『花を咲かせた日』
tg視点
放課後の空気は、少しだけ冷たかった。
廊下を歩くたびに、靴音が遠くまで響く。
「……あれ?」
窓の外に、ひとりの先輩がいた。
胸のあたりから、薄桃色の花びらが一枚、ひらりと落ちていく。
その姿を、俺は息を呑んで見てしまった。
――胸から、花が咲いてる。
慌てて外に出ると、夕日が落ちかけたグラウンドで、
ぷりちゃんがシャツのボタンを外していた。
「……見とったんか、ちぐ」
その声は、関西弁なのに、やけに静かで苦しそうだった。
「ぷりちゃん、その……それ、花……?」
「せや。嘘ついたら、こうやって咲くんやて」
俺は思わず駆け寄った。
胸元に咲くその花は、綺麗で、でも痛々しかった。
花の根元が赤く染まってて、
“血と花びらの境目”がわからない。
「痛く、ないの?」
「……まぁ、慣れたわ」
そう言って笑うけど、その笑顔が一番痛そうで。
「嘘つくたびに咲くんやて。
ほんまは嘘なんかつきたないのにな」
「なんで……そんな嘘、つくの?」
ぷりちゃんは少し黙って、
夕焼けの中で目を細めた。
「……“好き”って、言われたら困るからや」
「え?」
「俺がほんまに好きな奴、別におるねん」
そう言った瞬間、
俺の胸のあたりが、ずきんと痛んだ。
見下ろすと、制服のボタンの隙間から、
小さな白い花びらが一枚、ゆっくりと浮かび上がっていた。
――嘘だ。
俺も、嘘をついた。
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コメント
4件
え、こういう系の小説めっちゃ好き💕 楽しみです!
本当にかちさん天才すぎません、?発想とか、それを文に落とし込むのも、その表現好きすぎます、 続き楽しみにしてます!