺の死体やゴミをみるような何の感情も籠もっていない無慈悲な目だ。

かすかな表情の変化と呼吸の変化で機敏に怒りと屈辱、そして畏怖が混じったそれを感じとったのか、祖父はふっ、と薄く唇を歪めた。











「さっきまでの顔もいいけど、…偶にはそんな顔もいい」













そうほざいて、すっ、と手は驚くほど呆気なく離された。













「さぁ、続きをしてくれる?」













まるで彫刻のように計算し尽くされて作られた、冷たさが浮きだつ顔を、まるで物語の中に出てくる魔女のように妖しく歪めて祖父は笑った。













「……………はい…。」




















落ち着け。







内心、そう自分にそう言いきかせるように小さく息を吐く。

今、歯向かえば今までのもの全て水の泡だ。

あと少し。

あともう少しだ。

あともう少しで、このふざけた茶番は終わる。

そう自分に言い聞かせながら、はやくこんな茶番を終わらせてしまおうと、あくまで自然に次の予備動作に入る。













まずはじめに無駄に長い組まれた足のしわ一つない、黒い軍服ごしにすねへ、無心に唇を落とした。













…よく実の孫に相手にこんなことさせて興奮できるものだな、と内心うんざりしながら思った。












続いて、下に下っていき足元まで行くと、硬い真っ黒な革靴を手で支えると、頭を下げてまずは先ほどと同様軽くつま先に恭しく唇を落とす。その流れで軽く足を持ち上げて足の裏に口付ける。












考えることも古臭いし、さも自主的のようにやらせて虚しくはならないのだろうか?

きっと、一番煌びやかだったころのことを忘れられないのだろうがそれに俺を巻き込まないでほしい。

いつまでも、過去の幻影に縋り付いてる様は一周回って哀れに見えてくる。

そう思うと可哀想な人だ。

孫をねじ伏せることでしか、自分の存在意義を見いだせない。

しかも、その最後は今まで認知もしていなかった息子に殺されたというのだから無様すぎてお笑い草にもならない。














そして、最後に足の甲に唇を落と______















「__Ты действительно бедный мальчик.」

















__そうとした。
















「_______は?」


















思わず声が漏れた。














顔を上げれば先ほどまでと変わらぬ顔をした祖父がいて思わず自分の耳を疑った。















只の空耳…?
















いや…それにしては……………。


















そんな俺の考えを読んだように祖父のつり上がった唇の端に浮んだ冷笑が、嘲るようにロシアを見下ろした。















その表情にざわっ、と全身の血が波立った。














「あぁ、可哀想な世界一かわいいかわいい私の孫。おまえはなァーんにも悪くないのに、アレのせいで世界から悪役扱いされて…。私は心が張り裂けてしまいそうなくらい痛いよ。ひとりぼっちの可哀想なロシアちゃん。」














かわいそうに…と哀れむ言葉とは裏腹その目には隠そうともしない喜悦が浮かんでいた。













心が痛い?












可哀想??














どの口が言う。

隠そうともしない明確な悪意ある言葉にロシアは内心嗤った。
















「…ふっはははっ!…貴方にだけは言われたくない。」

















にぃっ、と口角を吊り上げてそう返せば此処でわかりやすくぴくりと眉が動いた。

それを見て、少しばかり気分が良くなった。

今度は俺が醜く口角を歪める番だった。
















「…貴族まがいなことをして、自分より遥かに弱いと思っていた東洋の強国に敗れ、領土を取られた挙句、最後は路地裏でゴミ溜めを漁って生きてきたドブネズミに惨めに殺されたヤツがよく人のことを哀れめられるよなぁ?

そんで、亡国になったら今度は可哀想な孫を支配して自己証明か?ははっ!!まったくお笑い草にもならねぇっ…!!」



















ガンッッッ!!!!!!!!!















