テラーノベル
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学校の帰り道、俺は陽翔さんと並んで歩いていた。昼休みに話しかけられてから、少しずつ会話も増えてきた。
一緒に下校するのは、今日がはじめてだった。
「制服、ちょっと肩ゆるいね」
「え、あ、うん。たぶんまだ着慣れてないだけ…」
「へぇ~、なんか可愛いな」
「……はっ!?///」
「冗談冗談、照れすぎでしょ~笑」
陽翔さんのそういう軽い言葉に、まだ慣れない。
でも、なんか――嫌じゃなかった。
家に着くと、リビングに奏さんがいた。
テーブルで本を読んでて、こっちに一瞥も向けない。
陽翔さんが「ただいまー」って言っても、返事はなかった。
(あれ…なんか冷たくない?)
俺は陽翔さんの隣で笑ってた時間を、急に思い返してしまう。
そして気づいた。奏さんが、一度だけ俺たちの方を横目で見ていたこと。
視線は冷たくはなかった。
でも――刺さった。
なぜか、胸がチクッとした。
食後、陽翔さんが言った。
「今日、たのしかったな。また明日も一緒に帰ろ?」
「……うん」
返事をした瞬間、台所から一瞬だけ視線を感じた。
振り返ると、奏さんが水を飲みながらこちらを見ていた。
けど、すぐに目をそらされた。
話しかけようかと思ったけど、声が出なかった。
(……奏さん。なんで、そんな顔するの)
無言のまま台所を出ていくその背中が、
なぜか“遠く”に見えた。
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