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第43話 「王者の重圧」
夏の福岡大会 三回戦。
柳城高校 ― 東筑中央。
昨年の福岡王者。
春のセンバツ出場校。
柳城の試合には、多くの観客が集まるようになっていた。
だが。
勝ち進むほど、相手も本気になる。
「柳城を倒す」
それが各校の目標になっていた。
試合開始。
初回。
柳城は先制のチャンスを作る。
一死二、三塁。
だがあと一本が出ない。
無得点。
嫌な流れだった。
その裏。
東筑中央が攻める。
ヒット。
送りバント。
タイムリー。
あっさり先制された。
0対1。
柳城ベンチに重い空気が流れる。
さらに三回。
失策。
四球。
犠牲フライ。
0対2。
今年の柳城では珍しい試合展開だった。
スタンドの舞も表情が曇る。
「珍しかね……」
おばちゃんが呟く。
おっちゃんは腕を組んだまま言う。
「強いチームほど苦しい試合がある」
五回終了。
0対2。
柳城打線は相手左腕を攻略できない。
そして六回。
先頭打者が出塁。
続く打者もヒット。
無死一、二塁。
ここで主将・柴田。
送りバント。
確実に決める。
一死二、三塁。
四番。
センター前。
2対1。
一点差。
アルプススタンドが息を吹き返す。
さらに二死満塁。
打席は七番。
粘る。
粘る。
そして押し出し四球。
同点。
2対2。
試合は振り出しに戻った。
八回。
東筑中央の攻撃。
一死一塁。
福間監督が動く。
「塁」
マウンドへ。
背番号20。
一年生。
だが今や重要な戦力だった。
初球。
ストレート。
空振り。
二球目。
見逃し。
三球目。
空振り三振。
続く打者も打ち取る。
無失点。
九回表。
柳城の攻撃。
先頭打者出塁。
送りバント成功。
一死二塁。
打席は三番。
打った。
レフト前。
二塁走者が三塁を蹴る。
ホームへ。
クロスプレー。
セーフ。
#前世
shima7a
597
44
3対2。
ついに逆転。
九回裏。
最後の守り。
二死二塁。
一打同点。
打球はショートへ。
史陽。
落ち着いて捕る。
一塁へ。
アウト。
ゲームセット。
柳城高校 3―2 東筑中央。
苦しみながらの勝利。
整列後。
柴田が仲間たちを見る。
「こういう試合を勝たないと甲子園は行けん」
誰もが頷いた。
今年の柳城は去年より派手ではない。
だが。
簡単には負けない。
福間監督は選手たちの背中を見ながら思う。
少しずつ。
確実に。
このチームも強くなっている。
そして福岡大会は、いよいよベスト16へ。
甲子園まで、あと四勝。
第43話 終
コメント
2件

次はどんな展開が良いかな
いやあ、苦しい試合でしたね……。0-2からの逆転、見事でした。特に六回、柴田主将の送りバントから始まった攻撃で一気に流れが変わったのが印象的でした。ああいう「泥臭く勝ち切る」のが本当に強いチームの証拠ですよね。おっちゃんの「強いチームほど苦しい試合がある」という言葉、グッと来ました。あと四勝、この調子で突き進んでほしいです。