「ッ!!、あ゛っ゛、っ!!!!」
















気づいた時には既に地に伏せていた。

遅れて蹴り飛ばされて勢い余って扉に衝突したことに気づいた。

ガンッ、と鈍い音がしたと同時に脳が揺れる。

どうやら突然のことに受け身をしきれず、ダイレクトにダメージを受けてしまったらしい。

















「ッッッ!!!ぐっ…、が、っ…!っぅあ゛!!っ、!はっ…はっ…!」
















流石は馬鹿力というべきか、おそらく力加減もせずに本気で蹴られたのだろう。

頭は痛いわ、きもちわるいわ、まともに呼吸ができないわ、気分は最悪だ。

おそらく、この分だと肋もヒビが入っているだろう。

ぼたぼた、と止まる様子なく鼻血が床を真っ赤に染めていく。

しかし、生まれつきの頑丈さかそれでも意識は飛ぶまでは至らず、中途半端な苦痛がロシアを苛んだ。













「ぅ゙っ、!!おぇっ…は、う゛っ…!!」















びちゃっ、!と吐瀉物を吐き出す。












あ゛ぁ、……さいあくだ。










嬉しくないことに辛うじて残っている意識でそう思った。

つん、と胃液の不快な匂いが鼻を刺激して顔をしかめた。

先程までの高揚感がどこに行ったのか、気分は最悪だ。














コツっ、と聞き馴染んだ音が地面を振動して耳に伝わってくる。

この音の発生源などまったくの愚問だ。
















やっと、呼吸の仕方を思い出してくると少しは余裕ができた頭で状況を確認しようと地面に伏せながら視線だけゆるりと動かす。


















音の発生源がコツっ………コツっ………と長い脚をわざと緩慢に動かしてこちらへ歩みを進めているのが見えた。

それが、わかったところで自分にできることなどなく、ただそれを認めることしかできない。

それは一体何歩目だったか、男の歩みがロシアの鼻先までくるとぴたりと止まった。

それでもぴくりとも、指先は動かせない。

すると、上から男の平坦な声が降ってきた。












「あらら、吐いちゃったの?まったく、仕様のない子だねぇ」












まるで子供に言い聞かせるような………いや、この人の場合、本当に子供だと思っているのだろう。

それでも、子供にこんなことをするあたりおかしいと思うが。

まったく、悪びれる様子もなくいつも通りの声音でそう言い放ったロシア帝国は誰のせいでこうなったと思っているのか至って普段通りだ。

さて、とロシア帝国は目を合わせるようにしゃがみ込むと髪を乱雑に掴まれて、無理やり目を合わせさせられるとにこやかに笑った。











「さて、悪い事をしたらなんて言ったらいいの?」















にこり。

さも慈悲深い大人が子供に諭すように祖父は言った。

まぁ慈悲なんて文字がこの人の辞書に存在するわけもないが。

そんなこと想像するだけで笑えてくるが、ここで本当に笑ってしまえば本当にこの先の自分の無事の保証はしかねる。

断ればどうなるかなんて、答えるまでもない。

そんなこと痛いほど知っている。

俺だって、痛い思いをするのは嫌だ。










「…………ごめ、…なさ………い…」










形だけでもそういえば万事が収まるのだから背に腹は代えられない。

そう言えば、祖父はぱっ、と手を離してお決まりの言葉を言った。












「Отличная работа! 」












『よくできました』なんて、クソみたいなセリフをほざきながら、祖父は頭をなでた。

俺はガキのように只頭を撫でられた。

しかし、次の瞬間祖父が言ったことに思考が停止した。












「今回はちょっと私も大人気なかったからね。両足で許してあげる」











「……………ぇ、?」













どうやら今回はいつもと違うようだった。

そう言って、人形のように俺の体を抱き起こすとちゅっ、と頬に口付けられた。

後者に発せられた言葉に思わず理解するのが遅れた。

それを理解したときには、有無を言わせない満面の笑みをした祖父が視界に映っていて、ひゅっ、と喉から音が漏れた。








さぁーーーっ、と全身から血という血が引いていく。










そんなことをされたら……。








そんな、考えを読んだように祖父は言葉を弾ませて言った。











「大丈夫。足が治るまで、おじいさまがロシアちゃんのお世話してあげるからね。今日から当分は一緒に寝られるよ」










嬉しいでしょ?と追い打ちをかけるように発せられた言葉にゾッ、とした。

そんなの冗談じゃない。

そんな切実な思いのままに慌てて口を開いた。










「ま、っ!…まってくださいっ!!!お祖父様のお手を煩わせるわけには…っ!!」











しかし、必死の抵抗もむなしくこの暴君には届かない。

貼り付けたものなんかじゃない。心からの笑みで笑って俺を地獄のどん底へと突き落とした。











「ふふっ、やぁっと『お祖父様』って呼んでくれたね。昔のロシアちゃんに戻ってきたみたいでお祖父様は嬉しいよ。」









全く噛み合わない一方的な会話に息を呑んだ。

遠回しだがその言葉にある明確な意図が俺にはちゃんと伝わった。









そう言いながら祖父が取り出したものにバクバクと鼓動が速くなる。













冗談じゃない…。













冗談じゃない、冗談じゃない…冗談じゃない冗談じゃない冗談じゃないっ!!!!!!!!!!















