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「ねぇ影山、一緒に寝よ…?」

そう、耳元で囁かれた声には、あの元気な声はどこにもなかった。落ち着いた…深い…奥行きのある…なんと言い表せばいいのかは、ゴイリョクカイムな俺にはわからないけど。

背中に電気が走ったみたいに感じて、変な声が出そ…

「っひ、ぁ…!?」

あ、終わった。絶対ひかれた。

いつもなら、暴言…とまではいかないけれど、口悪い言い方して言い返したり力ずくで反抗できるのに。


というか、そもそもの話、俺の方が身長は高いはずなのに、なんでこんなにも日向の腕にすっぽりと収まっているのだろう。

「は……かげ、やま…」

「あ、いまのはちが、くて、」

ひかれる、拒絶される、

…お前には、お前だけには。

「きら、わ、れたくな…っ、い、」

あのときから。

中学三年生のあのころから、人の目ばっかり気にしていた俺が、そんなこと気にしせず生きることができる世界に変えてくれたのは日向だった。そんな彼は、命の恩人とも言える。

「なんでそんなんで嫌わないといけねぇんだよ、」

「…え、」


「かわいいよ、今の影山」

そう言っている日向の真剣なまなざしに硬直しかけた。

「ぇ、あ、えぇ…と、…ありがとな…?」

「なんで疑問形なんだよww」

それはお前のせいだボゲ、などと、普段のような態度をとることはできず、ただ、おろおろしていた。

「っはは、かわい、」

そう言いながら余裕がなさそうに見えたのは、抱きしめる力が強くなっている気がするのは、じりじりと距離が近づいている気がするのは、気のせいだろうか。


「ひな、た、」

俺らは、付き合っていないのに。

「ぅ…ひなた、、…っん」

“好き”だと、思いをうっかり口にしてしまいそうだったとき、日向の唇は俺の唇に触れていて。

あぁ、これはやっぱり。本当に、勘違いでも夢でも妄想でもなかったって、頬をつねらなくてもわかるくらいしっかりと確認して。

「…ぷは、」


「ひ、ぁた、」

「呂律回ってないのかわいすぎ…」

そう言葉を発したあと、日向は舌なめずりをした。

そんな彼の表情は、俺のトスを打つ前にどこか似ていると思った。まるで…自分の獲物は自分で取って食う、というように。

ぞくっとした。

…なんなんだ、この感覚は。

…日向、かっこいい、なんて思ってしまう。

「ん、…っは、う、ぁ…」

舌が滑り込んでくると、また、さっきみたいに電流が走ったみたいな感覚になった。でも、さっきより強くて優しくて。

頭がふわふわして。それでも頭の中は日向のことだけはしっかりと考えていて。


「かげやま、」

ふと、名前を呼ばれた。

声の主は、日向翔陽。

最近気づいた、でも認めたくなかった、好きな人。


「なぁ、好きだ、俺影山のこと、好き、」

このままの関係でいるには、友達でありチームメイトであり相棒でありライバルな日向、という概念を日向に植え付けなければいけないと、そう思った。

決して、そこに別の感情を加えてはいけないと。

たった一つの漢字で、あらわしてはいけないと。


「っぁ……、?」

視界がぐにゃりと歪んだ。

そうして、俺、こいつ相手だとどうにもならないな、とゆっくりと感じる。

「別に…だからって、影山とどうこうなりたいってわけじゃ…って、」


「泣いてんのか…?だ、大丈夫…ではねぇよな、え、えっと、、」

ぐちゃぐちゃになった視界の端で、そんなに嫌だったのか…?!と言いながら、わたわたし始める日向。

…それはまぁ、しあわせが溢れすぎて、泣いてしまった俺のせいなんだけど。


「ひな、た、俺のはなし…聞いてくれるか、?」

若干涙目になっている日向の前に正座する。

「もち、ろん…!」

そう言いながら、日向も正座になる。


「俺は、日向のことがす…好き、だ」

言い慣れていないのでかなり恥ずかしかったが、そう言うと、日向の顔はぱぁっと効果音が付いたように明るくなる。

そして、その表情には驚きも見えた。

「…でも、バレーに集中したい。」

泣きそう、だけど。

一番泣きたいのは日向だと思うから。

「日向と、これからどうなるかなんて、付き合うか付き合わないか…付き合ったとして別れるか別れないかなんて、誰にもわからない」

「けど…でも…わかんないからこそ、だから、ごめ、なさい…」

自分でも日本語がぐちゃぐちゃなのは分かっていて。

それでも意味をくみ取ってくれようと、真剣に聞いてくれている日向に涙が出そうで。


「…そっか。」

「おれも、バレーに集中しないと、だな、」

そう、うつむいたまま言う。


やっと自覚することにした。

俺は、こいつが好きで好きでたまらない。

…だけど、だけど。

「つきあったら、お前のこと…もっと好きになりそうでこわいし、…俺は、恋とかよくわかんねぇから、きっとお前に迷惑かける」

「ばか、」

「は?なに言って…」

「影山のばか!!」

混乱した。

…こいつ、今なんつった?

「は、?」


「お前がばかっつってんの!!」

日向は泣いていた。

わからない、なんで、

「好きな人に好意向けられて嫌なやつとかいんのかよ!…いるとしたらそれ、恋してる自分に恋してるだけだろ、」

「わかんねぇ、よ、」

「…なにがだよ」

いつものように、拗ねたような声が降りかかる。

「なんもわかんねぇ、恋も、なにもかも、」

「じゃあ俺が教えてやる」

そうやってドヤ顔して言うから、なんだか心強くて。


「そんな簡単に教えられるもんなのかよ」

そう言ってみる、できるぞ、と自信満々に言われるのだろうか。

「簡単にはむりだ」

「…は、」

へらり、とそう答えた日向にまた困惑する。

こいつのことも、恋のことも、なにも読めねぇ。

「じゃあ、どうやって、」

「おれがゆっくりゆっくり、時間をかけて影山に教えてやる」

…上から目線かよ、などと呟き、俺は日向の方へ倒れこんだ。

優しく受け止めてくれた。

そんなところも_

「じゃぁ…おねがい、します、、」

「…もちろん、です!」

_大好きだ。




END_

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159

コメント

6

ユーザー

ブラボーー!!!(?)

ユーザー

目から滝が流れてきたwww

ユーザー

なんっぐつねっくまだってにったななだっぎぃ泣 (訳)なんてこった可愛すぎんかこんにゃろう泣

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