「君の胸の花が綺麗だった」
tg視点
放課後の夕焼けが、まだ残っていた。
校庭の端っこで、俺は咲いたばかりの花をそっと押さえた。
痛みは、思ったよりも静かで。
でも、その静けさの中に、何かが軋むような感じがした。
「……咲いとるな」
背後から、低い声。
振り返ると、ぷりちゃんがいた。
胸元の花は、もう萎れかけている。
「ぷりちゃんの、それ……もう枯れちゃうの?」
「せやな。枯れたら、次の嘘が咲く」
「なんか、寂しいね」
「……せやろ」
俺は、そっと笑った。
どうして笑ったのか、自分でもわからない。
「さっきの“好きな人”って……どんな人?」
「え?」
「ぷりちゃんが、ほんとに好きな人」
ぷりちゃんは少しだけ視線を逸らして、
空を見上げた。
「……うるさい奴や」
「うるさい?」
「口数多いし、気ぃ遣うし、すぐ謝る。
せやけど、笑うとめっちゃ可愛い」
胸の奥が、またぎゅってなった。
まるで花の根が、心を締めつけてるみたいだった。
「……その人、幸せだね」
「なんでや」
「だって、そんなに優しい声で話してもらえるんだもん」
俺は、笑って誤魔化した。
ほんとは、笑いたくなかったのに。
そのとき——
ぷりちゃんがふいに俺の胸元に手を伸ばした。
「……見せてみ」
「え、やだよっ」
「ええから」
大きな手が、俺の制服のボタンを一つ外した。
白い小さな花が、まだ咲きかけてて。
ぷりちゃんは一瞬、息を飲んだ。
「……綺麗やな」
その声が、風に溶けるみたいで。
俺は、呼吸を忘れた。
「……ちぐ、その花——」
言いかけて、
ぷりちゃんは、言葉を飲み込んだ。
胸の奥が、また少しだけ痛そうに見えた。
「なんでもない」
そう言って背を向けたぷりちゃんの後ろ姿に、
夕日が重なった。
花びらが一枚、俺の足元に落ちる。
触れると、まだあたたかかった。
――どうして、あの人の嘘は優しいんだろう。
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コメント
2件
prくん何がいいたかったんだろ🤔 楽しみにしてる〜!