「…や、…やだ……お、おじいさま…まって。……まってください、おじいさま…っ!」












きっと、俺は今情けないほど蒼白な顔をしているに違いない。

だが、そんな体裁今はどうだもいいほどに俺は焦っていた。

この時少しでも冷静さを失っていなければ自分の言動が如何に悪手であることに気がつけただろう。

だが、今のロシアにとってそんなこと知る由もない。

ロシア帝国は獲物を前にする肉食動物のように目を細めると“駄々をこねる子ども”の靴を脱がしていく。

益々、血の気がなくなっていくロシアにほくそ笑むと足を押さえてナイフをロシアの___靭帯へと当てた。

靭帯。そう、靭帯だ。

靭帯なんか切られたら治るのに、リハビリも含め短くても半年以上はかかる。

つまり、それはロシアにとって実質監禁宣言だった。

どこに行こうにも何をしようにもロシア帝国の介護が必要になり、言葉通り四六時中一緒にいなくては生きていけない体になってしまうのだ。

まさか、これまでとってきた他人行儀な振る舞いや部屋に閉じこもり徹底的に帝国を避けてきたりとした『反抗的な態度』がここで仇になるなんて誰が思おうか。

しかし、時すでに遅し。

祖父は孫のほんのささやかな反抗に気がついていたし、何も気にしていないような涼しい顔をしておきながらも想像以上に腹に据えかねていたらしい。

知らなかったで事が済めば、国は滅びない。

よって、ロシアはこの過ちは最早次回につなげるしか無いのだ。










「さぁ、頑張ろうね。私のかわいいロシア」














にこり。

それを合図にギロチンの刃は落とされた。




































「っ、あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」































































































「それにしても、久々だねぇ。こうやってお仕置きをするのは」

















鼻歌でも歌い出しそうな男が一人。

帝国は、罰を終えると腰を持ち上げ、来た道を引き返し先程まで座っていた大きな椅子へと腰を据えた。

余興でも楽しむように足を組み、サイドデスクに置かれたワインを再び持ち上げると、未だ呻き声を漏らしながら地面に伏している、健気にこちらを睨みつけてくる子どもに口角を歪つに吊り上げる。

そして、ワイングラスを揺らしながら残酷にも高らかに言い放った。











「さぁ、ロシア。ここまでおいで」













その言葉にロシアは彼にとっては珍しくわかりやすくひくりと顔を引きつかせた。

かわいい幼子のわかりやすい反応に嬉々として、帝国はにいっと残虐に更に口角を上げて大仰に首を傾けた。

















「どうしたの?また、お仕置きが必要かな?それとも………私に抱き上げてほしいのかな?」
















「…ッッッ!!!!」

















その言葉にロシアは全身の血が煮えたぎるのを感じた。

その血が沸騰するようなひどい屈辱に、身を震わせながら血が出るほど唇を噛み締める。そして血のつながった祖父を視線で人一人殺せそうなほどの眼力で睨みあげた。

一方、帝国はニコニコと腹の底の読めない顔でわらっているだけだ。

一切相手にされていない様子にロシアはぐっ、と拳を握りしめると、ちっ、と強く舌を打った。

そして、鉛のように重い体を壁に手を伝わせてゆっくりと起き上がらせた。















「…ッ、!!っっッ!!!!っは、!!」
















無数の針で突き刺されるような、今にも意識の飛びそうな痛みに襲われながらも、ロシアは生まれたての子鹿のようにおぼつかな足元で時間をかけて立ち上がった。

しかし、それだけで息は絶え絶えで、その様は見ているだけで痛々しいものだった。

その様を観ながら帝国は凄く楽しげにワインを煽った。

途方のない痛みと屈辱にギリギリと歯を噛み締めて打ち震えながらも、ロシアは足に力を込め、壁から手を離して一歩足を前に出した。















「、っう゛……ッ、!ふ…っ……ッ、!、!!」

















がくがくとみっともなく震える足でロシアは懸命に、一歩一歩と息を切らしながら足を進める。

子供よりも小さいだろう歩幅で、亀よりも遅い速さで、不安定に足裏が床を叩く。














「…ッ!!あっ、!!」














がくん、っ!!数歩も進まないうちに膝が折れて地面に這いつくばる。

まだ、半分も歩いていないのにもかかわらずロシアの背筋には無数の冷や汗が流れていた。

その度に、震える足腰で何度も失敗しながらも必死に、歩行を練習する赤ん坊のように何度も転んでは立ち上がった。















「、っっ、!く…っ…!!!ふぅ…っ…!ッ!!」














歩く度に、ぼとぼとと未だに止まらない鼻血が白いワイシャツを血で汚した。

そして、祖父の趣味でつけられたピアスがちりりっ、と音を立てて揺れる。

それが、不快で不快で堪らなくて、今にもどうにかなってしまいそうだった。













「…はあっ…!!…はぁ…っ!!!」














ようやっと、半分は来ただろうか。

もう既に限界は近い。

がくがくと震える足を押さえ、必死に歩こうとすれども自分の意志に従わず転ぶ頻度は着実に増えてきている。

目の前では、とっくにワインを空にした祖父がにやにやと肴を楽しむように慶揚に頬杖をついて眺めていて、それが同仕様もないほどに目障りで目障りでたまらなかった。

なるべく、目に入れないように足元に視線を落として必死に大きく深呼吸を繰り返す。













「、っ………!!……、、、ふ……っ…!!!」














ようやっと、祖父の目の前までたどり着いたのは歩き始めて数十分後だった。

がくんっ!!とうに限界を超えていた足が崩れ落ちて肩で呼吸を整える。

精緻な装飾の手すりに縋り、上機嫌を隠そうともしない祖父を見あげた。

鏡でみる自分そっくりな顔に歯を噛み締めた。













クソがっ。クソがクソがクソがクソがクソがっっっ!!!













ヤケクソに最後の力を振り絞って立ち上がって、祖父を見下ろす。












「…生意気な、っ!、ことを言ってっ、ごめんなさいお祖父様…っ!!」













そう言って、祖父の膝に乗り上げると頬に『仲直りのキス』を送った。












「わかってくれて嬉しいよ、ロシア。」













祖父はそうほざいて、俺の腰に手を添えて頬にキスし返した。

そして、その口で綺麗に微笑んで言った。

















「じゃあ、もう一度私にロシアの”気持ち“を見せてくれる?」


















その言葉に俺は思わずすぐに返事をすることはできなかった。


























































































「……………男を抱くご趣味でも?」




















疲労が濃厚に顔ににじみ出ているロシアはベッドの上で力なく横たわっていた。

そして自らの上にまたがる帝国に気だるげに力なく言いはなった。

けっして、愛想の良いとはいえないそれに帝国は気分を害すことなく薄く笑った。













「まさか。まだ、抱かないよ」














本気か嘘か分からないそれに、ロシアは眉間にシワを寄せた。

帝国はクスクスとどっちつかずに笑うだけだ。

不機嫌な孫に帝国はちゅっ、と機嫌をとるようにリップ音を立てて自分と同じ白銀の髪に愛おしげに口付ける。












「ワインの味がする」








「ワインはお嫌いで?」









「いいや、___好みの味だ」
















口遊びをするように言葉を投げ合うと、次は鼻先に唇を落とした。

そして、血だらけになった顔を見てくすりと笑い、紅を塗るように親指で血を唇になぞった。












「うん、よく似合ってる」













そう、悪趣味に笑うと血がついたままの指でなぞるように

そのまま首元まで下ってくる首に舐めたりちゅちゅと何度戯れるようにキスをする。















「………ッッい゛っっっ!!!!!!!」
















しかし、次の瞬間噛みちぎるように首に噛みつかれた。

突然の行為に、ロシアは暴れることなくぐっと歯を噛み締めて堪える。

しかし、そんな苦労を嘲笑うようにぐっ…と更に噛み締める力が増す。












「っっぅ!!!あ゛あ゛っ…!!!」












それに、思わず悲鳴を上げてしまったが同時にぱっ、と歯を離された。

唇についた血をぺろり、と舌でなめ取って帝国は妖艶に笑った。













「ははっ、絶景だ」











「っ…あくしゅみ。」














今日だけで泣かされるのは何度目か。

生理的に涙に滲んだ目をそのままに、逸らすことなく帝国を睨み返した。

しかし、当然そんなものこの祖父にとって脅しの一環にも牽制にもならない。

逆に煽るものにしかならないことは既に分かりきったことだ。

帝国は口元に弧を描いて、窓の外からこちらを伺っている三日月のように笑う。














そのまま、ロシアの胸元に手が伸びてくると焦らすようにゆっくりとボタンを外していく。










ロシアはそれを黙って受け入れる。















ボタンを外し終わると、腹に銃創の跡や、ぱっかりと開いたのを縫われた刺し傷の跡、鞭で叩かれた跡などがまばらに存在する。

それを、祖父は食前のワインでも嗜むようにじっくりと目で楽しんでから、手で愛でるように撫でる。

勿論、それらは当然この人によって全て『上書き』されたものらである。

この祖父は他人によって、つけられた跡すらも許さなかった。

しかし、それらはけして多くはない。

その多くは祖父によってつけられたものばかりだった。

また、性格が悪いことに、祖父はそれらを撫でて、決まって過去の過ちを思い出させるように一つ一つ、過去を振り返った。










「懐かしいね、これはおまえが私のお気に入りのティーカップを壊したときのものだ。」











しかも、それらの大概はくだらない理由ばかりだ。

なぜなら、それらは只の大義名分にすぎなかったからだ。













「…こういうのって普通、昔は本人じゃなくて代役を代わりを使ったんじゃないんですか?」













ほんの一抹の不満をぶつけるように俺はそう祖父に問うた。

しかし、やはりと言うべきかそれはバッサリと簡単に切り捨てられた。













「あぁ、西の方では確かそんなことをしてたらしいね。まぁ、お前の場合大した効果は期待できそうにないけど。」














自分でそんなことを言うあたり確かにそうなのだが、それでも不満は尽きない。

しかし、祖父はふと思い出したようにぼそりとつぶやいた。












「…確か、一度だけそんなことがあったな…」













如何にも今、思い出したというように祖父は手を止めて古い記憶を思い出すように遠くを見つめた。

そして、思い出したのかやがて祖父にしては珍しく苦虫でも噛んだように顔をしかめた。

そして、ぽつりと舌打ちとともに恨み言を漏らした。












「………ちっ、あの家庭教師…。」















ぼそり、とつぶやかれた言葉を運悪く拾ってしまってロシアはそっと目を逸らした。

何があったかは知らないが、よくない記憶を呼び覚ましてしまったことに間違いはなさそうだ。

気まぐれな祖父のことだ。興がそれたと言ってこの行為も終わらせてくれないかという一抹の希望が過ったが、その思いは届かずロシアはうつぶせにひっくり返された。

…だが、このまま機嫌を損なったまま続けてヒドイ目に被るのは嫌だ。

何故、自分がコイツに媚を売らないといけないのだと思ったがそれより今は自分の身のほうが大切だ。

俺は媚びへつらうようにワントーン声音を上げて話題を切り替えた。














「…それより、お祖父様は_____」

















まだまだ、夜は始まったばかりである。





























































目が覚めたら時刻はすでにお昼を回っていた。









「……………………………」











いつもと違う部屋に一瞬、頭にはてなが浮かんだが後ろから閉じ込めるように回された両手に俺は昨日…というより真夜中にあったことを思い出した。

血とワインでカピカピになった、頭と顔に不快感に顔をしかめると、腹いせに強引に後ろから抱きしめられている両手をはがして起き上がった。

そして、俺はベッドから降りよういつもどおり足に力を込め

た。














「____〜〜〜〜〜っ、!!」

















しかし、突如襲ってきたとてつもない激痛とともにがくん、っ、と膝が折れた。

立つこともままならず、そのまま地面にぺたりと腰がついて何が何か分からず、寝起きのうまく働かない頭でしばらく呆然としていると、上から降ってきた震える笑い声にはっ、と再び意識がもどった。













「_ふっ……ふふっ…!」












ぱっ、と声がした方向…ベッドの上を見上げると祖父が肩を震わせ笑っていて、ロシアは完全に昨日あったことを完全に思い出して思わず全ての元凶に顔を歪めた。












「勝手に抜け出そうなんて悪い子だ。やっぱり、切っておいて正解だった。」












「…どういうわけか、髪も頭も不快なので風呂に行こうと思っただけです。」

















そう言い返せば祖父は面白げにクスクスと笑って、両手を差し出すように広げた。

その意図に、たっぷり間を開けてから舌を打つとしぶしぶと大人にだっこをせがむ子どものように手を持ち上げた。















「 Хороший ребенок.」















ロシア帝国はそんなロシアを軽く褒めてやってやりながら、軽く持ち上げた。

それに対し、ロシアは益々不愉快げだというようにまた舌を打つとだんまりを決めた。

そんなロシアの反抗的な姿に腹を立てるどころか、この子供らしい姿に好ましいというように帝国は唇を緩め、浴場へと足を進めた。



























































































































母は弱い人だった。










「あんななんか私の子じゃないわっ!!!!あの人と同じ目で見ないでっ!!!!汚らわしいっ!!!!」









普段はとても穏やかな人だったが、一度スイッチが入るとヒステリックに甲高い声で叫びちらして、壺を割ったりカーテンを引き裂いたりと暴れると誰にも手がつけられなくなった。

これは、使用人が話していたのを聞いたのだが母は父に見初められ結婚を前提にしていた婚約者がいたにも関わらず無理矢理娶られたらしい。

そのせいで、母は父を酷く憎んでおり、その父にそっくりな✕のことも目の敵にされた。

そレに対し、第二子である自分によく似た次男のことは傍から見て異常なほど愛していた。

弟も✕と同じように父の血が入っているというのに何故そうも愛することができるのか、甚だ不思議だったが誰一人味方がいなかった母にとって血の繋がりを感じさせる弟は唯一心の止まり木だったのだろう。






十三になるまで、✕は一度も父に会ったことはなかった。

しかし、父の噂は後宮にまで聞き及んだ。

毎日毎日、女をとっかえひっかえして公務もせずに自堕落に酒と女に溺れ、気に入らなければ実の子でさえも殺すのを厭わない血も涙もない暴君。

それが、父へのイメージであり周囲の評価だった。

だからとはいえ✕が父に対し怒りや軽蔑なんて感情が湧くことはなかった。

敢えてその感情に言葉をつけるのなら、無関心だ。

父が✕に無関心なように、✕も父に対しても赤の他人以上の特別な感情は沸かなかった。

✕はただ、自分の身の安全が保証されていれば何それでよかった。






✕には✕を縛るものなんて何もなかった。

だから、たくさんいた異母兄弟の皇位継承に巻き込まれないように家庭教師に与えられる課題は適当にこなして、無断で街に遊び歩いたりとやりたいことをして自由に過ごした。

だれも、それを咎めはしなかったし気にもしなかった。







十三の春。

母を殺した。

理由は覚えていないから対した理由はないのだろう。

偶然気が立ったからか、不愉快だったからか…今となってその理由は闇の向こうだ。

だが、一応皇帝の所有物である女を殺したのだ。親殺しなんてことがもしバレたら処罰は免れないだろう。

なので多少面倒ではあったが工作はちゃんと抜かりなく施しておいた。

すると、周囲は母を『自殺』だと思い込みいとも簡単にだまされた。生きている時は散々狂人だのと言って蔑んでいたというのに、不思議なことに周囲は様々な憶測を立て母のことを憐れんだ。

こればかりは、普段の母の行いに感謝しなければならない。

しかし、弟だけは違った。

流石同じ腹から生まれた弟というべきか、弟は✕がやったことに気づいていた。

だが、だからといって弟をどうこうしようとは思っていなかった。

それを誰かに言ったところで、周囲の認識は覆らないし

臆病な弟に何か行動を起こせるとも思えなかったのだ。






十三の夏。

弟を殺した。

母の敵だと寝込みを襲われたのだ。

これには、少し驚いたが仕方なく弟を返り討ちにした。

今回は、弟から仕掛けてきたのでへんに工作をする必要さ無かった。

どんな経緯があろうと弟が加害者で✕のほうが被害者であることは覆らないからだ。

所詮視認に口なし。

周囲は実の弟に殺されかけた✕を憐れみ、兄を殺そうとした弟を母が死んで狂ってしまった狂人だと認識した。

やはりというか、父は何もアクションを起こすことはなかった。








十三の秋。

何が理由だったのかは忘れたが、始めて折檻にかけられた。

正確には年の近い使用人の子供がだ。

少年が鞭で打たれて泣き叫ぶのをを✕は何の面白みもなく、只手持ち無沙汰に眺めながら✕はワイングラスを煽った。

…思えば、あれが引き金だったのだろう。












十三の冬。

後宮に大勢の従者があらわれた。

曰く、『皇帝の住まう宮殿に身を移せ』という皇帝直々の勅命だという。

その証拠だと言わんばかりに、玉璽の施された皇帝直筆の書状を渡され、✕は珍しく驚愕して目を見開いた。

その意味が分からないほど、✕は馬鹿でも子供でもなかった。

そしてそこで、初めて気がついた。

アレは興味がないから放置されていたのではない。

敢えて、放置されていたのだ。

それに気がついた瞬間、身が凍るような絶望に襲われた。

つまり、それは今まで✕は箱庭の中での自由を過ごしていたに過ぎなかった、ということだ。

この屋敷の使用人たちも、あの家庭教師も、すべて皇帝の目と耳に過ぎなかったのだ。































第一印象は最悪だった。

ベッドの上で上半身裸で、女を両脇に侍らせた父は噂の通りの暴君だった。

カーテンは閉め切られ、部屋の中は薄暗く、むせ返るほど甘い香炉が焚かれていた。

だが、それに混じってかすかにワイン臭も鼻を刺激した。

父は私を認めると、にたりと下卑た笑みを浮かべ言った。







「あぁ、やはり思ったとおりだ」







そう言って、益々機嫌良さげに無駄に形のいい嫌でも血の感じさせる顔を歪めた。











「おまえは私によく似ている」











何故、母が✕を糾弾したのか嫌でもわかった。



































✕には多く異母兄弟がいる。

十三の兄と八人の弟、そして十九人の皇女がいる。

✕の王位継承権は第十四位であり、よっぽどのことがない限り✕にその鉢が回ってくることはありえない。

………いや、あり得なかった。

しかし、現実では何故か他の兄たちを差し置いて✕が継承者へと選ばれた。

前代未聞の事態である。

そしてそれを当然だが他の皇子たちが納得するわけもなかった。

お陰で✕は分単位のハードなスケジュールが組まれ、おまけに日夜暗殺者に狙われるという大層なご身分となってしまった。

こうなったのも、そう。

全てはあの憎き皇帝のせいだった。



















































「帝国の太陽に栄光と祝福を」


























父はけして頭は悪くなかったし皇帝としての資質がなかったわけではなかった。













「あぁ、よくきたな」










それ故に、✕は父を侮ることこそなかったし、寧ろ✕はこの腹の黒い男を畏怖し、いつも気を抜くことはなかった。

帝国の礼儀作法にならって、最敬礼をし顔を上げると機嫌の良さそうな父の顔に今日は置物で頭をかち割られることはなさそうだと内心ほっとした。

父が人に暴君と恐れられているのはけして、普段の破天荒な行いからだけのものではなかった。














「おまえも、もう成人だろう。」













そう言う父の腹を探ろうとじっ、とその表情を観察すれどやはり何を考えているのかわからなかった。

相変わらず食えない男だ、と内心毒づく。

父はこうして何かしら理由をつけて頻繁に✕を自らの寝室に呼び寄せた。

そのせいで、不本意にもあらぬ噂を使用人たちの間で立てられているのを✕は知っていた。












「少し、遅いがこれからのおまえの栄光に期待して父からのささやかな気持ちだ。受け取ってくれるな?」













選択の余地すら与えない横暴な問いかけ方も概ねいつも通りだ。心の裡の毒をおくびにも出さずに✕は爽やかに笑ってみせた。















「勿論、身に余る光栄です。陛下」














父、と呼ばずして陛下と呼ぶのはほんのささやかな意趣返しのつもりだった。

なにより、この暴君と血がつながっているとは思いたくもなかった。

父は腹の読めない顔で✕に手を伸ばすといった。












「さぁ、こちらにきなさい」











そう言われて、行かないなんて選択肢最初から✕には存在しない。

にこり、と笑みを顔に張り付けたまま✕は従うがまま父の方へ歩みを進めた。

その際、からりとまるで首輪のようにわざわざ父手づからつけられた耳飾りがなって、歩く度になる耳障りなそれを心底忌々しく思った。

父の目の前まで来ると、流れるように跪いて指先にそっと唇を落とした。

いつまでたっても、この悪趣味な儀式には慣れない。

上から見下ろす父の口の端が吊り上がるのが見なくてもわかった。

上機嫌な父に頬に手を伸ばされ、顔を上げさせられると至至極満足そうに愉悦に細められた自分と同じ色をした代左目と視線が交わった。













「少し痛いだろうが、おまえなら耐えられるな?」
















何でも言うことを聞いてしまいたくなるような、耳触りの良い低いテノールが鼓膜を打つ。

魔性に首を傾げてみせるこの仕草も、計算のうちであることを知っているのは✕だけだろう。

しかしそれも無理はなかった。

なぜなら、大半の人間は一目でこの男の圧倒的な雰囲気とカリスマ性に心を奪われてしまうからだ。

そんな人を惑わし、破滅に追い込む天性の才と狡猾さが皮肉にも帝国を繁栄させたのだから救いようがない。
















「勿論です。陛下」















そして、当然これにも拒否権はない。

考えるまでもなく笑みを貼り付けて無心に言った。

今度はどこに穴を開けるつもりなのか、父のこの厄介な癖には心底辟易とした。

そう答えるが否や、父は✕を誘うように腕を掴みベッドへと押し倒した。

それは、違和感のかけらも感じさせないごくごく自然な動作だった。

気づいたら✕は両手を頭上で纏め上げられてベッドに縫い付けられ、その上に跨った父が✕を見下ろしていた。











「………………陛、下……?」











さすがに、それに大し拭いきれない違和感を感じた✕は静かに身じろいだ。

しかし堕落した毎日を過ごしている筈の父の体はびくともしなかった。

たかが隻眼であるはずなのに、全てを見透かされているように錯覚してしまいそうになる父の目が初めて会った頃から苦手だった。

近くで見ると吸い込まれてしまいそうなそんな漠然とした恐怖に支配された。

叶うことならすぐにでも父の瞳からは目を逸らしたかったが、それは父の手によって強く顎を抑えられていたため叶わなかった。
















「つれないなァ」

















その声音にゾクリ、と全身の血が逆流するような感覚に襲われた。ぞわ…っっっ!!と身の毛がよだち、脳内にガンガン!!と激しく警鐘が鳴り響いた。

その声には、獲物をじんわりと嬲り殺すような隠しきれない残忍さが秘められており、それに反していつも通りの声のトーン、笑い方がより一層恐怖を加速させた。

✕の恐れを感じだったのか、ふっと笑いを溢した。

そして、宥めているつもりか顎を掴まれていた手が離され、代わりに死体のように冷たい手のひらが、服の下から潜り込ませてきた。











「…………………………ッッッッッ!!!!!!!!!!」












悲鳴こそ上げなかったが、冷たく細長い指先が肋を撫でていく感覚になんとか悲鳴を押し殺した。

父のその行為に考えたくもない悍ましい考えが、想起し顔を青ざめさせた。












「………っ!!!ま、!!まってください!!!今一度っ!今一度ご再考下さいっ!!!父上っ!!!!」












気がつけばなりふり構わず、声を上げていた。

そう叫ぶと父は愛撫をやめると薄く形のいい唇をつり上げるとぐいっ、…!!と顔を鼻先がぶつかるほど近づけてその低い声音で囁いた。














「俺が、おまえの拙い反抗に気が付かないとでも本気で思っていたのか?」















やはりまだまだ子どもだな、とはっと鼻で嗤うと父は体を起こすとどこからともなく派手なものが好きな父らしい宝石がふんだんに散りばめられたナイフを取り出した。

そして、人の心なんてもの微塵もない悪魔のような顔でわらった。














「親に反抗する悪い子どもを躾するのは親の務めだ。賢いお前なら分かるな?」














父親の皮を被って、加虐的に嗤う悪魔に自分が勝てるビジョンなんて微塵も浮かばなくて✕はただただ戦慄することしかできなかった。














「そうだ。俺と同じように左目をくり抜いてやろう。嬉しいだろう?偉大なる父と同じになれるんだ。」















我ながらいい名案だ、と父は上機嫌に笑った。
















































そして最後に見たのは世にも美しい顔で笑う父と真っすぐに振り下ろされたナイフだった。



















































































「 ______________っっッ!!!!!!!!!!!」












目が覚めるとそこはいつも自室だった。

周囲を見渡して、夢であったことを悟ると一気に体が脱力した。









「……………はぁ………っ…………」











一先、体を起こすと我ながら情けないほど弱々しい溜息が漏れた。

汗で背中がびしゃびしゃになっているのに気がついて、もう一度深くため息をついた。













とてもではないが、また寝ようという気分にはなれず仕方なくベッドの上から降りた。










まったく、最悪な寝覚めだ…………。












久しく見ていなかった、昔の記憶にちっ、と思わず舌を打って乱暴に髪をかきあげた。













サイドデスクにおいてある、眼帯を手にとって慣れた手つきでつけると洗面所へと向かった。
































パチンッ、と電気をつけ鏡の前に立つと思った以上にひどい顔をしていてはっ、と思わず乾いた笑いが漏れた。














鏡の中にあるのはいつ見てもうんざりするほど父にそっくりな自分の顔で、あの人につけられた消えることのない呪縛とコレは所有物だと言う事を示す首輪が色褪せることなくその存在を主張していた。

その他にも消えない多くの跡をこの体にも記憶にも残していった未だに色褪せることなく図々しく自分の中に居座り続け、着実に精神を蝕んでくる父に最早一周回って感心さえ覚えた。












気休め程度に顔を洗うと、今度は服を着替えるために衣装ケースへといつもより微かに速いペースで歩みを進めた。





















____着替えが終わると、視界の端に存在した全面鏡が視界に入った。












それは昨日までもそこにあった、なんの変哲もない只の鏡だった。













そこには、いつもの軍服を身にまとった『ロシア帝国』が写っていた。

しかし、帝国は鏡の中の自分を一心に見つめ彼にしては珍しく驚いたようにその隻眼を見開いた。














____一体、どのくらい時間が経過しただろうか。














やがて、帝国はぱちりと一度瞬くと、どこか諦めたように俺力なく乾いた笑い声を漏らした。

















「………………………………………ははっ……なるほど。そういうことですか………………父上……。」





















ぼそり、と人知れずそう呟くとゆっくりと目をつむると鏡から顔を背け、迷いない足取りで部屋の外へとその足を向けた。































































同じように悪夢をみてしまっただろう、自分そっくりな孫を迎えに行くために。
































はい、お疲れ様です!

勢いだけで書いた無駄に長いだけの駄作にお付き合いくださりありがとうございました!

一応、話の筋は通っていると思うのでねよければ裏設定の方の考察とかしてみてくださいっ!

こっちにも投稿するか迷ったんですけど、まったく更新してなかったので今回あげてみました。


それでは、よければメントの方よろしくお願いします!!

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かみかみかみかみかみかみ神神神!、!!! なんでこんな神なのに伸びないんだああああああああ え、広めていいです?もうハート押します大好きです ファンですこれから推しになります!!!!!! よかったら,友達になりたいな、なんて、、、 とりあえずこれだけ伝えます!神です!!、 もう頑張ってください!、!、 友達は…できればですからね? もう神ですね!、!!! 神!!!、!、!、!、!、

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